第140話 ランクアップ、◯◯賢者
「ら、ランク、アップ?」
突然、頭の中で「声」にそう告げられた春風は、その言葉の意味を理解出来なかった。
だがその時、
「うわぁ! 何だこれ!?」
「ハル!?」
「フーちゃん!?」
突然、春風の目の前……否、周囲の景色が変わった。
「あ、あれ? ここは何処だ?」
気がつくと、春風は1人、見知らぬ場所に立っていた。
そこは、異質ではあるが何処か安心出来る様な、不思議な雰囲気に包まれた所だった。
春風がキョロキョロと辺りを見回すと、
「ん? 何だ? 女の子?」
いつの間にか目の前に、長い黒髪を持ち、白いワンピースを着た10歳くらいの少女がいた。
「き、君は?」
と、少し驚いた春風が尋ねたが、少女は無表情のまま何も答えなかった。
その後、少女は無言で春風に近づくと、スッと自身の右手を差し出した。
「この手を握って言いたいの?」
そう春風が尋ねると、少女は無表情でコクリと頷いた。
春風は用心しながら「わかった」と言うと、少女の手を優しく握った。
すると次の瞬間、全身が白い光に包まれて、そこで春風は意識を失った。
何処からか声が聞こえた。
「『ランクアップ』ヲ完了シマシタ」
「固有職能『見習い賢者』ハ、固有職能『半熟賢者』二、ランクアップシマシタ」
「ランクアップ二伴イ、専用スキル[魔術作成]、[魔石生成]、[魔導具錬成]ノ更ナル力ガ解放サレマシタ」
「更ニ、闇属性ノ魔力ヲ確認、『裏スキル』ノ入手ガ可能ニナリマシタ」
「現在ノ装備ガランクアップサレマシタ」
「装備『流離人のマント』、『流離人の戦闘服』、『流離人のインナー』、『流離人のゴーグル』、『流離人のグローブ』、『流離人のブーツ』ハ、『格闘魔術師のローブ』、『格闘魔術師のインナー』、『格闘魔術師のゴーグル』、『格闘魔術師のグローブ』、『格闘魔術師のブーツ』ニナリマシタ」
「左腕ノ『魔導スマートフォン零号』内二、1ツノ存在ヲ確認。コチラノランクアップモ開始シマス」
「ランクアップヲ完了シマシタ」
「存在名『浮遊霊ジゼル・ブルーム』ハ、『零の精霊ジゼル・ブルーム』ニランクアップシマシタ」
「以上、全テノランクアップヲ終了シマス。オ疲レ様デシタ」
声はそこで終わった。
「……ル! ハル! ハルッ!」
「ハッ!」
リアナの声を聞いて、春風はハッとなった。
「あ、あれ? リアナ? みんな? え? 一体、どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないよ! いきなりハルが消えたから、みんなびっくりしたんだから!」
プンスカと怒りながらそう答えたリアナ。その瞳は少々涙で溢れていた。
そしてそれはリアナだけでなく、隣にいる歩夢とルーシーも同様だった。
他の人達も、みんな心配そうな顔で春風を見ていた。
春風はそんな彼女達を見て、
「あー、うん。心配かけて、ごめん」
と、申し訳なさそうに謝った。
するとそこへ、恵樹が「はーい」と手を上げて口を開いた。
「ていうかさハルッち、その格好、どうしたの?」
と、そう尋ねられて、「へ?」となった春風は改めて自身の姿を見た。
「???」
おかしいと感じた春風は、腰のポーチに手を突っ込むと、そこから大きな鏡を取り出して自分の姿を見た。
「うわっ! 何だこれ!?」
そこに映ってたのは、それまでとは違う自分の姿だった。
いつも羽織っていた青いマントは空色に近い青いローブに変わっていて、ズボン、ゴーグル、グローブ、ブーツも、少し立派なものになっていた。ただし、左腕のアガートラームと、腰の彼岸花はそのままだったが。
(どうなってんだこれ……って、あ、そうだ!)
春風は鏡をしまった後、すぐにリアナ達の方の方を向くと、
「あ、あれは何だ!?」
と、明後日の方向に向かって指差した。
『へ!?』
と、全員がその方向を向いている隙に、春風は急いであるものをチェックした。
(ゲ! 何じゃこりゃあ!?)
それは、自身のステータスだった。




