第35話 それから……
お待たせしました。第3章の最終話的な話です。
翌日。
朝起きると、春風はリアナ、ヘリアテス、精霊王達と朝食にした。ジゼルは幽霊なので、「散歩してきます」と言ってそこら辺を彷徨っていた。
朝食が終わると、リアナはハンターの仕事をする為に、ログハウスを出て活動拠点へと出発した。
それから春風は、ヘリアテス、ジゼル、精霊王達から様々な知識を学び、生き残る為の技術を磨いた。
まず学んだのが、この世界の「魔術師」……否、正確には「魔術師」の職能保持者達が使う「魔術」についてだった。
ヘリアテス曰く、この世界は500年前までは妖精族が使う「魔法」が主流だったのだが、現在は人間が使う「魔術」に取って代わられていた。この「魔術」という力ーースキルは、「職能」を持つと同時に身に付いていて、最初は1つか2つだけなのだが、ボーナスポイントを振り分けて強化すると自動で増えていく仕組みになっているという。
しかし、この「魔術」という力は、実は使う度に精霊達を苦しめ、酷い時には殺してしまうという恐ろしいものだったのだ。その理由は、「魔法」は世界と繋がっている精霊達に魔力を捧げる事によって行使され、捧げられた魔力は精霊達によって世界に還元されるというものに対し、「魔術」は特殊な術式を用いて精霊達から強引に力を吸い上げて行使されるもので、その為に魔力が世界に還元されず、土地が枯れて自然が少しずつ壊れてしまっているのだというのだ。
「じゃあ、この世界の生命力が弱くなっていた理由って……」
「そうです。魔術師達が使う魔術の所為だったのです」
「そうだったんですか……って、俺、こっちに来てからもう魔術使っているんですど!?」
「ああ、それでしたら大丈夫です」
「え、何故ですか?」
「春風さんが使ったのは、ご自身が作った魔術ですよね?」
「はい、そうですけど」
「春風さんが作った魔術は、この世界の魔術とは違う理で出来ているもので、その為に精霊達の力を奪うどころか、逆に活力を与えているのですよ」
「え、そうだったんですか!?」
「はい。というわけで春風さん、精霊達を救う為に、ジャンジャン魔術を作りまくって、バンバン使いまくってください!」
「はい、了解しました!」
そんなわけで、春風はヘリアテスに言われた通りに、[魔術作成]を使って魔術を作りまくった。と言っても、まだ未熟な「見習い賢者」なので、作れる魔術は限られているのだが、それでも、春風は複数の魔力属性を持っているので、最初に作った風の魔術だけじゃなく、火、水、土属性の魔術も一緒に作った。ただ作ったその瞬間、激しい頭痛に襲われたが……。
次に春風は、その作った魔術を試す為に、精霊王達の師事のもと、周辺の魔物と戦闘を行った。ヘリアテスの言う通り、春風が魔術を使えば使う程、精霊達が元気になっていったようで、春風は嬉しくなってそれからも魔術を使いまくった。
それが、後にとんでもない事態を引き起こすことになるとも知らずに……。
さらに春風は、魔物と戦っていくにつれて装備の方も見直さなきゃいけないと考え、こちらも精霊王達の師事のもと、自身の装備の製作に取り組んだ。と言っても、春風自身は呪いの為に「赤刀・彼岸花」以外の武器を持てない為、それを中心としたプランのもとで、作業に取り掛かった。
また、魔物と戦っていくうちに自身のレベルも上がり、それに応じたボーナスポイントもゲットしてきた為、ヘリアテス達と相談しながら、必要なスキルをゲットしていった。勿論、その際にも激しい頭痛に襲われたが……。
そんなこんなで、春風は地球とエルード、2つの世界を救う為に最大限の準備をしていった。
そして、明日は旅立ちを迎える事になるその日の夜。春風は1人、ログハウス裏の湖の側にある大きな木の下に座り込んで、数多の星々が煌めく夜空を見上げていた。
(いよいよ、明日は旅立ちの日だ)
そんな事を考えている春風の脳裏に浮かぶのは、地球にいる家族と、大切な人達のこと、セイクリア王国に残してきた小夜子とクラスメイト達、特にその中の1人である少年と少女のこと、そして、ハンター業に勤しむリアナのことだった。
そんなことを考え終えた春風は、思い立った様にスッと立ち上がると、
「待ってろよ、悪党ども」
と言って、夜空に向かって拳を突き上げて、
「俺達を巻き込み、エルードと地球を危険に晒したこと、絶対に後悔させてやる!」
と、決意を表すかの様に小さく言い放つのだった。
これで、第3章は終了になります。
次回は一旦本編をお休みして、外伝的な話を幾つか書いて投稿した後、本編第4章の始まりとなります。また、その時の後書きに、重大な発表を載せる予定です(いや、重大かどうか自信はありませんが、ガッカリさせてしまったら申し訳ありません)。




