第26話 春風、「神様(本物)」に会う
「この世界の、『本当の神様』に会わせてあげる」
リアナにそう言われた春風は、現在、彼女と共にセイクリア王国から少し離れた森の中を歩いていた。
まだ昼間だというのに、森の中は薄暗く、今にも何かが出てきそうな雰囲気だった。
暫く歩いていると、
「よし、この辺りでいいかな」
リアナそう言ってその場に立ち止まり、
「おーい、みんなー、出てきていいよー」
と、周囲を見回しながら誰かを呼び出した。
春風は「何だろう?」と思って首を傾げると、リアナの周りにピンポン玉くらいの大きさの、赤や青といった様々な色の光の粒が集まってきた。
「えっと、リアナさん、その子(?)達は一体……?」
春風は戸惑いながら質問すると、リアナは春風の方を振り向いて笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。この子達は『精霊』っていって、私の大切な『家族』で『友達』なんだ」
そう言った後、リアナはその精霊達に向き直って、
「お母さんの所への道をお願い」
と頼んだ。
すると、精霊達は空中に小さな光の粒を放った。幾つもの粒はリアナの前で1つに集まり、やがてそれは白い大きな扉になった。
「さ、行くよ春風」
そう言って、リアナはその白い扉のノブを掴んで、ガチャリと音を立てて扉を開くと、その向こうへと入っていった。それを見て、春風は若干びびっていたが、すぐにその後を追いかけた。
扉を潜った先はまた森の中だったが、先程までいた森の中とは違って、どこか神秘的な雰囲気を感じた。
「えっと、ここも……エルードなんだよな?」
と、思わずポロッと呟いてしまうくらい、春風はその雰囲気に見惚れてしまっていた。
「こっちだよ春風」
腕を振りながらスタスタと歩くリアナの後を追いかける春風。暫く進んでいると、一軒の木造の家ーーログハウスに辿り着いた。
「ちょっと待ってて」
そう言って、リアナはログハウスの玄関の扉の前に立つと、トントンと扉をノックした。すると、
「はーい」
と、扉の向こうから幼い少女の様な声がした。
「お母さん、リアナだよ」
リアナがそう言うと、扉の向こうからタタタっと足音が聞こえて、ガチャリと扉が開いた。
「おかえり、リアナ」
そして現れたのは、東洋の民族衣装の様な服を着た、燃え盛る炎を思わせる真っ赤な長い髪と金色の瞳を持つ10歳くらいの少女だった。
リアナはその少女を見て次の瞬間、
「ただいま、お母さん」
と、笑顔で少女をそう呼んだ。
(え!? 『お母さん』!?)
驚きのあまり絶句する春風。当然だろう。目の前にいるどう見ても自分とリアナより年下くらいの少女を、リアナ本人は「お母さん」と呼んでいるのだから。
リアナはそんな状態の春風を無視して、
「紹介するね春風。私のお母さんで、この世界の『本当の神様』だよ」
と、少女を紹介した。
紹介された少女は、穏やかな表情で、
「はじめまして、異世界の方」
と、見た目は幼いのにそれを感じさせない雰囲気を出しながら言った。
その言葉を聞いてハッとなった春風は、意を決した表情でリアナと少女に近づいた。
そして、少女の前に立つと、スッと静かに跪いて、
「お初にお目にかかります。自分は、異世界「地球」より参りました、幸村春風と申します。無礼を承知でお尋ねしますが、『太陽と花の女神ヘリアテス』様でよろしいでしょうか?」
と、質問した。
その姿に少女は驚いたが、すぐに落ち着いた口調で、
「そんな風に呼ばれたのは、本当に久しぶりですね。そうです、私の名はヘリアテス。この世界『エルード』の『太陽』と『花』を司りし女神……と言っても、今の私にはほんの僅かしか『神』としての力を持っていません。あと、恥ずかしいですので、どうか顔を上げてください」
と、少し恥ずかしそうに言った。
「はい、わかりました」
春風はその言葉に従って、顔をスッと上げると、
「あの、もう1つ無礼を承知で、貴方にお願いしたいことがあります」
と、真剣な表情で言った。
「何でしょうか?」
「お手数ですが、お手を拝借したいのです」
その言葉に、少女ーーヘリアテスは一瞬「え?」と目が点になったが、すぐに穏やかな表情に戻って、
「どうぞ」
と、春風に右手を差し出した。
「では、失礼します」
春風がそう言ってヘリアテスの手に触れた瞬間、
「『エルード』ノ神トノ接触ヲ確認。『地球』ノ神トノ通信ガ出来ルヨウニナリマシタ」
と、頭の中で声が聞こえた。
するとーー。
ーージリリリリリ! ジリリリリリ!
と、春風のズボンのポケットからそんな音が聞こえた。
(まさか……)
そう思った春風はポケットに手を突っ込んで、その音の発生源ーー「魔導スマートフォン零号(以下零号)」を手に取ると、その画面には「とある存在」の名前が表示されていた。
春風は零号を通話状態にして、
「はい、もしもし」
と話しかけた。
すると、
「あ、春風君? アマテラスこと天照大神でーす!」
それは、春風の祖国である日本の主神、「アマテラス」こと「天照大神」の声だった。
女神様は前作では「10歳くらいの少女」としか表記してなかったので、今作ではキチンとした特徴を書きました。これでもわからなかったら申し訳ありません。
そして、久々の日本の主神様の登場です。




