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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第8章 友との決闘

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第156話 全てを話し終えて


 その後、春風はみんなに「全て」を話した。


 「勇者召喚」が行われたあの日、アマテラス達「地球の神々」に助けられたが、その後「地球消滅」の危機を知らされ、その原因がセイクリア王国が行った、「ルール無視の異世界召喚」にあること。


 そして、地球にいる大切な人達を守る為に神であるオーディンと契約し、「見習い賢者」の固有職保持者になったこと。


 その後、降り立ったセイクリア王国では、エルードは既に侵略された後で、アマテラス達が言っていたエルードの神様は今、人々から「邪神」として扱われていること。


 更に、リアナに連れられて出会った、「本当の神様」であるヘリアテスから、500前に現れた侵略者の親玉達によって神としての力を奪われ、その後長い間封印されていた事や、その時の侵略者達の子孫が現在で言う「人間」という種族で、その侵略者達が作ったのがセイクリア王国だということなど、時々リアナやヘリアテスと交代しながら、現在に至るまでの経緯を説明した。


 因みに、アデル達と出会った経緯については、本人達のことを考えて説明はしなかった。


 そんなこんなで、全てを話し終えた時には、謁見の間の中は重苦しい雰囲気に包まれた。


 勇者召喚された勇者こと歩夢達はショックで顔を真っ青にし、セイクリア王国の王族であるイブリーヌは、あまりの事実にその場に膝から崩れ落ちて放心状態になっていた。本来ならここでディックが支える所なのだが、そのディックも今、歩夢達と同じ様にショックで顔が真っ青だった。


 一方ギルバートら帝国の皇族達はというと、歩夢達と同じくショックこそ受けていたが、同時に何処か納得した様な表情を浮かべていた。


 そして、その側にいる水音も、話を聞いて顔を下に向け、拳をグッと握っていた。


 暫くの間沈黙していると、ギルバートが口を開く。


 「……なぁ、幸村春風」


 「何ですか?」


 「今、お前達が話したのは、全部事実か?」


 「信じたくない気持ちはわかりますが、事実です」


 「マジか……」


 そう言うと、ギルバートは「ハァ」と溜め息を吐いて、右手で顔を覆った。


 その時、


 「……何でだ?」


 「?」


 「何でそんな大事な事黙ってたんだよ!? 召喚されたあの日の時点で、何で教えてくれなかったんだよ!?」


 と、怒った鉄雄が春風の胸ぐらを掴んでそう怒鳴った。


 しかし、春風は動じることなく、冷静な口調で答える。


 「あの日、話を聞けたのは俺だけだった。みんなを納得させる確証だってなかったし、俺自身も納得して神様と契約したとはいえ、心のどこかでは『嘘であって欲しい』と考えていた。実際、神様に会ったのだってあの日が初めてだったしね。それに……」


 「?」


 「俺、元の世界じゃそれ程みんなと交流してなかったよね? そんな人間の言葉と、救いを求める多勢の人達の言葉、どっちが信じられると思う?」


 「う、そ、それは……。でも、その後じっくりと説明してくれたら……」


 「ハァ。あのさ、忘れたの? 俺、固有職保持者だよ? 『悪魔』の力を持った存在だよ? あのままあそこに残ってたら、そのうち俺の正体がバレて、連中に何をされるかわかったものじゃない」


 「そんな事は……」


 鉄雄が最後まで言おうとすると、


 「ああ、間違いなくなんかするだろうなぁ。連中は固有職保持者を絶対に認めないから」


 と、ギルバートが割って入ってきた。


 それを聞いて鉄雄が何も言えなくなると、春風は更に話を続けた。


 「それに、イブリーヌ様には申し訳ないけど、侵略者云々がなくても、俺はセイクリア王国の連中を信用する事は出来ないよ」


 春風はそう言い切ると、それまで放心状態だったイブリーヌがハッとなって立ち上がった。


 「そ、それは、どういう意味ですか!? わたくし達の、何が信用できないと言うのですか!?」


 怒ったイブリーヌがそう問い詰めると、春風は少し考え込んだが、直ぐに意を決した表情になって答えた。


 「覚えていますかイブリーヌ様? 召喚が行われたあの日、俺がウィルフレッド陛下に最後にした質問を」


 「え?」


 その春風の質問に、イブリーヌがキョトンと首を傾げると、リアナが代わりに答えた。


 「確か、『邪神と悪魔を倒す事が出来た時、あなたは俺達に何をしてくれるのですか?』だったよね?」


 「ああ、そしてその質問に、ウィルフレッド陛下はこう答えたんだ」


 ーー勿論、見事に倒す事が出来たならば、其方達を『英雄』として讃え、それ相応の褒美と名誉授ける事を約束しよう。


 「……てね」


 その言葉を聞いて、イブリーヌは訳がわからないと言わんばかりの表情で、


 「そ、それがどうしたと言うのですか? 誰だって『英雄』に憧れるものなのでしょう?」


 と尋ねると、春風はグッと拳を握って、


 「そう。あの時確かに、ウィルフレッド陛下はそう言いました。だけど……」


 『?』


 「だけど、ウィルフレッド陛下は、『故郷に、元の世界に帰そう』って、言ってくれなかった!」


 『!』


 「そのセリフを聞いた瞬間、俺は思ったんだ。『コイツらは俺達を、地球に帰す気なんかないんだ』って、『コイツらは信じちゃいけない奴らだ』って、そう思ったんだっ!」


 怒ってはいるが、同時に泣き出しそうな顔でそう叫ぶ春風に、周囲の人達は何も言うことが出来なかった。


 そして、春風の言葉を聞いて、イブリーヌは再びその場に崩れ落ちたのだった。


 


 

 


 

 

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