第294話 決戦、断罪官27 春風vs「鉄鬼」再び6
「な!? け、剣が、『槍』になっただと!?」
目の前にいる春風が起こした「奇跡」を見て、エクスプロシオンの中からカルドの驚きの声があがった。
それとは対照的に、春風の横に立つヘファイストスは、
「おお! こりゃすげぇな!」
と、春風が握っている「槍」を、まるで素晴らしいものを見るような目で見ていた。
そして、肝心の春風はというと、
(これが、オーディン様の『力』……)
と、両手で握る「槍」へと変化した愛刀・彼岸花を見て、心の中でそう呟いた。
真紅の穂先と白い長い柄以外は特に目立った装飾もなく、見た目的には煌良が振るっていた矛に似ているが、剣のように「斬る」ことも出来そうな大きな穂先はかなり鋭く、より「貫く」ことに特化していると言ってもいい。
そして、
(途轍もない『力』を感じる……)
その「槍」を握っていてわかるのは、そこに秘められたオーディンーー「神」の力だった。
春風がその力を感じていた、まさにその時、
「な、何をしてやがるウォーレン! 早く奴を殺せ!」
と、エクスプロシオン内のカルドが、ウォーレンにそう命令した。
それに従うように、ウォーレンはエクスプロシオンに力を込めると、春風に攻撃を仕掛けた。
「っ!」
力いっぱい振るわれたエクスプロシオンに向かって、春風も槍となった彼岸花を振るった。
そして、ガキィンという音を出して2人の武器がぶつかった次の瞬間、
「ウギャアアアアアアッ!」
と、エクスプロシオンからカルドの悲鳴が発せられた。
その悲鳴を聞いて、
「え?」
となった春風が、ぶつかった武器をよく見ると、
「あ、ヒビが入ってる」
なんと、春風が握る槍となった彼岸花の刃が、エクスプロシオンの刀身に大きなヒビを入れたのだ。
その後、ウォーレンはすぐに春風から離れると、
「い、痛い! 痛いいいいいいい! 何故だ、何故『神』であるこの俺が、こんな痛みをぉおおおおお!?」
と、再びエクスプロシオンからカルドの悲鳴じみた叫びがあがった。
春風はその様子を見て、
(す、すげぇ。さっきは全然歯が立たなかったのに、もうあんなでかいヒビが入ってる。これで『ほんの少し』とか凄すぎるだろ。でも……)
と、感心したが、
(これ、力の入れ加減を間違えたら、ウォーレンさんも危ないかも……)
と、その力の大きさに危機感を覚えた。
だが、春風のその心境を知らないカルドは、
「う、ウォーレン! もっとだ! もっと俺に力を込めろ! 早くぅ!」
と、再びウォーレンにそう命令した。
すると、その声に従ったのか、ウォーレンは先程以上に、エクスプロシオンに力を込めた。
それと同時に、とうとうウォーレンの両腕全体が黒く染まり、もうすぐ肩を通って両胸にまで届こうとしていた。
そんなウォーレンの姿を見て、
「オイ、不味いぞ春風! 急いで奴を助けないと、間に合わなくなるぞ!」
と、ヘファイストスは春風を急かした。
それを聞いて、春風は、
「……わかりました」
と、落ち着いた口調でそう返すと、槍となった彼岸花の先をウォーレンに向けて、
「やるぞ、彼岸花!」
と、静かに叫んだ。
そんな春風を前に、ウォーレンは無言でエクスプロシオンを振り上げて、今にも振り下ろしそうな位置でピタッと止めた。
一方春風も、彼岸花を両手でグッと握り、その真紅の先をウォーレンに向けて「突き」の構えをとって、ウォーレンと同じようにピタッと止めた。
睨み合う2人を前に、ヘファイストスは神であることを忘れて、ゴクリと固唾を飲みながらその様子を眺めていた。
そんな状況でも、
「もっとだ! もっと力を込めろ! そして、それでデカい技をぶっ放して、目の前にいる異世界の神とその小間使いをぶっ殺せ!」
と、カルドはウォーレンに向かって怒鳴りながらそう命令した。
そんなウォーレンを見て、春風は、
「ウォーレンさん……」
と、どこか悲しそうな表情をしたが、すぐに首を横に振るって我に返った後、
「一撃だ。この一撃に、今の俺の『全て』を込める!」
と、真っ直ぐウォーレンを見てそう言うと、槍となった彼岸花に力を込め始めた。
謝罪)
大変申し訳ありません。
前回の話の最後に出てきた、「彼岸花、神槍武装」ですが、まことに勝手ながら、名称を「彼岸花、神槍武装」に変更しました。
本当にすみません。




