第148話 皇族集結、そして……
「すまない、失礼なことを言ってしまった」
「いえ、こちらこそ声を荒げてしまい、申し訳ありませんでした」
春風の突っ込みから少しして、漸く落ち着いた春風とエドマンド達兄妹は、お互いの発言を謝罪した。
そんな彼らの様子を見て、エリノーラは「フフ」と笑うと、
「まぁ、気持ちはわからなくもないわねぇ。春風ちゃん、とっても可愛いし」
と言ってきたので、春風は心の中で「ハァ」と溜め息を吐いた。
するとそこへ、
「あのー、すみません」
という声がして、春風達は一斉にその声がした方に向くと、そこには申し訳なさそうに手を上げたイブリーヌがいた。
「お久しぶりです。エドマンド様、オズワルド様、アンジェリカ様」
と挨拶したイブリーヌに、名前を呼ばれた3人は、
「おお! イブリんもいたのか!」
「久しぶりだな、イブリん」
「まぁ、イブリん様! お久しぶりです!」
と、イブリーヌをニックネームでそう呼んだので、
「その呼び方やめてください!」
と、イブリーヌは顔を赤くして怒りながら言った。それに対してエドマンド達は「えー?」と文句を言いたそうな表情をしていたが、春風達はスルーすることにした。
暫くすると、漸くショックから立ち直ったギルバートが、
「あれ? そういえばエリー、セレスはどうしたんだ?」
と、隣のエリノーラに尋ねると、
「あぁ、セレスちゃんでしたら……」
エリノーラが最後まで答えようとしたその時、何かの気配を感じて、
「あら、丁度良かったわ」
と、笑顔でそう言った。
その時、謁見の間の扉が開かれて、白銀の鎧を纏った威厳に満ちた女性が入ってきた。
「母上、セレスティア・ジェニー・ウォーリス、ただいま戻りました」
と、その女性、セレスティアはエリノーラにそう挨拶したが、隣のギルバートを見て、
「チッ!」
と盛大に舌打ちをした。
「おーい、セレスちゃーん、お父さんに対してそれはないんじゃないかなぁ?」
ギルバートは「文句があります」という感じでセレスティアにそう尋ねたが、
「うるさい黙れ、仕事を放り出して国を出ていった人間が何を吐かすか」
と返されてしまい、ギルバートはショックで再び玉座の上でシュンとなった。
エリノーラは「あらあら」と小さく笑いながら言うと、
「おかえりなさいセレスちゃん、遠征お疲れ様」
と、労いの言葉をかけた。
「ありがとうございます、母上」
「ウフフ。詳しい報告を聞きたいのだけど、ごめんなさい、今、お客様が来ているの」
「お客様……て、イブリんじゃないか、久しぶりだな」
「ですから、その呼び方やめてください!」
「それと……む、勇者もいるではないか!」
『お久しぶりです』
「ちょっと、スルーしないでください!」
スルーされてプンスカと怒るイブリーヌを無視して、セレスティアは次に春風達「七色の綺羅星」の方を向くと、
「そちらは初めましてだな。私は、ウォーリス帝国第1皇女、セレスティア・ジェニー・ウォーリスだ」
と、ちょっと荒いが礼儀正しい姿勢でそう名乗ったので、春風は一歩前に出て、
「お初にお目にかかります。ハンターレギオン『七色の綺羅星』リーダー、幸村春風です」
と名乗り返した。
セレスティアはその名前に驚いて、
「何!? そうか、お前が水音が言っていた幸村春風だな? うむ、確かに少女の様な顔つきだな」
と言ったので、春風はピキッとなって、
「男です」
と、今度は静かに突っ込みを入れた。
「ああ、気を悪くしたなら謝る。すまなかった」
「……いえ、気にしないでください」
春風は「ハハ」と乾いた笑い声を出しながらそう答えると、
「ああ! ここにいるなら丁度良いな」
と、何かを閃いたかの様にセレスティアは開かれた扉の方を向いて、
「水音、入って良いぞ!」
と大きな声で言った。
春風は「え?」と驚いた様に目を大きく見開くと、
「失礼します」
と、開かれた扉の向こうから、セレスティアと同じ白銀の鎧を纏った1人の少年が入ってきた。
『ああっ!』
鉄雄ら勇者達は、その少年を見て驚きの声をあげると、
「久しぶり、みんな、そして……」
その少年ーー桜庭水音は鉄雄達に向かってそう言った。
その後、春風の方を向いて、
「春風」
と、春風を名前で呼んだ。
春風は久しぶりに会った水音を見て、
「……うん、久しぶりだね、水音」
と言って、喜びや不安などが混じった複雑な笑みを浮かべた。




