第331話 ループスとの対面
2人の仮面の人物達に案内されて、春風達は廃都市の中に入った。
そこは、かつて最初の固有職保持者である「賢者」の尽力によって発展したのだが、現在はとてもそうとは思えないくらい見るも無惨な状態で、春風達もあまりの悲惨さに、思わず顔を顰めてしまった。
しかし、それでも仮面の人物達はスタスタと前を進んでいたので、春風達は黙って後をついて行った。
それから暫く歩いていると、やがて大きな建物の前に着いた。見たところあちこち朽ちてはいるが、そこはどうやら「城」のような建物だった。
「「こちらです」」
そう言うと、仮面の人物達はその「城」のような建物の中へと再び歩き出したので、春風達も再びその後を追った。
中に入ると、そこも外と同じようにかなり荒れ果てていたが、何処かセイクリアの王城やウォーリスの帝城のように立派な内装をしていたので、
(へぇ、結構いい感じだな)
と、感心した春風は心の中でそう呟いた。
そして中を進んでいくと、一際大きな部屋に着いた。その部屋に入った瞬間、春風達はそこがどういう部屋かすぐに理解した。
(ここって……謁見の間だ!)
そう。雰囲気からして、そこはまさに「謁見の間」のようで、奥にある玉座を思わせる立派な椅子に、
「「只今戻りました、ループス様」」
「邪神」ことループスが座っていた。
玉座にどっしりと座るその姿は、狼の頭部に人間のような体をしていて、その体自体は黒いオーラのようなもので出来ていたが、以前見た分身のものとは違ってはっきりとした形を作っていて、それが更に存在感をアピールしていたので、見ている者達は皆たらりと冷や汗を流した。
ループスはそんな彼らに構わず、
「ご苦労様、2人共。下がって休んでいいぞ」
と、優しい口調で仮面の人物達を労い、2人を下がらせた。
そして謁見の間から出たの確認すると、ループスは小さく「さてと」と呟いて、
「待っていたぞ、幸村春風とその仲間達。それと異世界から召喚された勇者達に、大国の主達、巨大レギオンのリーダー、で、最後に……」
と、春風達を見てそう言うと、最後にヘリアテスとリアナを見て、
「久しぶりだな、ヘリア。そして、我が娘リアナ」
と、仮面の人物達と同じように優しい口調そう言ったので、
「ええ。久しぶりね、ループス」
「うん。久しぶりだね、お父さん」
と、ヘリアテスとリアナはループスに向かってそう返した。
すると、
「あー、悪いとは思ってるけど、リアナ……」
ループスは何処か申し訳なさそうな表情で、
「折角の再会なんだし、それ取ってくれると、お父さん嬉しいんだけどなぁ」
と、ループスはリアナのチョーカーを指差しながらそう頼み込んだ。
リアナはその頼みに、
「うん、良いよ」
と返事すると、首のチョーカーを外した。
次の瞬間、リアナの髪が白く染まり、そこから尖った耳がピョコンと出てきて、お尻から狐の尻尾が姿を現した。
ループスはその姿を見て、
「うん。やっぱりお前はそっちの方が良いな」
と、ニコリと笑いながら言った。
リアナは恥ずかしそうに顔を赤くするのを見たループスは、次に春風の方を向いて、
「で、お前、何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
と尋ねた。
いきなり話を振られて、春風はドキッとなったが、すぐに真面目な表情になって、
「あの、ループス様。俺と戦いたいってあなたは言いましたが、何処で戦うのですか? ここも広いですけど……」
と、ループスに向かってそう尋ねると、
「ああ、心配はいらない。ちゃんと戦う場所は用意してるから」
と、ループスは「大丈夫大丈夫」と軽いノリで答えた。
春風はそれを聞いて、
「そうですか……」
と言うと、
「あ、そうだ忘れてたわ」
と、ループスは何かを思い出したかのようにそう言った。
そしてループスは横の扉に向かって、
「おーい、入って良いぞ」
と言うと、扉が開かれて、そこから先程まで春風達を案内していた者達とは別の仮面の人物達が、「何か」を連れて入ってきた。
それは装備を外されてぐるぐる巻きにされた数人の男達で、よく見ると、
(あ、こいつら昨日俺に絡んできた奴らだ)
と、春風が心の中でそう呟いたように、彼らは昨日春風に絡んできたセイクリアの騎士達だった。
その姿に驚いたウィルフレッドとイブリーヌに向かって、ループスが口を開く。
「そいつらは昨日の夜ここに侵入してきた奴らでな、鬱陶しいから軽く揉んでやったわ。あぁ、ちょいと怪我してる奴もいるから後で手当てしてやってくれや」
と言うと、ループスは仮面の人物達に騎士達を春風達に返すよう頼んだ。
そして騎士達が春風達と合流すると、ループスは春風に向かって言う。
「さぁ、行こうか春風。俺達の『決闘』の場へな」
謝罪)
大変申し訳ありません。前回の話で、春風の同行者に女神ヘリアテスを入れ忘れたので、咥えさせてもらいました。




