第348話 蠢く者達・2
今回はちょっと短めの話ですが、第12章最終話です。
地球でもエルードでもない、全く別の次元。
その異質な次元に、「風の神」を名乗るガストと、金髪の青年が転移してきた。
「おかえりなさぁい」
と、間の抜けた声でガスト達を出迎えたのは、ぽっちゃりとした体型を持つ短いオレンジ髪の女性だった。
「ああ、今戻った」
「……ただいま」
そのオレンジ髪の女性に対して、金髪の青年は涼しい表情でそう返したが、ガストは何処か疲れ切った表情をしていて、明らかに元気がない状態だった。
そんなガストに、オレンジ髪の女性が近づいて、
「お疲れ様ぁ。よく頑張りましたねぇ」
と、ガストの頭を優しく撫でると、ガストはその手にソッと触れて、
「……ごめんなさい」
と、謝罪した。
それを聞いた金髪の青年は、
「今日はもう、ゆっくり休むといい」
と、ガストに向かって言うと、ガストは一言、
「……うん」
と、返事した後、オレンジ髪の女性を通り抜けてその場から歩き出し、そこから少し離れた位置で、スゥっと消えた。
それを見送ると、残されたオレンジ髪の女性が金髪の青年を見て口を開く。
「ガスト君、かなり落ち込んでましたねぇ」
彼女に続くように、金髪の青年も口を開く。
「無理もないだろう。目の前で多くの『神獣』達がやられただけじゃなく、あいつ自身もいいようにやられたのだから」
「そうですねぇ……」
そう言って、オレンジ髪の女性は「ハァ……」と小さく溜め息を吐くと、
「あのぉ……」
「何だ?」
「まさかとは思うんですけどぉ、あの3人なんですよねぇ?」
と、金髪の青年に向かってそう尋ねた。
金髪の青年も、オレンジ髪の女性と同じように「ハァ……」と盛大な溜め息を吐いて、
「そうだ。リアナ・フィアンマ、桜庭水音、そして幸村春風。あの3人が、『夢』の中に出てきた我々を殺す存在、『悪魔』達だ」
と答えた。
すると、オレンジ髪の女性は悲しそうな表情になって、
「うぅ、やっぱりぃ。ということは、あの『夢』の通り、私達はあの3人に殺されてしまうってことなんですよねぇ」
と、今にも泣き出しそうな口調で言うと、その場に膝から崩れ落ちた。
そんなオレンジ髪の女性の様子を見て、金髪の青年が近づいてしゃがむと、彼女の肩にソッと手を置いて、
「大丈夫だ。あれは所詮『夢』の中のことだ、現実ではない」
と、励ました。
オレンジ髪の女性は「……そうですね」と小さい声で言うと、金髪の青年は話を続ける。
「それよりも、『あの男』の状態はどうだ?」
「? ああ、モーゼスさんですか? 勿論、順調に『天使化』は進んでますよぉ。もう少しで完了しますぅ」
「そうか、では早速見に行くとしようか」
そう言うと、金髪の青年はスッと立ち上がって、その場を離れた。
その際、
(そうだ。あれは『夢』の話だ。現実に起こるわけではない)
と、心の中で自分に言い聞かせていた。
だが、
(まぁいざとなったら、この世界を捨てて、また別の世界に行けばいいだけのことだがな)
と、青年は心の中でそう呟くと、
(私はまだ、楽しみたいのだから)
と、その口元を醜く歪ませ、悍ましい笑みを浮かべるのだった。
どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で第12章は終了です。
続く第13章は、「新たな始まりのプロローグ的な話」をテーマ書いて投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。




