第129話 とんでもない行動
今回は少し短めです。
春風の「魔光大砲」を受けて、ループスの分身は爆発した。
爆発が起きた場所は黒煙が上がっていた。
「す、すごい」
「これが、彼の力だというのか!?」
その様子を見て、結界の外のイブリーヌとディックはそう呟いた。
アデル達や他のハンターと騎士達は、理解が出来ていないのか、全員、開いた口が塞がらなかった。
一方、攻撃を終えた春風はというと、目の前の黒煙を、ただジッと見ていた。
「や、やったか!?」
と、不意に背後から聞こえたその叫びに春風は、
(オイ! それフラグじゃねぇか!)
と心の中で突っ込みを入れた。
すると、ゴゴゴゴと地響きがして、
「フオオオオオオオッ!」
と、ループス本人の雄叫びと共に、黒煙をかき消してループスの分身が現れた。
その姿は、正に満身創痍と呼ぶに相応しいくらいボロボロになっていた。
「ハァ、流石は神様が作った分身。これくらいじゃあやられないか」
春風が溜め息混じりにそう呟くと……。
「ん?」
タクティカル・アタッチメントからバチバチと火花が飛び散った。そして……。
ボン!
と大きな音を立てて壊れた。白い煙が何本も上がった。
「うわっ! ヤベェ!」
春風は直ぐにタクティカル・アタッチメントを外した。
地面に落ちた瞬間、ガシャンという音と共に形が崩れたタクティカル・アタッチメントを見て、
「あ〜あ、壊れちゃった。ま、初めて動かしたにしては上出来かな」
と、春風はボソリとそう言った後、改めてループスの方を見た。
ループスの分身の第3の目から、ループスが言う。
「マサカ、我ヲココマデ追イ込ムトハナ」
「……出来れば、このまま皆を解放して大人しく帰ってくれるとありがたいのですが」
「悪イガ、ソレハ出来ン。本来ハオ前ノ実力ヲ測リ終エタラコノ場ヲ去ルツモリダッタガ、ココマデキタカラニハ、モットオ前ノ力ヲ見セテモラウゾ」
ループスはそう言うと、春風の背後にいる結界に閉じ込められたリアナ達を見て、
「スマナイ」
とボソリと言った。
『え?』
次の瞬間、ループスの分身は大きく口を開けて息を吸い込む姿勢になった。
すると、
「きゃ!?」
「う、うわぁ!」
と、結界に閉じ込められたリアナ達は、全員結界諸共ループスの口の中に吸い込まれた。
「……は?」
突然の事に呆然となった春風を他所に、結界を吸い込み終えたループスの分身は口を閉じて、ゴクンと喉を鳴らした。
すると、それまでボロボロの状態だったループスの分身の体は瞬く間に修復され、さらに体の大きさも倍近く大きくなった。
「イヤァア! 勇者様が、勇者様がぁ!」
それを見て、ドームの外のイブリーヌは悲鳴をあげた。他の人達は、全員顔を青ざめた。
そんな状態の彼らを無視して、ループスは春風に向かって叫ぶ。
「サァッ! 回復シタトコロデ、第2ラウンドトイコウデハナイカッ!」
そう叫んだ後、戦闘態勢に入ったループスの分身だったが、
「……ア、アレ?」
春風は、自身の胸を押さえたまま、
「ハァ、ハァ……」
と、苦しそうに息をきらしていた。
「オ、オイ、ドウシタ?」
ループスは心配そうに声をかけたが、春風からの返事はなく、寧ろ先程以上に苦しそうな表情になっていた。
「は、春風様、どうしたのですか?」
左腕のガントレット……否、アガートラームに装着された零号の中で、ジゼルが声をかけたが、やはり春風からの返事はなかった。
そして、とうとう立っていられなくなったのか、春風は胸を押さえたまま、両膝を地面についた。
「春風様? 春風様? 春風様ぁ!?」
ジゼルは何度も春風の名前を呼んだが、
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!」
それでも、春風からの返事はなかった。
謝罪)
すみません。前回のループスの最後のセリフが修正出来てなかったので、なおしました。




