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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第8章 友との決闘

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第174話 春風vs水音4 春風と彼岸花


 「お、おい、ありゃ何だ?」


 「何? あの傷……」


 傷だらけの春風の右腕を見て、観客達はざわざわしだした。


 一方、闘技台上の春風はというと、


 (やっべぇ、思わず右腕(こっち)で防御しちゃったよ! どうにか呪いが発動してくれたから良かったけど……)


 と、心の中では若干後悔していた。


 そんな状況の中、それまで放心状態だったジョリーンが「ハ!」と我に返って口を開く。


 「い、今何が起きたのでしょうか!? 春風君の右腕から赤い稲妻の様なものが出てきて、水音君の攻撃を弾いた様な気がしたんですが、一体何が起こったというのでしょうか!?」


 と、若干混乱気味にそう叫んだジョリーン。


 その時、


 「『呪い』だ」


 「へ?」


 突然発せられた声を聞いて、ジョリーンがその声がした方を向くと、そこにはギルバートがいた。キョトンと首を傾げるジョリーンを見て、ギルバートは説明を始める。


 「簡単に言うとな、今から2年前、春風は悪い奴らから子供達を守る為に一振りの剣を振るった。それは、使い手と融合しようとするという恐ろしい魔剣だったんだ。あの右腕の傷は、それを阻止しようとして無理矢理剣を引き剥がした時についたんだ」


 「え、そうだったんですか!?」


 「ああ、何とか融合を止める事は出来たんだが、その時魔剣の魔力が僅かに腕に残っちまってな、それがこの世界に来て、『呪い』という形に変わってしまったんだ。と言っても、元の世界にいた時からそうなっていたんだがな」


 「の、『呪い』ですか。ええっと、それってどういうものなんですか?」


 「今、春風が装備している剣以外の武器を持つと、腕に残った魔剣の魔力がそれを妨害する。つまり、他の武器が装備出来なくなるんだ」


 「そ、それはなんとも、厄介な呪いですね」


 「そうだ、かなり厄介なやつだ。で、その魔剣なんだが……」


 ギルバートはジッと凛依冴を見つめて言う。


 「2年前に、アンタが春風に持たせたそうじゃないか」


 それを聞いたジョリーンが「そうなんですか!?」と凛依冴の方を向くと、


 「……ええ」


 と、凛依冴は暗い表情で答えた。


 ギルバート続けて質問する。


 「なぁアンタ。その魔剣、『彼岸花』っつたっけ? 春風の話じゃあ、かなりやべぇ剣だってのはわかったが、アンタは何か知ってるんじゃないのか?」


 凛依冴は表情を暗くしたまま答える。


 「……あの剣、『彼岸花』は、強い『悲しみ』を込めて鍛えられた剣で、使い手の『悲しみ』と同調させる事によって強大な力を引き出すの」


 「か、悲しみって……」


 「でも剣に込められた『悲しみ』はとても強過ぎて、弱い人間が持てば……」


 「「「も、持てば?」」」


 「剣の『悲しみ』に喰われて、()()を失う」


 「「「す、『全て』って?」」」


 「言葉の通りよ。肉体、精神、そして、命」


 「「「へ、へぇ……」」」


 4秒の沈黙後、


 「「「そんなやべぇもの持たせたのかアンタはぁ!?」」」


 ギルバート、恵樹、ジョリーンは一斉に凛依冴に突っ込みを入れた。


 だが、凛依冴はそれでも暗い表情を変えずに、


 「そうね。あの時、春風に彼岸花を持たせた事については、今でも正しかったのかはわからない。実際、彼岸花を震い続けていくうちに、不幸な最後を遂げた者達の話を聞いた事があるから。だけど……」


 「「「だ、だけど?」」」


 「春風が初めて彼岸花を目にした時、なんとなくだけど感じてしまったの」


 「……何をだ?」


 「春風と彼岸花は()()()()()()()。もしかすると、この子なら彼岸花を使いこなせるかもしれないってね」


 「「「え、マジで?」」」


 「マジで。だから2年前のあの日、私はあの子に彼岸花を持たせたの。そして、もしあの子が『これを自分にください』と言ったら、そのままあげるつもりだった」


 「「「え、マジで!?」」」


 「マジで。でも、返されちゃったけどね。ハハハ」


 「「「……」」」


 乾いた笑いをこぼしながらそう言った凛依冴に、ギルバート達は何も言えなかった。


 そんな彼らを無視して、凛依冴はさらに話を続ける。


 「だけど、私にはわかるの。春風は近い将来、もう一度彼岸花を振るう時が来るってね。だから私は、その時に備える為に知り合いに頼んで、彼岸花の魔力を宿した『分身』を鍛えてもらったの」


 「それが、今、春風が振るっている剣なんだな?」


 「そうよ。まぁ、『分身』とは言ったけど、正確には『劣化コピー』といえば良いのかな。宿っている魔力もほんの僅かだし」


 「「「へ、へぇ」」」


 「そして私は、出来上がったその『分身』を、『お守り』として用意した指輪の中に封印し、それを春風に渡したの。いつか、必要になった時の為にね」


 「「「……」」」


 そう説明した凛依冴に、ギルバート達も、観客達も、再び何も言えなくなった。


 

 


 

 


 


 

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