間話26 召喚が終わって
お待たせしました、1日遅れの、間話26弾です。
それは、春風が英雄転生召喚を行なった後のことだった。
死んだ両親と育ての親の妻が、「英雄」としてエルードに転生召喚され、その場が一旦解散になった後、眠れなかった春風は、1人、召喚が行われた帝城の中庭にいた。その手には、とある魔術師の手記を持っていた。
因みに、服装はそれまで着ていた衣装から普段着になっている。
「……」
中庭の中央にしゃがんだ春風は、召喚した英雄達の肉体となった「素体」が入っていた箱の残骸を眺めていた。そして、一通り破片を眺め終えると、その視線を持っている手記へと移した。
手記を開いてページを捲っていくと、最後のページの隅に、1人の人物の名前が書かれていた。
「……」
春風は無言で手記を閉じると、スッと立ち上がって、
「ありがとうございます」
と、小さく呟いた。
すると、
「よう、春風」
「!」
不意に名前を呼ばれて、春風は驚いて後ろを振り向くと、
「……ギルバート陛下」
そこにいたのは、ギルバートだった。
「なーにしてんだ? こんな夜遅くに」
ギルバートが明るい口調で春風にそう尋ねると、
「……ちょっと、自分がした事を確認しようと思いまして」
と、春風は視線を箱の残骸に移しながらそう答えた。
ギルバートも残骸を見て、「ああ」と小さく声を漏らすと、再び春風に尋ねる。
「で、召喚された『英雄』達は、今どうしてんだ?」
「お父さん達でしたら、部屋でぐっすり眠ってます」
「そうかい」
その後、2人は暫く沈黙していると、先に春風が口を開いた。
「あの、ギルバート陛下」
「? 何だ?」
「今日は、ありがとうございました。召喚が成功したのは、陛下のお陰です」
「おいおい、神様のサポートがあったとはいえ、成功したのはお前の力だ。俺はただ媒体になりそうなものを用意しただけだぜ? その媒体だって、セレスと水音が手に入れたものだし」
「ですが……」
「それにだ、あの素体自体、俺らもどうすれば良いのかわかんなくて持て余してたんだ。それをお前が有効的に使ってくれただけじゃなく、死んだ『家族』との再会っつうスゲェ奇跡まで見せてくれたんだ、寧ろこっちがお礼を言いたいってもんだぜ」
「それは……」
顔を下に向ける春風を見て、ギルバートがどうしたものかと考えていると、ふと、春風の持っている手記を見て、
「あ、そうだ!」
「?」
春風は「何だろう?」と首を傾げると、
「実はまだ言ってなかったんだが、セレス達が見つけた『魔術師』の遺体は、今帝国が所有している墓地に埋葬してあるんだわ」
「え、本当ですか?」
「ああ。無事、世界を救ったら、家族みんなでそいつの墓参りに行ってこいよ。で、そん時にお礼を言えば良い」
ギルバートの言葉を聞いて、それまで沈んだ表情をしていた春風は、少しだけ表情を明るくして、
「はい」
と、大きく頷いた。
ギルバートはそんな春風を見て、
「うし、良い返事だ!」
と笑顔になると、
「じゃあ、この話は終わりとして、実は春風にもう一つ言いてえ事があるんだわ」
「何ですか?」
春風は再び首を傾げると、
「召喚の時の、お前のあの姿、スゲェ似合ってた!」
「!」
「水音の話によれば、お前、過去に似たような格好をしたことがあるそうじゃねぇか!」
「ぐっ! 水音の奴、そこまで話してたのかよ」
「だが出来れば、俺はお前の口からも聞きたいと思っている。さぁ、話せ!」
「い、嫌です! 水音から話を聞いたなら、別に俺が話をする必要ないですよね!?」
「いいから話せ、これは皇帝命令だ!」
「ええ、何で俺命令されなきゃならんのです!?」
「それは、お前がウォーリス帝国のものだからだ!」
「そんな理不尽なぁ!」
「さぁ、とっとと話せ!」
「なんでだよぉ、もう!」
2人がそんなやり取りをしていると、
「あら、私も是非聞かせてほしいわぁ!」
「「?」」
突然の声に2人が振り向くと、そこにはギルバートの妻である皇妃エリノーラがいた。
「え、ええと、何でエリノーラ様がここに?」
春風は恐る恐るエリノーラに向かってそう尋ねると、
「気にしない気にしない、さぁ私にも聞かせて。あ、拒否権は無いからね」
「あなたも理不尽ですなぁ、おい!」
その後、結局春風は、ギルバートとエリノーラに、自信の過去のエピソード(主に凛依冴との『旅行』の話)を話す事になった。
というわけで、今回は、英雄転生召喚が終わってすぐの時の話でした。
この話の流れを考えるのに時間がかかってしまい、結果1日遅れの投稿になってしまいました。
本当に申し訳ありません。




