第285話 決戦、断罪官18 「戦鬼」と「師匠」と「英雄達」の戦い3
(あの剣は……駄目だ! あれを振るわせてはいけない!)
と、凛依冴がやろうとしていることに気づいたルークは、すぐに凛依冴のもとに向かおうとしたが、
「させるかよ!」
と、それを遮るように水音が妨害に入った。
「邪魔をするなぁ!」
ルークはどうにか水音を避けようとした。しかし、
「そんなの……」
「嫌に……」
「決まってるでしょ?」
と、冬夜、雪花、静流も加わってきたので、ルークはますます焦り出した。
するとそこへ、
「準備出来たわよ!」
と3人の背後でそう叫ぶ凛依冴の声を聞いて、すぐにルークの側から離れた。
「! こ、これは……!?」
取り残されたルークが見たもの、それは禍々しい紫色の刀身を持つ大剣を掲げた凛依冴の姿だった。
ただ、「大剣」といっても、実際凛依冴が持っているのは、巨大な刀身に形成された紫色のオーラを纏った漆黒の剣なのだが。
しかし、そうとは知らないルークは、目の前の凶悪な雰囲気をした剣を持つ凛依冴に、身動きが取れないでいた。
そんなルークを前に、凛依冴はニヤリと笑うと、
「さぁ、いっくわよぉ!」
と叫ぶと、手にした凶悪な見た目の剣を思いっきり振り下ろした。
次の瞬間、剣から巨大な紫色の斬撃が放たれた。
(し、しまった! このままではまずい!)
それを見たルークはハッとなってその場から離れようとしたが、
「させないよ」
ドゴン!
「何!?」
冬夜がルークの足下に攻撃魔術を放ち、その場から動くのを封じた。
そうこうしているうちに迫り来る斬撃。それを見たルークは、
「く、[絶対防御]!」
と、大急ぎで自身の目の前に光の壁を出現させた。
ところが。
ーーバリィン!
「何?」
斬撃は意図も容易く光の壁を真っ二つにした。
そしてその後、斬撃は光の壁の後ろにいるルークを飲み込んだ。
「グアアアアアアアッ!」
なす術もなくその斬撃を受けたルークは、身に纏っていた純白の鎧を破壊されると、そのまま大きく吹き飛ばされ、何度も体を地面にバウンドさせた。
一方、斬撃を放った凛依冴はというと、
「ふぅ、久々に振るったわぁ」
と、額の汗を拭っていた。
そこへ、
「師匠ぉ!」
と、水音達が凛依冴の側へ駆け寄ってきた。
「あら、みんなありがとう。おかげで良い一撃をぶっ放せたわ」
と、凛依冴が笑顔でそう言うと、
「ちょっと、何なんですか今の斬撃は!?」
「そうだよ。今のは僕達もかなり危なかったんだけど」
「ていうか、その剣(?)一体何なの!?」
「そうねぇ、出来れば説明をお願いしたいんだけど」
と、皆口々に文句じみたことを言い出したので、思わず凛依冴は、
「え、ええ?」
と、いくつもの「?」を浮かべた。
その時、
「ケケケ、なんか色々言われてるぞ相棒」
と、既に紫色の刀身を失った漆黒の剣から声が発せられたので、
「「「ま、また喋った!」」」
と、3人は驚きの声をあげた。
凛依冴はそんな3人を見て「アハハ」と乾いた笑い声をこぼすと、
「う、うう……」
という呻き声が聞こえた。
その声を聞いた凛依冴達は「ん?」と後ろを振り向くと、そこには剣を杖代わりにして立ち上がったルークがいた。よく見ると、鎧を失ったその体は、先ほどの凛依冴の斬撃を受けて、ボロボロになっていた。
そんなルークを見て凛依冴が、
「もうよしなよ」
と話しかけると、
「ま、まだだ、まだ終われない」
と、満身創痍のルークはそう返した。
「そんな状態で、まだ戦う気かい?」
と、今度は冬夜がそう尋ねると、
「あ、当たり前だ。断罪官の誇りにかけて、こんなところで、倒れるわけにはいかない!」
と、ルークは冬夜を睨みつけてそう答えた。
すると、
「どうして……」
『?』
「どうして、そんなになってまで戦おうとするんだ!?」
と、水音は悲しそうな表情でルークを問い詰めた。
ルークは水音を見てその問いに答える。
「決まってるだろ、全ての固有職保持者を、異端者を滅ぼす為だ!」
その答えを聞いて、水音は更に問い詰める。
「なんでそんなに固有職保持者を目の敵にするんだよ!? 彼らが一体何をしたっていうんだ!?」
問い詰められたルークは更に答える。
「……お前達異世界人は知らないだろう。神の加護を持たない奴らが、どれだけ危険な存在かを」
「な、何?」
「そして私は見た。その力を持つ者と、その力に魅入られた者達が引き起こした、『悲劇』と『地獄』を!」
「何を、言ってるの?」
戸惑う水音達を前に、ルークはその「話」を始めた。
謝罪)
まことに申し訳ありません。前回の話の最後の部分を一部修正しました。




