第298話 嫌な「再会」と……
ウォーレン達断罪官との戦いが終わっと……思ったら、突如として春風達に向かって放たれた「何か」。
それは、巨大なエネルギーの塊だった。
いち早くそれに気づいた静流と学が、春風達の前に立つと、自身の武器である大剣と盾を媒体に、迫りくるエネルギーの塊にも負けない巨大な魔力の障壁を展開し、そのエネルギーの塊を防いだ。
その結果、多少の衝撃波が発生したが、全員無事という形で終わった。
「母さん!」
「学!」
その後、春風と煌良はすぐに静流と学のもとに駆け寄った。急な障壁の展開の所為か、2人とも地面に膝をついて、肩で息をしていた。
「母さん、大丈夫!?」
「学、大丈夫か!?」
春風と煌良が尋ねると、
「ええ、大丈夫よ春風」
「ぼ、僕もだよ。ちょっと疲れたけどね」
と、2人は春風達を心配させないように、笑顔でそう答えた。
そんな春風達を見たギルバートは、
「オイコラ、随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか! 隠れてないで出てきやがれぇっ!」
と、エネルギーの塊が放たれた森に向かって、怒鳴るようにそう叫んだ。
次の瞬間、ゴゴゴゴゴという大きな音と共に森の中から出てきたのは……、
「な、なんだありゃ?」
それは、キャタピラのような車輪に鋼鉄で作られたかのような重厚なボディ。そしてそこから突き出ているかのような、太くて長い金属の筒を持った、何処かこの世界に相応しくないものだった。
それを見て、恵樹がポツリと呟く。
「あれって、『戦車』?」
そう、それはまるで、春風達の故郷である「地球」の兵器、「戦車」だった。
見た目的には日本の戦車に近いものを思わせるかのようなフォルムだが、ボディも、キャタピラも、そして砲身も、全体的に見ると、それはあまりにも凶悪で、あまりにも異形なものだったのだ。
そして、その「異形の戦車」のようなものに続くように、断罪官と同じ黒い鎧を纏った者達が数人現れた。
「オイ、ウォーレン・アークライト。あいつらもお前さんの仲間か?」
その者達を見て、ギルバートはウォーレンに尋ねると、
「……いや、違う」
と、ウォーレンは首を横に振るって否定し、
「貴様ら、我が隊の隊員ではないな?」
と、目の前にいる者達に向かって尋ねた。
すると、その中の1人が、
「……口を慎めよ、同族殺しが」
と、ウォーレンに向かってそう言った。
「な、何だと!?」
その言葉を聞いて、ルークがカッとなると、
他の黒い鎧を纏った者の1人が、
「オイ見ろよ、負け犬が何か言ってるぞ」
と、ルークを見て馬鹿にするような発言をした。
そして、その言葉をきっかけに、他の鎧を纏った者達もクスクスと笑い出した。
春風はそんな彼らを見てもの凄く嫌な気分になったが、
(……あれ? なんかこいつら、何処かで会ったか?)
と、同時にそんな気持ちになった。全員、兜を深く被って顔を隠しているにも関わらずだ。
すると、先ほどウォーレンに酷いことを言った者が、春風を見て、
「……久しぶりだな、幸村春風」
というと、他の者達と共に自ら被っていた兜を脱いだ。
春風は兜の下の素顔を見て、
「……あ!」
と、驚きの声をあげた。
そんな春風を見て、兜を脱いだ者達は皆、
『フッフッフ……』
と、静かに笑った。
「あ、あんた達は……」
彼らの素顔を見て、たらりと冷や汗を流す春風。
もしこれがギャグ物語なら、この後、
「……どちら様ですか?」
と言って、
『ズコォーッ!』
と、周囲の人達をずっこけさせるだろう。
だが、
「『勇者召喚』が行われた日に俺とリアナでぶっ倒した、セイクリア王国の騎士達!」
春風は、彼らを覚えていた。
それに続くように、
『……あっ!』
と、水音、歩夢、鉄雄、恵樹、美羽、彩織、詩織、煌良、学、麗生、そしてイブリーヌもハッと彼らを思い出した。
「そ、そういえば……」
「そんなことも……」
「あったなぁ……」
と、口々にそう言った水音達。
その言葉にギルバートも、
「ああ、そういやぁそうだったなぁ」
と、メルヴィンからの報告を受けた時のこと思い出したかのように小声でそう呟いた。
するとその時、春風の脳裏に、ある「言葉」が浮かび上がった。
ーー「再会」なんだけど、こっちは「良いもの」と一緒に「嫌なもの」があるんだよね。
それは、夢の中で「エルード」と名乗った少女が言った言葉だった。
その瞬間、
(ちくしょう! 『嫌な再会』って、こういうことだったのかよ!)
と、その言葉の意味を初めて理解した。
因みに、春風がショックを受けた一方で、リアナの方はというと、
(……あれ? そんなこと、あったっけ?)
と、こちらは思いっきり忘れていたようだった。




