第213話 会話の後のあれこれ
その後、春風達は総一達と少し話し合うと、
「今日話し合った事は決して外に漏らさないように」
と念押しして、その日の話し合いを終えた。
ただ、その際に、
「ところで春風君、そちらで好きな人とか出来ましたか?」
と、総一からなんともお茶目(?)な質問をされて、
「そのあたりの事はノーコメントでお願いします」
と、春風はプレッシャーをかけて答えた。
ともあれ、久しぶりの家族との会話が終わると、
「ふぅ、今日はとっても有意義なひと時だったわぁ」
と、ギルバートは満足したという感じの表情で言った。そして、それについてはギルバートだけでなく、春風を含めた他の人達も同様だった。
だが、イブリーヌだけは少しシュンとした様子だった。
無理もないだろう。なにせ、春風の育ての親である涼司からはっきりと「怒り」を向けられたのだから。
そんなイブリーヌを見て、春風が「あの……」と声をかけようとすると、
「大丈夫です、こうなる覚悟は出来ていましたから」
と、イブリーヌは笑ってそう答えた後、そそくさと謁見の間を後にした。それに続くように、
「イブリーヌ様!」
と、ディックもその後を追いかけた。
春風も追いかけようとしたが、凛依冴に肩を掴まれて止められた。
春風はすぐに凛依冴の方を向くと、
「行っては駄目。これは、あの子自身が乗り越えなければいけない事だから」
と、凛依冴は首を横に振りながらそう言ったので、春風は何か言おうとしたが、グッと堪えて、
「……わかりました」
と、その場は凛依冴に従う事にした。
それから少しの間、謁見の間が沈黙に包まれると……。
ジリリリリリ! ジリリリリリ!
と、零号【改】が鳴り出したので、ハッとなった春風は、すぐにその画面を見た。
「アマテラス様?」
画面には、アマテラスの名前が表示されていた。
春風は何だろうと思って、
「はい、もしもし?」
と、それに出ると、
「あ、春風君? ちょっと私を呼んで欲しいんだけど、良いかな?」
と言ってきたので、春風は「わかりました」と答えると、すぐに零号【改】を掲げて、その場にアマテラスを召喚した。
「ありがと、春風君。本当は電話越しでも伝えられるんだけど、やっぱりここは直接話した方が良いかなと思って、来ちゃいました」
「はぁ。それで、一体何の御用ですか……」
春風がそう言いかけたその瞬間、ハッとなってアマテラスに恐る恐る尋ねた。
「あ、あの、もしかしてオヤジ達に地球消滅の事話したの、怒ってるのですか?」
「ああ、そっちは良いの、それについては皆怒ってないから。今日私がここに来たのは、それとは別の事なの」
そう話したアマテラスに、春風は「?」を浮かべて首を傾げたが、すぐに真面目な表情になって、
「……何でしょうか?」
と尋ねた。
すると、アマテラスも真面目な表情になって、
「春風君、今日私は君に、ある『権利』を与えに来たの」
「ある権利、ですか?」
「ええ。その為に……」
と、アマテラスはそう言うと、「ちょっと失礼」と言って春風の額をチョンと自身の指で突いた。
すると……。
「あ痛! 痛たたたたたっ!」
と、春風の頭に激痛が走った。
「ハル!?」
「フーちゃん!?」
と、リアナや歩夢だけじゃなく周りも心配そうに春風を見つけた。
暫くして、漸く激痛が治ると、
「……え? 何これ?」
と、春風は何かに気づいたような表情になった。
「ちょっとアマテラス様、私のスウィートハニーに何したの!? ていうか、ナニを与えたの!?」
と、凛依冴がアマテラスを睨みながらそう問い詰めると、アマテラスは真面目な表情でこう答えた。
「『勇者召喚』よりも凄い秘術、『英雄転生召喚』よ」
その答えを聞いて、春風と凛依冴を除く他の人達は皆、
『……は?』
と、一斉に首を傾げた。




