第109話 拠点前にて
お待たせしました。1日遅れの投稿です。
新たな仲間、アイザックが加わった後、春風達は彼の歓迎会を兼ねた夕食にすることを決めると、
「リアナ、もう良いよ」
と、春風は廊下に1人で立たされているリアナを呼んだ。
実はアイザックから話を聞く前、ギルド総本部で調子に乗ったリアナへのお仕置きとして、アイザックが話をしている間、ずっと廊下に立たせていたのだ。しかもご丁寧に、頭の上に空のバケツをのせただけでなく、「反省中! 邪魔をするべからず!」と書かれた板を持たせて、だ。
「ハルゥ、ホントに良いの?」
春風に呼ばれたリアナは、今にも泣きそうな声で尋ねると、
「ああ。もう話はついたから、みんなで晩ご飯の準備をしよう」
と、春風は優しくそう答えた。
その後、リアナは「うん。ハル、ごめんなさい」と言って食堂に入り、頭のバケツと持っていたメッセージが書かれた板を春風に渡すと、準備に加わった。
ところが、
「あ、あのぉ、大変言いにくいことなのですが……」
と、ここでアイザックが申し訳なさそうに春風に話しかけた。
「ん? どうしたんですか?」
春風はそう言ってキョトンと首を傾げると、
「実を言いますと、人形となった今の私は、皆さんの様にものを食べることが出来なくなったのです」
『え、そうなの!?』
アイザックのまさかの告白に、春風達はどうしようと悩んでいると、
「あぁ、そんな顔をしないでください。皆さんのそのお気持ちだけで、私はもう十分お腹がいっぱいです」
と言われたので、春風達は少し悲しくなったが、くよくよしてもしょうがないと考え、すぐに気持ちを切り替えて、当初の予定通り夕食の支度をした。
賑やかな雰囲気で夕食を終えてから少しすると、玄関の扉をドンドンと叩く音が聞こえた。
(ん? 誰だろう?)
そう思った春風は様子を見ようとして、
「はーい、どなたですかぁ?」
と言って玄関の扉を開けると、
『こんばんは!』
と、そこにはクラスメイト達とイブリーヌがいた。
「……何でいるんですか?」
『遊びに来ちゃいました!』
「もう夜なんですけど」
『居ても立っても居られなくって、つい!』
「イブリーヌ姫も一緒に?」
『何かついて来てました!』
「来ちゃいました!」
「テヘ」と可愛く言うイブリーヌと、そんな彼女をここまで連れてきたクラスメイト達を見て、春風は「ハァ」と深い溜め息をはくと、
「話はわかりました。それで、そちらにいる御二方はどなたでしょうか?」
と、クラスメイト達の背後にいる2人の青年達を見た。
一般市民の服装をした青年達は、見たところ2人共20代前半くらいで、1人は長い栗色の髪に整った顔立ちを持つ、どこか気品に満ちたイケメンで、もう1人は短く切り揃えた黒髪を持つ、表情こそないがこちらも栗色の髪の青年に負けないくらいの顔立ちをしていた。
春風が怪しいものを見る様な目をしていると、栗色の髪の青年が1歩前に出て、
「酷いなぁ。今朝ギルド総本部ですれ違った筈だけど?」
と言われて、春風は少し考え込むと、
「あ!」
と、思い出した様に声をあげた。
そう、目の前にいる2人の青年は、今朝ギルド総本部の入り口ですれ違った、ウォーリス帝国の紋章が描かれた鎧を纏った男女の中にいたのだ。
「……つまりあなたは、ウォーリス帝国の人間ですか?」
と、春風が恐る恐る尋ねると、青年は穏やかな笑みを浮かべて答える。
「いかにも。私はウォーリス帝国第一皇子、レイモンド・エグバート・ウォーリス。そして、こっちは従者のサイラスだ」
「サイラス・グルーバーと申します」
「……何ですって?」
まさかのウォーリス帝国皇子とその従者の登場に、春風は一瞬固まったが、
「……えっと、近所迷惑になると思いますので、皆さん、どうぞ中に上がってください」
と、全員拠点の中に招き入れる事にした。
『お邪魔します!』
クラスメイト達全員がそう言うと、
「あ、今こっちは夕飯食べ終わったところだけど、皆さんは?」
と、春風がそう尋ねてきたので、
『大丈夫。みんな済ませてきた!』
全員、元気良く答えた。
それを聞いて春風は、
「はぁ、わかりました。では、皆さんどうぞ」
と言うと、全員を拠点の中に上がらせた。
すみません。この話の流れを考えてたら、遅くなってしまいました。




