間話35 春風とアデレード
お待たせしました、間章5の最終話です。
それは、春風が星乃香に全ての事情を話した後のことだった。
「あぁ、マジでしんどかった」
そう呟いたように、あれから春風は、星乃香に勇者召喚が行われた「あの日」から、今日までに起こった全てのことを話した。その結果、
「どうして教えてくれなかったの!?」
と、星乃香にもの凄い剣幕で詰め寄られてしまったが、リアナと歩夢が必死になって宥めてくれたおかげで、その後は軽く説教だけで済んで、その場は解散となった。
そして現在、夜の帝城の中庭で、春風は1人、星空を眺めていた。星乃香の説教で精神的に疲れてしまったので、その気分転換をする為だ。
「うぅん。さて、そろそろ部屋に戻るか」
と、春風が中庭を出ようとしたその時、
「こんばんは、春風君」
「ん?」
不意に名前を呼ばれた春風が、その声がした方へと振り向くと、
「あ、アーデさん」
そこにいたのは、白金級ハンターのアーデことアデレードだった。
寝間着姿のアデレードは春風に近づくと、
「春風君。今日の戦い、お疲れ様」
と、春風に労いの言葉をかけた。
春風はその言葉を聞いて、
「ああそういえば、今日の戦いはアーデさんも見てたんでしたっけ?」
と尋ねると、
「あ、酷いなぁ、見てたに決まってるじゃないか」
と、アデレードは頬を膨らませた。
そう、実は今日の春風達「七色の綺羅星」と、ウォーレン達「断罪官」との戦いは、ギルバートら皇族達や、イアンら子供達とアイザックだけじゃなく、なんとアデレードまでも見ていたのだ。もっというなら、その前の煌良達との戦いも見ていたと言っていい。
「す、すみません」
春風は申し訳なさそうにアデレードに向かってそう謝罪すると、アデレードは「プッ」と吹き出して、
「アハハ、いや、気にしないでくれ」
と、笑いながらそう返した。
その後、春風はアデレードに、
「あの、何でこちらに?」
と再び尋ねると、
「決まってるじゃないか、今日の戦いの『感想』を言いに来たんだよ。他にもあるけど」
と、アデレードは「何を言ってるんだ?」と言わんばかりの堂々とした態度でそう答えた。
「か、感想……ですか? も、もしかして、俺カッコ悪かったですか?」
「まさか! 思いっきりカッコよかったに決まってるじゃないか! 勿論、君の仲間達もね!」
真っ直ぐ春風を見てそう言い切ったアデレードに、春風は「ハハハ」と苦笑いを浮かべると、アデレードは更に話を続ける。
「そうだ、君は全然カッコ悪くなんかないさ。あの『鉄鬼』を相手に一歩も引かない戦いぶりを見せただけじゃなく、君を殺そうとしたにもかかわらず、その彼を『助ける』という選択が出来る君を、何故『カッコ悪い』などと思わなくちゃいけないんだ?」
と、アデレードにそう問われてしまい、春風は顔を真っ赤にして、
「あぁ、えっとぉ……」
と、思わず下を向いた。
しかし、そんな春風を前にしても、アデレードは話す勢いを弱めずに、
「今日のことだけじゃない、その前の勇者達との戦いだってそうだ。あれほどの大技を前にして、君はスキルの恩恵を受けない状態で立ち向かうなどというとんでもない状態にもかかわらず勝利を収めた。これは、十分素晴らしいことだと私は思っている」
「ちょ、ほんと恥ずかしいんで、やめて欲しいんですが」
「そして、そんな君に、私は勝ちたいと思っているんだ」
「ちょっとぉ、聞いてますかぁ?」
春風にそう問われて、アデレードはハッと我に返ると、「コホン」とわざとらしく咳き込んで、
「すまない、つい熱くなってしまったよ」
「いえ、お気になさらずに……」
「まぁそんなわけで、だ。あの戦いを見て、私は心から君と勝負し、そして勝ちたいと思っているんだ」
「は、そうですか」
「しかし、『勝ちたい』と思っても、私は君のことを何も知らない。だ、か、ら……」
「?」
「どうだろう、折角こうしてお話をしているんだ。これをきっかけに、お互いのことを語り合おうじゃないか」
と、そう提案してきたアデレードに、春風はポカンとなっていると、
「うーん。まぁ、あなたのことを教えてくれるなら、構いませんよ」
と、苦笑いしながらそう返した。
それを聞いたアデレードは、
「よし、じゃあ決まりだね!」
と、満面の笑みでそう言った。
その後、春風とアデレードは、若干恥ずかしそうにしながらも、お互いのことを語り合うのだった。
どうも、ハヤテです。
というわけで、間章5はこれで終了です。
次回からは、本編新章に入ります(多分、その前に投稿をお休みするかもしれませんが)。
果たして、春風君とその仲間達に、どんな試練が待ち受けているのか?
彼らの今後の活躍に、ご期待ください。




