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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第8章 友との決闘

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第157話 リアナの「覚悟」と、春風の「想い」

 今回はいつもより少し長めです。


 春風の怒りと悲しみが込められた叫びを聞いて、謁見の間が更なる沈黙に包まれると、最初に口を開いたのは、


 「ダァーっ! 馬鹿ウィルフの奴、やっちまったなぁオイ!」


 ギルバートだった。


 玉座に座った状態で、ギルバートはこの場にいないウィルフレッドに怒りの叫びをあげると、その勢いのまま続けて言った。


 「そりゃそんな答えを聞いたら信用出来ねぇって思うに決まってんだろったく! 俺だったらもっと上手く言うっての!」


 するとそこへ、


 「陛下、それは無理でしょう?」


 「へ? え、エリー?」


 「父上、それは絶対に無理だと思います」


 「え、お、オイ、レイ?」


 「うむ。無理だな」


 「セレス?」


 「ぜってぇ無理だろ」


 「エド?」


 「間違いなく無理だな」


 「オズ!?」


 「ごめんなさいお父様、無理だと思います」


 「アン、お前もか!?」


 妻と5人の子供達から一斉に「無理だ」と言われ、ギルバートはショックで玉座の上で縮こまった。よく見ると、その目からうるうると涙を流していた。


 そんなギルバートを放置して、エリノーラは「さてと」と言うと、スッと玉座から立ち上がって、


 「お話はわかりました。アマテラス様、この世界についてのご説明をありがとうございました。ヘリアテス様、知らなかったとはいえ、貴方様ともう1柱様を『邪神』扱いしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

 

 「「……」」


 「そして、春風ちゃん、水音ちゃん、勇者ちゃん達、この世界の人間達が大変な事をしでかしてしまって、本当にごめんなさい」


 と言うと、深々と頭を下げた。


 その姿を見て、ハッとなったギルバートは、慌てて姿勢を整えて「コホン」と咳き込むと、


 「あー、まぁ、なんだ。俺も、お前達の話はよくわかった。この世界の真実も、お前達の世界の危機も、そして、今この場には予言の悪魔が2人も揃っているって事がな」


 と、先程までシュンとなっていたのが嘘だったかの様に皇帝らしい威厳に満ちた態度でそう言った。それを見た春風達は、「うーん」と微妙な表情をした。


 ギルバートはそんな彼を前にして再び「コホン」と咳き込むと、


 「リアナ・フィアンマ」


 「はい」


 「白き悪魔のお前に質問だが……お前は、どうしたいんだ? あ、勿論、今後についての質問だが」


 と、リアナの方を見てそう質問すると、リアナh真っ直ぐギルバートを見て答える。


 「当然、大好きなお母さんとお父さんを、元の神様に戻したい」


 「その為に、今の神様を倒す事になってもか?」


 そう質問したギルバートに、リアナは顔を下に向けたが、直ぐにバッとギルバートを見て言い放つ。


 「倒します。それで、お母さんとお父さんの、神としての『力』を取り戻せるのなら」


 リアナの強い決意が込められたそのセリフを聞いて、ギルバートは「そうか」と小さく呟くと、


 「幸村春風」


 「はい」


 「赤き悪魔のお前としてはどうなんだ? お前も、同じ想いなのか?」


 ギルバートのその質問を聞いて、謁見の間にいる者達は皆、春風に視線を向けた。


 春風は「俺は」と言って顔を下に向けると、直ぐにゆっくりと顔を上げて答える。


 「俺は最初、この世界を本気で見捨てようと思っていました。それどころか、故郷である地球を守る為に、この世界を犠牲にしようと考えてました」


 「それは、この世界の人間達を皆殺しにするって意味なのか?」


 「違います」


 「即答!? てか違うのかよ!?


 「はい。『犠牲』にするっていうのは、次元の壁の材料はこの世界とこの世界の神様だけにして、地球だけは全力で阻止するって意味です。『壁の一部になると死ぬ事はない』って聞きましたから」


 「へ、へぇ、そうなのか。因みに、それ今でも考えているのか?」


 引き攣った笑みを浮かべてそう尋ねるギルバートに、春風は再び顔を下に向けて答える。


 「……残念な事に、もう、その考えを選ぶ事は出来ません」


 「『選ぶ事が出来ない』?」


 「ええ、考え自体はまだありますが、この世界でハンターとして生活して、レギオン作って仲間達と一緒に生活して、そしてそこにテツ達が加わって、皆と過ごして、気がついたら、出来てました」


 「ほう。それは何だ?」


 春風はまたゆっくりと顔を上げて答える。


 「……この世界での、『大切なもの』です」


 『!』


 「仲間達だけじゃありません。シャーサルで出会った住人達や、先輩ハンター達。あの人達と過ごした日々は、俺にとって、大切なものになってました。あれ程この世界の事を許せないと思ってたのに」


 『……』


 「それに、今のこの世界の神……いえ、侵略者の親玉達ですが、今でも『許せない』と思っているのに、同時に『殺したくない』とも思ってしまってるんです。この世界の人達にとって、連中は本物の神様で、俺はまさに彼らから信仰の対象を奪おうとしているわけで、地球の事も考えなきゃいけないのに、どちらか選ばなきゃいけないのに、今でも迷っている最中で……。ちくしょう、ダメだ、俺、マジで情けない。何が固有職保持者だよ、何が赤き悪魔だよ。俺、全然ダメダメじゃん」


 春風は弱々しくそう言うと、右手で顔を覆い、また下を向いた。


 その姿を、リアナ達は心配そうに見た。


 すると、


 「良かった」


 突然の声に春風が「え?」と顔を上げて声がした方を向くと、


 「やっぱり、春風は春風のままだったよ」


 そこには、春風に向かって優しく微笑む水音がいた。


 

 

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