第191話 アレス教会、誕生
大変お待たせしてしました。2日遅れの投稿です。
女神マールが潰された。
目の前で起きたそのとんでもない出来事は、1人の男を新たな道へと進ませた。
その男は五神教会の信者の1人で、「神官」の職能保持者としても優秀な人物であり、やがて幹部になるだろうと信者達の中で噂されていた。
しかし、男はそのことに対して、「喜び」や「誇り」は全くなかった。
何故なら、男が五神教会に入った理由が、
「『神官』の職能を与えられたから、仕方なく」
だった為、同じ時期に入った他の信者達とは違って、「神」に対する信仰心はなく、どれほど月日が流れてもそれに目覚めることはなかった。
それ故に、そのことに苛立った教主モーゼスと幹部達は、男をウォーリス帝国帝都の支部に配属した。
そして、それを受け入れた男は、以後帝都で暮らすことになった。
元々信仰心のない男にとって、帝都での暮らしはとても充実していて、いつしか男は、
(ここで静かに年老いていくのも悪くはないな)
と考えるようになっていた。
しかし、それから数年後、男は自身の人生を大きく変える出来事に遭遇することになる。
きっかけは、闘技場で開催された2人の少年による決闘だった。
1人は世界を救う「勇者」として異世界から召喚された少年・水音。もう1人は中立都市シャーサルでハンター活動をしていた少年・ハル……なのだが、決闘開始直前に、皇妃エリノーラによってそのハンターの少年ハル……否、春風が、実は勇者と同じ異世界の人間で、固有職能「半熟賢者」の固有職保持者であると同時に異世界の神の使徒であると暴露され、それを聞いた男は、自分の心の中で「何か」が目覚めるのを感じた。
そして始まる2人の決闘。お互い一歩も譲らないその戦いぶりを見て、男は年甲斐もなくワクワクした。
だがその時、思わぬ事態が起こった。
自身が本来崇めるべき存在、女神マールの登場だ。
マールは水音を操って春風を殺そうとし、その間にセイクリア王国第2王女のイブリーヌまでも殺そうとした。
そのマールの姿を見て、観客席の人々は恐怖、もしくは感動の涙を流して跪いたりしていたが、男の中で芽生えていたのは、怒りだった。
(なんだこいつは? こんなのが『女神』だと? ふざけるな!)
怒りで強く握った拳を震わせる男だったが、次の瞬間、その怒りは一気に吹き飛ばされた。
マールの前に、もう1柱の「神」が現れたのだ。
「戦い」を司る異世界「地球」の神、アレス。
何処か気の弱そうな男性に見えるアレスは、強大な力でマールを圧倒した。
その後、水音は固有職保持者として覚醒し、春風と共にマールに戦いを挑んだ。
そして、春風が放った必殺技によって、マールは潰された。因みに、後からマールは死んでないと聞かされたが。
そのあまりの出来事に、多くの観客が発狂し、涙を流して絶望したが、その男はそうじゃなかった。
(ああ、見つけた。私は、『神』を見つけた!)
その時男の中で目覚めたのは、絶対に持つことが出来ないとされた「信仰心」だった。
奇妙なことになるが、本来崇めるべき存在だったマールが潰された事で、男は「信仰心」に目覚めたのだ。
その後、春風は気を失って、ギルバートによって闘技場外に連れ出されたの確認すると、
男も闘技場を出て、仲間の信者達に、
「私は、五神教会を抜ける!」
と宣言した。
止められる事も覚悟していた男だったが、仲間達の答えは、
『それなら、自分達も抜ける!』
だった。
まさかの答えに驚いた男。だが、ここで1人の信者が、
「抜けた後はどうするつもりだ?」
と尋ねてきたので、男はドヤ顔で答えた。
「新しい『教会』を作る!」
『新しい教会?』
「そうだ。私は今日、異世界の神アレス……いや、アレス様とその使徒である春風様を見て、私は自分が崇める神を見つけたのだ。故に、私はアレス様と春風様を崇める為の教会を作る!」
『おおーっ!』
「ん?ちょっと待て。アレス様はわかるが、『春風様』もとはどういう意味だ?」
「うむ。今日、女神マールを潰した彼に、何処か神々しさを感じたのだ。そして、私は思った。彼は五神教会の連中にとっては『悪魔』に見えるだろうが、私は違う。彼は、異世界の神が遣わした存在、そう、『御使様』だ!」
『おおおーっ!』
「アレス様、バンザーイ!」
『アレス様、バンザーイ!』
「御使春風様、バンザーイ!」
『御使春風様、バンザーイ!』
「よーし、では行こう! 皇帝陛下に新たな教会を作る許可を貰いに行くのだ!」
『行くぞー!』
その後、彼らは早速皇帝ギルバートに許可を貰いに行った。
そして、それを聞いたギルバートは、
「いいよー」
笑って許可を出した。しかも親指を立てて、だ。
『よっしゃーっ!』
こうして、彼らは新たな教会、「アレス教会」を立ち上げた。
それ以来、彼らは「戦い」の神アレスと、その使徒である春風を崇めるようになったのだ。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。投稿したと思ったら出来てない事がわかり、この様な時間の投稿になってしまいました。本当にごめんなさい。




