第352話 裁判終わって……
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
小夜子による「学級裁判」が終わると、簡易裁判所はセイクリア王国の兵士達によって綺麗に片付けられ、裁判を見ていた者達は、皆それぞれのキャンプへと解散した。
そんな時、
「ん? 何だ?」
と、誰かが言ったのを聞いて、春風達も「ん?」と皆一斉に頭上に「?」を浮かべていると、何処からか妙な音が聞こえた。
春風達は「何だ何だ?」と更に頭上に「?」を大量に浮かべていると、音はどんどん大きくなり、その後、遠くの方から「何か」がこちらに向かって近づいてくるのが見えた。それも、別々の方向から、2つもだ。
暫くすると、近づいてくる「何か」がはっきりと見えるようになり、よく見てみると、どうやらその正体は「馬車」のようで、かなり高いスピードでこちらに向かって進んでいた。
そして、2つの方向から数台の馬車がこちらのすぐ側まで近づくと、大きな音を立てて停車した。
よく見ると、1方はウォーリス帝国の頑強な馬車なのだが、もう1方は知らない国のもので、全体的にシンプルな見た目をしていて、本体にはその国のシンボルマークのようなものが描かれた旗が立っていた。
その後、馬車の前に集まった人混みをかき分けて、ギルバートがのウォーリス側の馬車の前に立つと、その内の1台から1人の若い男性が降りてきて、
「お久しぶりです、ギルバート陛下」
と、ギルバートに向かって挨拶した。
その姿に驚いたギルバートが、
「メルヴィン! お前、何でここに!?」
と、その男性、メルヴィンに向かってそう尋ねると、
「申し訳ありません陛下。実は、『とある方』がどうしてもこちらに連れてって欲しいと仰ったので、急遽部隊を編成してこちらに参った次第でございます」
と、メルヴィンは頭を下げて謝罪しながらそう説明した。
「あぁ? 誰だよその『とある方』って?」
ギルバートにそう尋ねられて、メルヴィンが「それは……」と答えようとしたその時、またウォーリス側の馬車の1台の扉が開いて、そこから3つの小さな人影が、
「「「おねにーちゃん!」」」
と、春風に向かって駆け寄ってきた。
「え、イアン、ニコラ、マーク!?」
それは、ウォーリスで留守番していた筈の、イアンとニコラとマークだった。因みに、ニコラの腕には「人形」となったルーシーの祖父であるアイザックが抱き抱えられていた。
「え、ちょっと待って、みんなどうしてここに?」
と、春風は驚きながらも冷静な口調でイアン達にそう尋ねると、
「なんか帝国のみんなが準備してたから、一緒に来ちゃった!」
「「来ちゃった!」」
と、3人は元気よくそう答えた。
その答えを聞いて、春風がチラリとニコラの腕の中のアイザックを見ると、
「すみません」
と、小さい声で謝罪された。
その後、他のウォーリス側の馬車も次々と出入り口が開いて、そこから4人の男女が降りてきた。
「よう」
「数日ぶりだな」
「はぁい」
「……」
それは、ウォーリスで療養していた「断罪官」の小隊長である、ギャレット、ダリア、ユリウス、そしてウォーレンの息子であるルークだった。
ギルバートは彼らを見て、
「おい、メルヴィン。『とある方』って、あいつらかよ?」
と、呆れ顔でメルヴィンに尋ねると、
「いえ。彼らとは別に、もう1人おります」
と、メルヴィンは首を左右に振るって否定した。
「え、マジで? じゃあ、一体誰なんだ?」
と、ギルバートはメルヴィンに三度そう尋ねると、メルヴィンは「こちらです」と言って馬車の扉を開けた。
そこから出てきたのは、派手過ぎない程度に装飾が施された黒いローブに身を包んだ、20代後半から30代前半くらいの女性だった。
「あ、あんたは!」
「お久しぶりです、ギルバート陛下」
驚いたギルバートに、その女性は落ち着いた様子でそう挨拶したので、春風達は「誰だ?」と2人に近づこうとした、まさにその時、
「おいコラ! 私を無視するなっ!」
という怒鳴り声と共に、もう一方側の馬車の1台の扉が、バァンと音を立てて乱暴に開かれた。
否、正確に言うと蹴破られたと言った方がいいのかもしれない。
ともあれ、そのあまりの出来事に春風達が驚いていると、その馬車の中からシンプルな青と白のドレスに身を包んだ、1人の女性が降りてきた。
見たところ、女性は年齢的にはギルバートと同い年くらいかに見えて、何処か気の強そうな感じだった。
ギルバートはその女性を見て、
「ゲッ! テメェは!」
と驚きながら言うと、女性はギルバートを見て、
「フン。随分な挨拶だな」
と、見た目通りの気の強そうな口調でそう言った。
春風達は「何だ何だ!?」と、ギルバートと女性を交互に見ながらオロオロしていると、丁度人混みをかき分けて現れたアデレードが、その女性の姿を見て、
「お、お母様!?」
と、驚きの声をあげた。
そして、女性もアデレードの存在に気付くと、
「久しぶりだな、我が娘よ」
と、驚きの表情のまま固まっているアデレードを見てそう言った。
春風は2人のやり取りを見た後、こっそりとギルバートに近づいて、
「あの、ギルバート陛下。あの人は一体どちら様なのですか?」
と、小声で尋ねると、ギルバートは女性を見つめたまま「ハァ」と溜め息を吐きながら答える。
「彼女の名は、クローディア・リンジー・グレイシア。アーデの母親で、俺の妻であるエリー……エリノーラの姉ちゃん。そして、グレイシア王国の現・女王様だ」
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、今回も1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




