第125話 そして、少年の戦いが始まる
お待たせしました。1日遅れの投稿です。
「お、オイ、ハル? 一体何言ってんだ?」
目の前で起こっている状況を、鉄雄は理解出来ないでいた。それは、美羽や歩夢達も同様だった。
しかし、彼らを無視して、春風は目の前にいる邪神の眷属の、「第3の目」に尋ねる。
「何故、俺の名前を知っているのですか?」
その質問に、第3の目から発せられた声の主、ループスは答える。
「オ前ガ世話ニナッテル連中ト同ジ様ニ、我ニモ特別ナ『情報網』ヲ持ッテイルノダ。ダカラ知ッテイルゾ、オ前ノ事モ、オ前ノ『目的』モナ」
「「……」」
ループスの答えを聞いて無言になる春風とリアナ。鉄雄達はそんな2人を、「?」を浮かべながらオロオロしていた。
さらにループスは話を続ける。
「本当ハモウ少シオ前ガ来ルノヲ待ッテイタカッタガ、ソイツラトノ戦イガアマリニモ退屈スギテナ、チョイト乱暴ナ手段ヲ使ワセテモラッタ。マァ、余計ナモノモ一緒ニ連レテキテシマッタガナ」
ループスは春風の側にいるレイモンドを見てそう言うと、
「た、退屈ですって!?」
と、ループスの発言が自分達に向けられたものだと理解して、美羽と他の勇者達はギリっと怒りの表情になった。
春風は左手をスッと上げて彼女達を落ち着かせると、ループスに向かって質問を続けた。
「それでは、あなたがここに来た目的とは?」
「勿論、オ前ニ会ウ為ダ」
「あなた自らがですか?」
「アア、ト言ッテモ、コイツハ我ガ作ッタ『分身』デ、我自身ハ別ノ場所ニイルガナ」
「随分と大所帯で来たんですね、こんなに魔物を引き連れて。ていうか、よくこれだけ集められましたね?」
「フフフ、コノ程度ノ魔物ヲ操ル事ナド、我ニトッテハ簡単ナ事ダ。アァ、安心シロ、我ハ無益ナ殺シハシナイ主義ダ。魔物共ニハ1人モ『殺スナ』ト命ジテアル。マ、ソノ所為デ結構倒サレテシマッタガナ」
(通りでこっちに1人も死者が出てないわけだよ)
春風は心の中でそう呟いて、納得の表情を浮かべていると、
「サテ、オ喋リハココマデダ」
と、ループスがそう言った次の瞬間、邪神の眷属……否、ループスの分身が、
ーーウォオオオオオオオン!
と高々に雄叫びを上げると、先程まで戦っていた魔物達の動きがピタリと止まった。
次に、ループスの声を発していた第3の目が激しく光りだすと、魔物達は皆光の粒となって、ループスの分身の中に入っていった。その中には、春風とレイモンドを連れてきた鳥の魔物も入っていた。
魔物達を取り込んだループスの分身の体はみるみる大きくなり、リアナと美羽達、そしてレイモンドを圧倒した。ただし、春風だけは冷静な表情だった。
そして巨大な狼となったループスの分身の第3の目から、再びループスの声が発せられた。
「ククク、驚クノハマダ早イ」
そう言った後、第3の目が再び激しく光りだした。すると、ループスの分身を中心に広範囲に渡るドームが形成され、春風達はその中に閉じ込められた。
さらにまた第3の目が光りだすと、今度は春風を残してリアナ達が宙に浮き、
「キャッ!」
「ウオッ!?」
「な、何これ!?」
と、それぞれ透明な球体に包まれた。
「みんな!」
驚いた春風に、ループスは言う。
「安心シロ、結界ノ中ニ入レタダケダ」
ループスのその言葉を聞いて、春風はキッとループスの分身と、ループスの声を発した第3の目を睨みつけた。
「ループス様、あなたはっ!」
ループスはその表情を見て、
「フム、良イ目ダ」
と、何処か小馬鹿にした様なセリフを言うと、
「サァ、オ前ノ『力』、コノ我ニ見セテミロ!」
と叫んで、戦闘態勢に入った。
「ジゼルさん、これマジでやらなきゃいけないとこなんですよね?」
春風は小声で左腕のガントレットに装着した零号内のジゼルにそう尋ねると、
「ええ、リアナ様達を救う為にも、ここは全力で挑まなかればなりません」
と、春風と同じく小声でそう答えた。
春風は「ですよねぇ」と呟くと、腰のベルトに挿した彼岸花を、ゆっくりと鞘から抜いた。
そして、
「わかりました、ループス様」
春風はループスの分身を睨みつけたまま、抜いた彼岸花を構えて言い放つ。
「ちょいと『実験』しながら、マジでいかせてもらいます!」
「イイダロウ、来ルガイイ!」
かくして、ループスの分身が作ったドームの中で、春風の戦いが始まった。
謝罪)
遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えるのにかなり時間がかかってしまいました。文章を読んでおかしな所がありましたら、ぜひ教えてください。




