第197話 春風vsアデレード
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
そんなわけで、春風とアデレードの勝負は、帝城の中に設置された簡易闘技台で行われることになった。
「また闘技場でやってほしかった」
と文句を言っていたギルバートら皇族達であったが、肝心のアデレードはというと、
「まぁ、戦えるなら何処でも一緒だから」
と、全く気にしていなかったので、場所の事で揉め事が起こることはなかった。
そして現在、リアナら仲間達やギルバートら皇族達、帝国騎士や兵士達、そして、何故か来ていたアレス教会の信者達に見守られながら、春風とアデレードは対峙していた。
「やると決めたからには、本気でいかせてもらいます」
「良いよ、何処からでもかかってきなさい!」
2人はそれぞれの武器を構えて、真剣な眼差しでお互いを見ている。そんな2人を誰もがゴクリと固唾を飲みながら見守る中、
「それでは……両者、始め!」
と、審判役の男性が高々に叫んだ。
次の瞬間、先に動いたのは……アデレードだった。
「はぁっ!」
素早く春風の側まで近づいたアデレードは、謁見の間の時と同じ様に持っていた大剣を、春風に向かって振り下ろした。
「……っ」
しかし、彼岸花を構えていた春風は、刃が当たる瞬間にそれを回避した。その後、大剣の柄を握るアデレードの手首めがけて、彼岸花の峰を振り下ろした。
「おおっと!」
驚いたアデレードだったが、咄嗟に柄から手を離して後ろに跳んで回避した。
だがそうなる事を予測していたのか、春風はすかさずアデレードに向かって突進する。
「ぬおっ!?」
アデレードは前方に向かってジャンプし、突進したを避けた後、再び大剣を手にした。
それを追う様に、春風はアデレードに向かって再び突進。今度は先程のアデレードと同じように、彼女めがけて彼岸花を振り下ろした。勿論、刃ではなく峰の方を、だ。
「こんのぉ!」
アデレードは大剣を力強く引いて、その大きな刃で振り下ろされた彼岸花を防御した。その時の衝撃によるものか、春風は背後に少しだけ吹っ飛ばされた。
(くっ!)
春風は体を回転させてなんとか闘技台の上に着地すると、彼岸花を構え直してアデレードを睨みつけた。
2人は暫くの間見つめ合っていると、
「凄いね君、固有職能とはいえ後衛職だってのに、ここまで接近戦が出来るなんて」
と、アデレードはニヤリと笑って春風をそう褒めた。
それに対して、春風は表情を変える事なく、
「……まぁ、ちょっとユニークですから、俺」
と返事した。
「ハハ、面白いことを言うね。じゃあ……」
アデレードは笑いながらそう言うと、大剣の柄をカチリと鳴らした。
(ん? 何だ今の音?)
と春風がそう思った次の瞬間、
「これなら、どうかな!?」
アデレードの大剣の刃が幾つものパーツに分かれて、まるで鞭の様になった。
そして変形させたその刃を、春風めがけて思いっきり振るった。
「!?」
春風は紙一重の所でそれを避けるが、蛇の様に動くその刃は、容赦なく春風に襲いかかってくる。
「どう? これが私の武器、『大蛇剣ビッグヴァイパー』だよ! 以下に固有職保持者と言っても、こいつのしつこさに勝てるかな!?」
笑いながらその剣を振るうアデレード。春風が何度避けても、彼女の攻撃は止まることはなかった。
「確かに、これはしつこいな」
ボソリとそう呟いた春風。
(それなら、あれかな)
そんな彼の次の行動は……、
『え?』
何と、避けるのをやめてその場に留ることだった。
「何のつもりかわかんないけど、これで私の勝ちだ!」
アデレードがそう叫ぶと同時に、襲いかかってくるビッグヴァイパーの刃。
「危ない!」
誰かがそう悲鳴をあげた、まさにその時、春風は息を吸い込んで……、
「カァッ!」
腹の底から、思いっきり叫んだ。
次の瞬間、叫んだ春風を中心に衝撃波が発生した。
「んなぁっ!?」
そして、その時丁度春風とはそれほど離れてない位置にいたアデレードは、その衝撃波をまともに受けて体勢を崩した。
(ここだ!)
と、そう確信した春風は、アデレードに向かって左手を突き出し、
「求めるは“風”、『ウインド』!」
自身が作った風の魔術を発動した。
魔力で作られた風が、アデレードめがけて放たれた。このままいけば、間違いなく直撃するだろう。
だが、
「く、おんどりゃあああああああっ!」
そう叫んだアデレードはどうにか踏ん張った後、ビッグヴァイパーを鞭の形態から大剣に戻し、その刃に自身の魔力を纏わせると、春風の「ウインド」を、真っ二つに両断した。
「ふぅ。やってくれるねぇ」
アデレードは春風に向かってそう言うと、再びニヤリと笑って、
「それじゃあ、こっちも本気でいくよ!」
その時、アデレードの雰囲気が変わったのを感じて、春風と周囲の人達が、
「何だ?」
と「?」を浮かべていると、
「スキル[狂人化]、発動!」
アデレードがそう叫んだ瞬間、アデレードの体が、春風の彼岸花の刃よりも禍々しい、真っ赤なオーラの様なものに包まれた。
すると、それまでちょっと筋肉がついていた肉体がムキムキと音を立てて、まるでボディビルダーを思わせる体格になり、その両目も体を包むオーラと同じ禍々しい赤に染まった。
そんな、見るからに「ヤバそう」な見た目になったアデレードが、赤く染まった両目を春風に向けて言い放つ。
「ヒャッハーッ! さぁ、第2ラウンドといこうじゃないか!」
謝罪)
大変すみません、本日はこの場を借りて謝罪します。
勝手ながら誠に申し訳ございませんが、アデレードさんの身体的特徴につきましては、「金髪」からに「銀髪に」、ニックネーム(?)を、「アデル」から「アーデ」に変更しました。また、彼女の祖国も「ブルック王国」から「グレイシア王国」に修正しました。
本当にごめんなさい。




