第34話 「これから」について
今回は前作26話の後半部分になります。
その後、ログハウスの中で春風達は、これからどうするのかについて話し合った。
途中休憩を挟みながら行われたその話し合いは、約1時間くらいに及び、その頃にはある程度の計画が出来上がった。
そして、
「それじゃあ、今後のことについて確認するぜ」
とその場を仕切るゼウスに、春風達の視線が集まった。
「春風」
「はい」
「わかっていると思うが、今のお前は『力』に目覚めたばかりで、思いっきり弱い。だからお前には今日から1週間ここに滞在して、『力』の使い方や戦い方、そんでその他の知識や技術を身に付けて貰うぞ」
「わかりました」
「ヘリア嬢ちゃんと精霊王達は、春風にその辺りの事を教えるってことで」
『お任せください』
「で、その間リアナ嬢ちゃんは、外でハンター業だっけか? そっちの方に勤しんで貰う。くれぐれも、周囲に怪しまれないようにな」
「は、はい!」
春風達が納得したの確認すると、ゼウスは「よし」と頷き、
「じゃ、全員が納得したことで、これで話し合いは終了!」
と、両手をパンと叩いて終了を宣言し、その後、
「じゃ、そういうわけで、俺はこの辺で失礼するわ!」
と言って、春風の零号をゲートにして、もといた場所へと戻った。
それから少しして、
「外の空気を吸うか」
春風はそう言って、再びログハウスの外に出た。今後の事が決まった所為か多少疲れはあったが、最初に外に出た時よりも精神的な余裕が出来ていた。
湖の前で体をグゥッと伸ばしていると、
「春風」
と、背後で自分を呼ぶ声がしたので振り返ってみると、そこには申し訳なさそうな表情のリアナがいた。
「リアナさん、どうしたんですか?」
春風がそう尋ねると、リアナは表情を崩さずに、
「ごめん、春風。いきなり別行動になる形になっちゃって……」
と謝罪した。
「ああ、そんな気にしないでください。リアナさんにはハンターとしての仕事があるんですから」
それを見て慌てた春風は、苦笑いをしながらそう言ったが、リアナは表情を変えずに下を向いた。
春風はどうしたものかと悩んでいると、リアナはスッと顔を上げて、春風を真っ直ぐ見つめると、
「あのさ、春風」
「な、何でしょうか?」
「私達、これから仲間になるわけだよね?」
「あー、はい。そうですね」
「その、『さん』付けと敬語、やめて欲しいんだけど……駄目かな?」
「……はい?」
リアナからいきなりそう提案されて、春風は思わず「?」を浮かべて首を傾げた。
わけがわからないと思った春風は、リアナに質問する。
「えっと、それどういう意味ですか?」
「ああ、別に深い意味は無いんだけど、ほら、私達、これから一緒に悪い奴らをやっつける仲間になるわけだし、敬語を使う春風も良かったけど、もう少し砕けた感じになっても良いんじゃないかなって……」
「そ、そんな、『砕けた感じ』って……。ていうか、そんな事言っちゃって良いんですか? ヘリアテス様の許可とかいるんじゃないですか?」
春風がリアナにそんな質問をした時、
「良いですよ、私は」
「「!」」
突然の発言に驚いた春風とリアナが、声のした方に振り向くと、そこには穏やかな笑みを浮かべるヘリアテスがいた。
「あの、ヘリアテス様? 『良い』ってどういう意味ですか?」
春風は恐る恐る尋ねると、ヘリアテスは穏やかな笑みを崩さずに答える。
「ですから、『良い』って言ったのです」
「……それ、本気で言ってます?」
「ええ、本気です。春風さんなら良いと思っています。というか、春風さんはきっと凄く優しすぎる方だと思いますので、少しくらい乱暴なのが丁度良いと思います」
と、ヘリアテスにそう言われた時、春風は昔、養父である涼司に言われたことを思い出した。
ーーお前は基本、優しくて良い奴だから、少しくらい不良なのが丁度良いんだよ。
(……オヤジ)
春風はフッと笑うと、リアナの方を向いて、
「ああ、わかったよ、リアナ」
と、言われると、リアナは明るい笑顔になって、
「それじゃあ、改めて……」
と言うと、春風の前にスッと右手を出し、
「『妖獣戦士』のリアナ・フィアンマです。ハンターをやってます」
と言った。
それを見て、春風はリアナの側に近づくと、彼女の前に立ち、気の弱そうな笑みを浮かべて、
「『見習い賢者』の幸村春風。ちょっとユニークな一般人だ」
差し出されたその右手を掴むのだった。
次回は、第3章のエピローグ的な話を書く予定です。




