第15話 滅びの予言
春風と小夜子とクラスメイト達に視線を向けられて、国王ウィルフレッドはゆっくりと口を開いた。
「はじめまして、勇者達よ。私の名は、ウィルフレッド・オーガスト・セイクリア。先程、娘のクラリッサの言った通り、この『セイクリア王国』の国王である。そして、妻のマーガレット・アルマ・セイクリアと、もう1人の娘で、第2王女のイブリーヌ・ニア・セイクリアだ」
と言って、ウィルフレッドは隣の玉座に座る自身の妻と、後ろの壁際にいるクラリッサと同じ白いドレスを着たもう1人の娘を紹介した。
「突然の事で困惑している所を申し訳無いのだが、どうか我々の話を聞いて欲しい。其方達を召喚した理由と、この世界に迫る危機を」
真剣な表情のウィルフレッドの言葉に、謁見の間の中は静かになった。その様子を見て、ウィルフレッドは続ける。
「実は現在、この世界『エルード』は滅びの危機に陥っている」
その言葉に、春風を除いたクラスメイト達はざわざわと狼狽だした。小夜子はそんな彼らを安心させる為に、毅然とした態度で質問した。
「あの、『危機に陥っている』とは、一体どういう事なのですか?」
小夜子の質問に周りから、
「無礼だぞ!」
「陛下に対して!」
といった怒鳴り声が聞こえたが、ウィルフレッドは「よい」と言って彼らを黙らせると、質問に答えた。
「その質問に答える為に、少し昔の話をしよう」
そして、ウィルフレッドはこの世界の歴史を語った。
今から500年前。
この世界が、2柱の「邪神」と、彼らが生み出した「悪しき種族」によって支配されていた時の事だった。
救いを求める人々の祈りによって、5柱の「良き神々」と彼らの加護を受けた勇敢なる戦士達が現れたのだ。
激しい戦いの末に、「良き神々」と戦士達によって、「邪神」達は封印され、「悪しき種族」は散り散りとなった。
「こうして、世界は『良き神々』に見守られながら、平和な時を過ごすようになったのだ。だが……」
「だが、何ですか?」
「今から17年前、とある人物が死ぬ間際に『恐ろしい予言』を遺したのだ」
「恐ろしい……予言?」
小夜子の質問に、ウィルフレッドは口を重々しく開く。
「邪神の加護を受けた『悪魔』によって、良き神々が殺され、世界は終焉を迎えるというのだ」
その言葉に、クラスメイト達は再び狼狽だした。これには小夜子も驚いたようだ。
「勿論、最初は信じる者など誰もいなかった。しかし、1年前にその『予言』が現実のものになるかもしれぬ事態が起こったのだ」
「そ、それは、一体何が起こったのですか!?」
毅然としながらも恐る恐る質問する小夜子に、ウィルフレッドは答えた。
「500年の封印から目覚めた『邪神』の1柱が、強力な魔物を生み出して世界中に放ったのだ。恐らく『予言』に出てくる『悪魔』とは、その『邪神』が生み出した魔物、もしくはそれを操る存在の事だろう」
再び静かになる謁見の間。クラスメイト達は開いた口が塞がらなかったが、小夜子は質問するのをやめなかった。
「それで、それと私達が召喚されたのと、どのような関係があるのですか?」
「うむ。世界中に『邪神』が生み出した魔物が暴れてから暫く経ったある日、神に仕える神官達が、『良き神々』より『使命』を授かったのだ」
それは、わかりやすく言うとこういう事だった。
神々曰く、『邪神』が生み出した魔物は、どれも強大すぎてこの世界の人々では太刀打ち出来ず、もしかしたら自分達神々でさえも勝てないどころか殺されるかもしれないという。
そこで、他の世界から強い『力』を持つ存在、即ち「勇者」を召喚し、共に戦って貰おうという事だった。
「そして、神々より授かった『勇者召喚』の秘術を行い、その結果、『勇者』として召喚されたのが、其方達なのだ」
ウィルフレッドの説明に、クラスメイト達は召喚された時以上に困惑しだした。そして、小夜子の方は開いた口が塞がらない状態になった。
だが、ただ1人、春風だけはウィルフレッドの説明を最後まで大人しく聞いていた。
その瞳に、強い「怒り」を宿して……。
王妃様と第2王女様の名前も変えました。




