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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第8章 友との決闘

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第181話 春風vs水音11 闇の中の水音


 「あれ? ここは、何処だ?」


 目が覚めると、水音は真っ暗な闇の中にいた。


 何故こんな所にいるんだろうと辺りを見回すと、両腕に違和感がある事に気づいた。


 水音は何だろうと思って右腕から見てみると、


 「な、何だよこれ!?」


 右腕には大きな鎖が巻き付いていて、何処かに繋がれていた。そしてそれは、左腕も同様だった。


 「く! こんなもの!」


 水音は何とか鎖を外そうともがいたが、鎖は全くびくともせず、疲労が溜まっていくだけだった。


 その時、


 「無駄だよ」


 「え?」


 突然の声に驚いた水音は、「誰!?」と叫びながらその声がした方を向くと、そこにいたのは、


 「……僕?」


 ()()()()だった。


 驚いた水音だったが、よく見ると、もう1人の水音は格好こそ同じだが、髪は全体的に白く、その瞳の色は今いるこの空間と同じ真っ黒で、水音はそれがかなり不気味に感じた。


 「き、君は誰だ?」


 水音は目の前にいるもう1人の水音にそう尋ねると、


 「僕は()だよ。桜庭水音」


 と、もう1人の水音はそう答えた。


 「ぼ、『僕』だって?」


 「そうだよ。と言っても、僕は女神マール様が君に与えた『職能』にインプットされた、いわば『擬似人格』の様なものだよ」


 「擬似人格?」


 「そう。君やその周囲に万が一の事が起こった時、僕が覚醒して君の代わりに行動する為の存在だ。そして今、その万が一の事が起こった為、女神マール様は僕を目覚めさせ、代わりに君という存在を、この「意識と無意識の狭間」に封じ込めたんだ」


 「な、何だって!? い、一体どうして!?」


 水音は淡々と話すもう1人の水音にそう問い詰めると、もう1人の水音は無表情のまま答える。


 「忘れたの? ()()()()()()()だよ」


 「ぼ、僕が、望んだ?」


 「幸村春風に勝ちたいんでしょ?」


 「え……あ!」


 その瞬間、水音は全てを思い出した。


 「そうだ。あの時、僕は『春風に勝ちたい』、『負けたくない』って思って……」


 「そうだ。君のその思いに応えて、女神マール様が降臨し、僕を目覚めさせたんだ。全ては、君の『願い』を叶える為に」


 「そ、そんな……」


 告げられたその事実に、水音は愕然とした。


 だが、もう1人の水音は、そんな水音に構う事なく、


 「そして今、その願いは成就される」


 そう言って、水音の前に大きなスクリーンを出した。


 そこに映っていたのは、


 「やめろ水音、目を覚ますんだ!」


 春風だった。


 「は、春風!」


 スクリーンに映った春風を見て、水音は再びもがき出した。


 そんな水音を見て、もう1人の水音は無表情だが何処かうんざりした様に言う。


 「だから無駄だよ。いくら暴れたって、その鎖が切れる事はない」


 その言葉を聞いて、水音はキッともう1人の水音を睨みつけた。


 「ふざけるな! こんなの、僕は望んでなんかない!」


 「どうして? 君は彼に勝ちたいんじゃなかったのか?」


 「確かにそうだけど、それは僕が自分で叶えなきゃ意味がないんだ!」


 「負けそうになったくせに?」


 「黙れ! 擬似人格のお前なんかに、僕の何がわかるって言うんだ!?」


 怒りのままそう叫ぶ水音を見て、もう1人の水音は「ハァ」と溜め息を吐くと、


 「……確かに、僕は女神マール様によって君に植え付けられた存在だ。でも短い間だけど君と過ごしていくうちに、ある程度は知る事が出来たよ」


 「な、何を?」


 「君が、幸村春風に嫉妬している事さ」


 「!?」


 「君には他人にはない特別な『力』があるのに、いつも君は、彼の後を追っていくのに精一杯。対して彼は、特別な『力』がないのに君の想像を遥かに超える大活躍をしただけじゃなく、それと同時に多くの人を笑顔にしてきた。そんな彼に、全く嫉妬してないと?」


 「そ、それは……」


 告げられた言葉を聞いて、水音はその先を言う事が出来なかった。心の何処かで、「その通りだ」と思っていたからだ。


 「そして、2回も置いて行かれて、その事に怒りを感じてないとでも? 自分を置いて行った彼を、憎んでないとでも?」


 「それは……だけど……」


 「彼の理由なんて関係ない。必要なのは、2回も自分の所から去った。だから許せない。だから憎い。だから……殺したい。違う?」


 「ち、ちが……」


 水音はどうにか否定しようとした。


 その時、


 「うぅ、み、水音、頼むから目を覚ましてくれ」


 スクリーンに映った春風がそう言った。よく見ると、体中には小さいものだがいくつものダメージを受けていた。


 「は、春風、僕は……」


 水音が何か言おうとすると、もう1人の水音はスクリーンの春風の方を向いて、


 「もうすぐ、君の願いは叶えられる。僕が叶える。だから君は……そこでそのままじっとしていてくれ」


 スクリーンの春風を見て、もう1人の水音はそう告げた。


 その一方で、水音は、


 「違う……違う……やめてくれ……やめて……」


 ボソボソとそう呟くと、そのまま意識を失った。


 

 


 

 今回は、水音君視点の話でした。

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