第195話 2人の来客
(俺に客って、一体誰なんだろう?)
そんな事を考えながら、エドマンドと共に謁見の間に向かう春風。その際に、仲間達には凛依冴の訓練を受けるように言っておいた。
その後、謁見の間に着くと、
「お、来たか春風」
「いらっしゃい、春風ちゃん」
と、皇帝ギルバートと皇妃エリノーラが出迎えた。その側には、レイモンド、セレスティア、オズワルド、アンジェリカもいた。
「失礼します、ギルバート陛下、エリノーラ様。あの、俺に客というのは……?」
春風がそう尋ねると、ギルバートは「あそこだ」と、春風にその方向を見るよう促した。
そしてそれに従って、春風がその方向を見ると、そこには2人の人物がいた。
1人は背中に身の丈程の大きさを持つ大剣を背負い、動きやすそうな軽装鎧に身を包んだ長い銀髪の女性。
そして、もう1人は、
「久しぶりね、ハル君」
「メイベルさん!?」
シャーサルのハンターギルド総本部の女性職員、メイベルだった。
客の1人がメイベルだった事に驚いた春風が「どうしてここに?」と尋ねようとすると、
「はじめまして、ハル君……いや、幸村春風君と呼べば良いのかな?」
と、銀髪の女性がズイッとメイベルの前に出てそう言った。
春風は女性を警戒しながら、
「……そうですが、あなたは?」
と女性にそう尋ねると、女性はニヤリと笑って背中の大剣を構えて、春風に向かって突撃した。
「危ない!」
「春風!」
「春風ちゃん!」
突然の事に驚く皇族達。
しかし、春風は動じる事なく落ち着いた表情で右足に魔力を纏わせた。
そして、春風に向かって振り下ろされた大剣の刃を、
「ふんっ!」
ガキィンと魔力を纏わせた右足で蹴り返した。
「うわっ!」
驚いた女性は蹴りの勢いで後ろに飛ばされたが、すぐに体勢を立て直して着地しすると、キッと春風を睨んだ。
そんな女性に、春風は言う。
「ちょっと、危ないじゃないですか」
「いやお前が言うなよ! 今、何をやったんだ!?」
春風の言葉にハッとなったギルバートは、すぐに春風に突っ込みを入れた。
すると、
「ぷっ! アハハハハハッ!」
と、それまで春風を睨んでいた女性が、大きな声で笑い出した。
春風達は「何だ何だ?」と視線を女性に向けると、女性は大剣を担いで、
「いやぁ、私の一撃をビビるどころか蹴り返すなんて、凄いね君!」
と、笑顔で春風をそう褒めた。それを見てメイベルと皇族達は呆れた顔をしたが、春風だけは警戒心を解かず、目の前の女性をジッと見ていた。
その時、
「ちょっと、アーデちゃん! いきなり春風ちゃんに何をするの!」
と、怒った顔のエリノーラが、目の前の女性を「ちゃん」付けで呼びながらそう怒鳴った。
春風はそれを見て「ん?」と首を傾げると、隣のオズワルドを見て、
「あの、知り合いなんですか?」
と尋ねると、
「あー、彼女は……」
と、オズワルドが答えようとすると、
「彼女の名は、アデレード・マリッサ・グレイシア。グレイシア王国のお姫様で、エリーの姉の娘……つまり、俺の姪だ」
「へ? じゃあ……」
春風はオズワルドの方を向くと、視線を向けられたエドマンドは「ハァ」と溜め息を吐いて、
「そう、俺達五人兄弟の、従兄弟にあたる子だ」
「マジっすか!?」
思わずギョッとなった春風に、女性ーーアデレードが口を開く。
「そう、私はこんな格好をしているけど、実は一国のお姫様。そして……」
アデレードはビシッとポーズを取って、
「レギオン『紅蓮の猛牛』所属の白金級ハンター、アーデでもあるんだ!」
と、春風に向かってそう名乗った。
暫くの間、謁見の間が沈黙に包まれていると、春風が口を開いた。
「ハァ。それで、その白金級のハンターの……えっと」
「アーデで良いよ、『様』はいらない。よろしくね」
「わかりました。で、その白金級ハンターのアーデ……さんが、俺に何の御用ですか?」
と、何処かぎこちなさそうにアデレードに向かってそう尋ねると、
「決まってるでしょ」
アデレードは大剣の切先を春風に向けて、答える。
「『半熟賢者』の幸村春風! 君に勝負を挑みに来たんだよ!」
そう高々に言ったアデレード。その後、再び沈黙に包まれた後、
「……はい?」
と、春風は間抜けな声を漏らして首を傾げるのだった。
謝罪)
誠に勝手ながらすみません。前回の話の最後に出てきた人物を、オズワルドからエドマンドに変えて、セリフを少し修正しました。本当にごめんなさい。




