間話1 残された者達(勇者編)
お待たせしました。今日から本編をお休みして、間話的な話の始まりです。
また、後書きでは重要(?)な発表もあります。
それは、春風がリアナと共にセイクリア王都を脱出した、その日の夜のことだった。
召喚された「勇者」にして担任教師の高坂小夜子は、現在、用意された部屋のベッドの上で、下着姿でうつ伏せになっていた。
「ハァ……」
誰もいないその部屋で、1人溜め息を吐いた小夜子は、今日1日に起きた出来事を思い出していた。
今朝は普通に起きて、普通に朝食をとって、普通に高校に行って、生徒達と普通に授業をしていた。本来なら、その後は普通に仕事を終えて、同僚と飲みに行くか、家に帰ってのんびりして、明日の準備をして眠る筈だった。
だが、昼休みを迎えていたその時、その「普通」は終わった。
突然、教室の床が光って、生徒達と一緒にその光に飲み込まれて、気が付けば日本じゃない別の世界にある国のお城の中で、その城の主である国王から、
「今、この世界は破滅の危機に瀕している。神に選ばれし『勇者』である其方達の力を貸して欲しい」
なんて事を言われて、そんな馬鹿なと思っていたら本当に自分達が選ばれし「勇者」などというもので、訳がわからないって時に生徒の1人である前原翔輝がやる気になって、それにつられて他の生徒達もやる気を出したと思ったら、同じく生徒の1人である幸村春風が突然豹変し、鎧姿の男女(後でこの国の騎士だと教えて貰った)を相手に大暴れ。そして、挙げ句の果てには突然現れたリアナという少女と共に国の外へと飛び出した。
(何なのよ……この状況)
一連の出来事に、気の強い小夜子も頭と気持ちの整理が追いつかず、今もこうしてベッドの上で落ち込んでいる。
その時、小夜子の脳裏に浮かんだのは、自分達のもとを去った春風の後ろ姿だった。
「幸村……一体どうして?」
ゴロンと仰向けになってそう呟く小夜子の目から、一筋の涙が流れた。
一方その頃、小夜子に用意されて部屋から少し離れた位置にある部屋で、小夜子と同じ「勇者の1人である前原翔輝が、怒りに任せて部屋に備え付けられた机をバンバンと殴っていた。
「クソ、クソっ! 幸村の奴、幸村の奴ぅ!」
恨みを込めてそう叫ぶ翔輝の脳裏に浮かんだのは、謁見の間での春風の姿だった。
春風が大暴れして自分たちのもとを飛び出したのには理由があったが、それを知らない翔輝にとって、春風がした事は自分達に対するれっきとした「裏切り」だった。
「許さない、許さないぞっ! あの、裏切り者めぇっ!」
そして、翔輝は先程以上に恨みと憎しみを強く込めて、何処にいるのかもわからない春風を罵るのだった。
さらに一方その頃、翔輝とは離れた部屋の中では、同じく「勇者」の1人である少年が、ベッドの上で体育座りをしていた。
「……春風」
この少年は、春風がリアナと共に謁見の間を出る際に、春風の名を読んだ少年だ。
「……また、置いてかれちゃったな」
ボソリとそう呟くと、少年は首にかけていたネックレスを外して手にとった。そこには、銀で出来た指輪が付いていた。
それは、春風が、「師匠」と呼ぶ女性に貰った「お守り」と同じ指輪だった。
そう、彼もまた、春風と同じ「師匠」と呼ぶ女性の弟子だったのだ。
「春風。一体君は、どうしてしまったんだ?」
指輪を見つめながらそう口にした少年。彼の名は、桜庭水音。
彼のその疑問に答えられるものは、誰もいなかった。
そして、さらにその頃。水音から遠く離れた部屋では、同じく「勇者」の1人である少女が、部屋に備え付けられた椅子に座って、窓の外に広がる星空を見上げていた。
「……」
少女は無言で着ている学生服の胸ポケットから、自身の生徒手帳を取り出すと、そこから1枚の写真を抜き取った。
写真に写っていたのは、小学生の時の自分と、同じく小学生くらいの春風によく似た少年だった。
少女は写真を見ると、涙を流した。ポタポタと涙が写真に落ちる音が、少女以外誰もいない部屋に響いた。
少女はポツリと呟く。
「会いたいよ、フーちゃん」
少女の名前は、海神歩夢。
彼女は涙を流しながら、そっと写真を口元に近づけた。
というわけで、始まりました、間話第1弾です。
小夜子先生と翔輝君の話は前作と同じとして、後半に出た2人の人物、水音君と歩夢さんですが、21話冒頭の回想シーンにも登場した水音君は、何を隠そう、この物語の「もう1人の主人公」で、歩夢さんに至っては24話で春風が視線を送っていた少女です。
今後、この4人にどの様な運命が待ち受けているのか、乞うご期待ください。
そして、ここで少し謝罪があります。実は、25話に出たリアナの称号の一つである「白銀の炎」ですが、物語の進行上、このままだとなんかややこしい事になりそうだったので、誠に勝手ながら、削除させて貰いました。大変申し訳ありませんでした。
今後、この様に少しずつ改変していくことになると思いますので、何卒よろしくお願いします。




