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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第12章 集結、3人の「悪魔」

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第322話 春風が犯した「罪」


 幸村春風17歳、異世界で有罪判決を受ける。きっかけは、「ハンバーガーを作った」こと。


 このとんでもない事態に、春風の仲間達は勿論、誰もが口をあんぐりとしていた。


 そして、判決を言い渡された春風本人はというと、


 「……何、この現状?」


 と、ただ小さく、弱々しく呟くしかなかった。


 すると、


 「ちょぉっと待ていぃ!」


 という叫び声が聞こえて、ハッとなった春風が声がした方へと振り向くと、


 「どういうつもりだ、ウィルフ!」


 そこには大層怒り顔のギルバートが、ウィルフレッドに向かってそう怒鳴っていた。


 「む、どうしたんだギル? 顔が怖いぞ」


 と、ウィルフレッドが頭上に「?」を浮かべていると、


 「『どうしたんだギル?』じゃねぇ! こいつは一体何の冗談だって聞いてんだよ!」


 と、ギルバートは更に怒鳴りながらそう答えたので、ウィルフレッドは「ハァ」と溜め息を吐いて、


 「ギル、帝国は数日前から、そちらの兵士や騎士、更に魔術師達に、春風殿の訓練を受けさせていたそうだな?」


 と尋ねた。


 「ああ? それがどうしたんだよ?」


 「そしてそれと同時に、帝国は春風殿に食事を作らせていたのか?」


 「おうよ……つっても、飯の方は訓練を受けさせる前だがな」


 そう答えたギルバートの言葉に、春風は「ああ、そういえば……」と、その時のことを思い出した。


 まだ帝国でお世話になって間もない頃、帝城内にある厨房で夜食を作っていた時、偶然通りかかったギルバートに、


 「お、これ美味いじゃん」


 と、作った夜食のサンドイッチを食べられたことをきっかけに、


 「美味いからまた作ってくれ」


 と、命令されてしまい、以来時折仲間達だけでなく兵士達にも料理を振る舞うようになったのだ。


 春風はそれを思い出して、


 (ああ、懐かしい記憶だなぁ)


 と、感傷に浸っていると、


 「この大変な時に帝国ばかり狡いではないか」


 というウィルフレッドの発言にハッと我に返った。


 その発言に、ギルバートは更に怒り顔になって、


 「ハァ!? 『狡い』って何だ『狡い』って!?」


 と、怒鳴りながらウィルフレッドに尋ねると、


 「訓練の高度さもそうだが、先程私が食べたもの、『ハンバーガー』だったか? あれは中々の美味であったぞ。それをずっと帝国が独り占めしていたのだ。これを『狡い』と呼ばずして何と呼ぶのだ?」


 「いや、オメェのとこ『固有職保持者』認めてねぇだろ!」


 「何を言う、勿論国王として全力で彼を守るさ」


 「嘘だ! ぜってぇ嘘だろ!?」


 春風を巡って(?)激しく口論するウィルフレッド(国王)ギルバート(皇帝)。それを見て周囲の人達が皆、


 『ええぇ?』


 と困惑していると、


 「あのぉ……」


 と、春風が恐る恐る手を上げて2人に話しかけた。


 「む、どうした春風殿?」


 「えっと、帝国の方々が『狡い』というのはなんとなくわかったのですが、それでどうして俺が有罪判決受けなきゃいけないんですか? ていうか、俺何の『罪』に問われているのですか?」


 と、春風が更に恐る恐るそう尋ねると、ウィルフレッドは真剣な表情で春風に向き直った。


 「うむ。それは……」


 「それは?」


 ーーゴクリ。


 「我らセイクリアの王族を、ときめかせた罪だ!」


 そう言い放ったウィルフレッドに、春風だけじゃなく周囲の人達までもが、


 『……はい?』


 と、皆一斉に首を傾げたが、そんな彼らを前に、ウィルフレッドは話を続ける。


 「そう、『勇者召喚』が行われたあの日、其方は国王である私に、3度にも渡る暴言を吐いたが、そのどれもが私の心に大きく響き、結果、男であるにも関わらず、其方にときめいてしまったのだ」


 (ああ、そういえばイブリーヌ様がそんなことを言ってたな)


 「そして、それは私だけでなく、妻のマーガレットも同様だった」


 (う、うん、それも聞いたな)


 「更に娘のクラリッサとイブリーヌもそうだ。妹のイブリーヌは最初から其方にときめいていたのだが、姉のクラリッサは、最初は其方への怒りでどうにか耐えていたのが、ついこの間、自分もときめいたのを認めたのだ」


 (ああ、そんな! とうとうクラリッサ様まで!)


 「そして今日、其方が作ったこのハンバーガーを食べた瞬間、あまりの美味さに其方へのときめきは更にましたのだ」


 「え、ええぇ?」


 「わかるか? 其方はこれほどまでに、我らセイクリアの王族をときめかせたのだ。これを、『罪』と呼ばずして何と呼ぶというのだ?」


 あまりにもとんでもない罪状(?)に、周囲がポカンとしている中、春風はというと、「フ……」と小さく笑って、


 「すいませんでしたぁ!」


 と勢いよく頭を下げて謝罪した。


 更に春風はその状態のまま、


 「あ、あの、俺は一体どのような『罰』を受けるのですか?」

 

 と、恐る恐るウィルフレッドに尋ねると、


 「其方へ与える『罰』、それは……」


 「それは?」


 春風だけでなく、周囲の人達までもが「(ゴクリ)」と固唾を飲む中、ウィルフレッドはニヤリと笑って言い放つ。


 「我が娘、イブリーヌ・ニア・セイクリアと、()()してもらう!」


 その言葉に、春風を含めた周囲の人達は、


 『……はいいいいいいいぃっ!?』

 

 と、何とも訳のわからない悲鳴をあげたのだった。


 

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