第280話 決戦、断罪官13 アリシア、「過去」との戦い3
今回は、ちょっと短めの話になります。
アリシア、煌良、学、麗世対ユリウス達断罪官第3小隊。
煌良達は次々と隊員達を倒していく中、アリシアとユリウスはというと、未だ互角の戦いを繰り広げていた。
「腕を上げたわね、アリシア」
「ええ、ハル君達と過ごしてきた日々が、私をここまで強くしてくれました」
「ハル君……『賢者』幸村春風ね?」
「はい、本人は半人前の『半熟賢者』だと言っていましたが」
「半熟? まぁ、随分と面白いことを言う子ね」
「……えぇ、本当に面白いんですよ、彼は。口では『自分の幸せの為だ』と言ってますが、仲間の為に、他人の為に、目の前の物事に全力で挑んでいく。私は、そんな彼を『仲間』として助けたい、だから……」
「その為に、私達に勝つ、と?」
「……はい、すみません」
「謝らないで。あなたの『想い』は、十分過ぎるくらい伝わってきてるから」
お互い武器と武器、技と技をぶつけながら、そんな会話をする2人。
はたから見ると、それはまるで恋人同士の会話を思わせるかのような、何処か幸せそうで、何処か悲しそうなものだった。
しかし、そんなひと時に、終わりの時が来る。
ーーバキィン!
「くっ!」
何度目かの武器の打ち合い後、アリシアの長剣が先に武器が壊れたのだ。
「流石はウォーリス帝国製の武器、結構良いものだったわ。でも、断罪官小隊長に与えられるこの武器の敵ではなかったようね」
武器を失ったアリシアに向かって、ユリウスは不敵に笑いながらそう言った。
そこへ更に追い討ちをかけるかのように、ユリウスはスッと静かに目を閉じると、深呼吸して意識を集中し始めた。
すると、ユリウスが持つ2本の槍が、オーラのようなものを纏った。
それを見て、アリシアはユリウスが、「大技」を放とうとしていると確信した。
「さぁ、これで終わりよアリシア! 私の全てを込めたこの一撃、受けてみなさい!」
そう言い放ったユリウスに、アリシアは冷や汗を流したが、
「申し訳ありませんが、私も、負けるわけにはいきません!」
と、アリシアは真っ直ぐユリウスを見てそう言い返すと、折れた長剣をその場に捨てて、腰の革製のポーチに手を突っ込み、そこから「あるもの」を取り出した。
「! それは!」
それは、この世界にはない武器にして、春風の祖国「日本」の武器、鞘に収まった一振りの刀だった。
(凛依冴師匠……)
それは数日前、ウォーリス帝国帝城内の訓練場でのことだった。
「これを、私にですか?」
凛依冴から「刀」を受け取ったアリシアがそう尋ねると、
「うん。私の訓練に耐えきった、まぁ『ご褒美』みたいなものかな」
と、凛依冴は真面目な表情でそう答えた。
アリシアは春風だけでなく、凛依冴からも戦闘の訓練を受けていた。そして、今凛依冴が言ったように訓練に見事耐えきったアリシアは、その「ご褒美」としてその「刀」を授かったのだ。
アリシアは受け取った「刀」を鞘から抜いた。
「……綺麗だ」
その刀身の美しさに見惚れていると、凛依冴が話しかけてきた。
「春風の彼岸花程じゃないけど、そのコも立派な『魔剣』でね、魔力を流すことによって切れ味が強化される優れものよ」
「それは、凄いですね。でも、どうしてコレを私に?」
「言ったでしょ? 『ご褒美』だって。それに、あの技を使う気なら、その長剣よりもそっちの方が向いてるしね」
「凛依冴師匠……」
そして現在、長剣を失ったアリシアは、凛依冴から授かったその「刀」を手に取る。
(凛依冴師匠、そしてハル君。今こそ、私に『力』を貸してほしい!)
と、「刀」をグッと握りながら心の中でそう呟くと、アリシアはとある「構え」をとった。
「その構えは……」
それは、アリシアが2回ほど見た、春風が使ったとある「技」を放つ為の「構え」だった。
その姿を、丁度自分達の戦いを終えた煌良達が見つめる。
「ねぇ煌良。あれって……」
「あぁ、間違いない。あれは……」
その「構え」を見て、煌良は答える。
「居合い切りだ」
次回、アリシアvsユリウス、決着の時です。




