第138話 戦いの終わりと、衝撃の事実
「あー、クレイグ君。それ、どうしたの?」
と、春風にそう尋ねられたクレイグは、担いでいる「それ」……神官を見ながら答える。
「怪しい動きしてたから、捕まえた」
「あぁ、そうだったんだ。じゃあ、それに話があるんで、下ろしてくれ」
「わかった」
クレイグはそう返事すると、担いでいた神官達を(ちょっと乱暴に)地面に下ろした。
尻餅をついた状態で下ろされた神官達は、春風をキッと睨みつけた後、直ぐに立ち上がって、
「い、いやぁ流石は勇者様方! 邪神の眷属を見事に打ち倒してしまうとは、誠に素晴らしい!」
と、その内の1人、おそらく神官達の代表者と思われる人物が、笑顔で鉄雄達を褒めた。
しかし、褒められた鉄雄達は、代表者に不信感丸出しの表情を向けた。そんな表情を向けられて、代表者は言葉を出す事が出来なかった。
そんな中、春風は「ハァ」と溜め息を吐くと、代表者に向かって口を開いた。
「あー、ちょっと聞きたい事があるんですが、よろしいでしょうか?」
「……何かな?」
ギロリと代表者が睨みつける中、春風は腰のポーチに手を突っ込むと、そこから「ある物」を取り出して、
「これ、なーんだ?」
と、代表者に見せながら尋ねた。
それは真紅の宝石がついた、6つの黒い腕輪だった。
「そ、それは!」
「ご存じですよね? あなた方がテツ達につけさせた腕輪ですよ」
「ど、どうして貴様がそれを持っている!?」
「なんかヤバそうな感じがしたので、戦闘前に外させました」
「ば、馬鹿な! それは、一度つけたら外す事は出来ない筈!」
「ああ、それでしたら……テメェらが知る必要はねぇよ」
「な!?」
と、そんな風に話す春風と代表者のやり取りを見て、ルーシーは代表者と他の神官達を睨みつけた。ルーシーだけではない、アデル達も同様だった。
それは遡ること戦闘前。
「それ、何ですか?」
と、鉄雄達の左手首に付いている黒い腕輪を指差して尋ねるルーシーに、
「あぁこれか? 何かステータスを強化してくれるって神官達がつけてくれたんだけど」
と鉄雄が答えると、
「そ、それ、凄く嫌なものを感じます」
『え?』
ルーシーのそのセリフに嫌な予感がした春風は、
「ちょっと失礼」
と、[英知]のスキルでその腕輪を調べた。その結果……。
爆散の腕輪(改)…呪いのアイテムの1つ。爆破の術式が刻まれた腕輪で、魔力を流す事によって大爆発を起こす。一度つけると絶対に外せない。また、改良されている為、遠隔操作での爆破も可能。
「大変だ」
『?』
「わかりやすく言うと……これ、腕輪型の爆弾だ」
『嘘ぉ!』
まさかの腕輪の真実に衝撃を受ける鉄雄達。急いで外そうとするが、説明の通り外す事が出来なかった。
困り果てた春風達だが、そこへ、
「あ、あの、私に見せてください」
と、ルーシーが手を上げた。その後、代表して鉄雄が腕輪をルーシーに見せると、
「う、うん。これなら、私、外せます」
『ホント!?』
「は、はい」
そう言った後、ルーシーがその腕輪に触れて、
「スキル[解呪]」
と、小さく唱えると、パキッと音を立てて腕輪が外れた。
『おおーっ!』
「ほ、他の皆さんも、見せてください」
その後、ルーシーは全員の腕輪を外すと、遠隔操作で爆破させない様に、
「スキル[封呪]」
と唱えて、腕輪の機能を封印した後、
「コイツは俺が持ってるよ」
と言って、春風が全て預かる事にし、その後鉄雄達を見送った。
そして現在。
「で、神官さん達、こんな物を勇者達につけてどうするつもりだったのかなぁ? ご丁寧に彼らを騙してさぁ」
その腕輪を見せながら、春風は神官達を問い詰めた。
『……』
だが全員下を向いて、答えようとしなかった。中には怒りからなのか、プルプルと体を震わせる者もいた。
春風はそんな彼らを見て「ふーん」と言うと、ニヤリと口を歪ませて、
「もしかして、勇者諸共邪神の眷属を抹殺するつもりだったのかなぁ?」
と、邪悪な笑みで質問した。
『っ!』
神官達はその質問にビクッとなったが、やはり誰一人答える者はいなかった。
今回は、ルーシーが大活躍の話でした。




