第137話 決めろ、必殺技!
暴走するループスの分身に、春風とリアナが攻撃を仕掛ける。
「求めるは“火”、『ファイア』!」
春風が火の魔術を繰り出し、
「ハァアッ!」
リアナが両剣「燃え盛る薔薇」による斬撃を放つ。
ーーッ!
ループスの分身はそれらを受けたが、今の所弱まる様子はなかった。
一方、残された鉄雄達はというと、
「ど、どうすりゃいいんだよ、マジで」
「どうすりゃいいって……」
と、いきなり必殺技によるトドメを任されてオロオロしていたが、ただ1人、恵樹だけは「うーん」と考え込んでいた。
そして、
「ちょっとやってみるか」
とボソリと言うと、先程春風がやっていた事を真似してみた。
「ハァアアアアア……」
右足に意識を集中する恵樹。すると、春風と同じ様に右足が光り出した。ただ、1つ春風と違うのは、右足はオレンジ色に輝き、その周りには幾つもの土の塊が浮いていた。
「あ、出来た」
『嘘ぉおおお!』
まさかの成功に驚く鉄雄達は、一斉に恵樹に詰め寄った。
「お、おい! それ、どうやったんだ!?」
「いや、さっきハルッちが言ってたでしょ? 『魔力を纏わせた』って。で、やってみたけどこの技、テッちゃんみたいな戦士系じゃなくて、俺みたいな魔術師系の職能持ち向けだと思う。あ、でもユメっちみたいなどっちも得意なタイプなら問題無く出来るんじゃないかな」
『え、そうなの!?』
「うん、今から説明するから、よく聞いてね」
その後、恵樹は鉄雄達にやり方を教えた。
一方、春風とリアナの方も大詰めを迎えていた。
「よし、相手はかなり弱ってきたぞ」
「そうだね、ハル」
春風の言う様に、ループスの分身は2人の攻撃を受けてだいぶ弱っていた。
そこへ、
「ハルッちぃ! 準備出来たよぉ!」
と、恵樹の声がしたのでそちらを向くと、そこには右足をそれぞれ輝かせた鉄雄達がいた。因みに、恵樹は先程説明した様にオレンジ色で土の塊、鉄雄も同じくオレンジだ。美羽は春風と同じ様に緑色と風、そして彩織、詩織、歩夢は青く、幾つもの小さな水の球が浮いていた。
「おお、グッドタイミング! それなら、リアナ、こっちも最後の仕上げだ!」
「うん!」
そう言うと、春風とリアナは直ぐに行動に移った。
2人は先ずループスの分身の膝裏にキックをお見舞いし、地面に両膝をつかせた。
次に、2人はループスの分身の向きを鉄雄達に向けて、動かない様にしっかりと押さえつけた。勿論、その際ループス本人にも手伝ってもらってだ。
春風は鉄雄達に向かって叫ぶ。
「よし、みんな! その輝く右足でコイツの胸の石を砕くんだ!」
『オッケー……って、この技なんて呼べば良いんだ!?』
「決まってんだろ! 『ブレイブ・ストライク』だ!」
『よっしゃあああああああ!』
その後、鉄雄達は春風と同じ様に一斉にジャンプし、
『ブレイブ・ストライクゥウウウウウウウウ!』
と叫ぶと、胸の石めがけて輝く右足による飛び蹴りをかました。
飛び蹴りを受けた石に、少しずつだがヒビが入った。完全に砕けるまでもう一息だ。
『ウォオオオオオオオ!』
春風とリアナが押さえつける中、蹴りに力を込める鉄雄達。そんな彼らを見て、アデル達レギオンメンバーや他のハンター、騎士達も、
『いっけぇえええええええ!』
と応援した。
すると、次の瞬間。
バキィン!
石はそう音を立てて砕け散った。
その後直ぐに、春風達はループスの分身から離れた。
そして。
チュドォオオオオオオオン!
ーーグォオオオオオオオ!
ループスの分身は、爆発した。
その様子を見る春風達の前に、小さな光の塊が現れた。
「見事ダ」
それは、間違いなくループスの声だった。
身構える鉄雄達だが、春風は「待って」と制した。
ループスは話し続ける。
「今回ハコノ辺デ立チ去ロウ。準備ガ出来次第、我ハマタ動ク。ソノ時ガクルノヲ楽シミニスルガイイ」
そう言い残すと、光の塊は消えた。
「取り敢えず、終わったな」
「うん。そうだね、ハル」
春風とリアナは、ループスの分身が爆発した跡地を見てそう呟いた。
そこへ、
「おーい!」
振り向くと、アデル達がこちらに向かって駆け寄ってきた。
春風達はお互い「うん」と頷き合うと、アデル達の方へと走り出した。
やがて全員が合流すると、春風がある事に気づいた。
「あれ? クレイグは?」
春風がアデルにそう尋ねると、
「……ここにいる」
と、クレイグの声がしたので、春風はその方向を見た。
そこには、五神教会の神官2、3人を担いだクレイグがいた。




