第11話 実験は続く
大変遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
「ハァ、ハァ……」
春風が激しい頭痛に襲われてから暫くすると、ようやくその頭痛が落ち着いてきた。
「は、春風君、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です。ご心配おかけしました」
心配そうにオーディンが話しかけてきたので、春風はニコリと笑ってそう返事をすると、すぐに自身のステータスを確認した。
スキル:風魔術
(お、新しくスキルが追加されている)
風魔術(1つ星):風の力を操る魔術。少ない魔力で発動するものが多く、攻撃、防御、回復を得意とする。
(ん? 『1つ星』って何だ?)
春風は気になってその部分に触れた。
1つ星……最も低いスキルのランク。ボーナスポイントを振り分ける事によって強化する事が出来る。
(なるほど、『アルファベット』じゃなくて、『星』でランク付けされてるってわけか。うん、結構良いかも。でもまさか、スキルの入手であんなに頭が痛くなるなんてなぁ)
そして、春風は深呼吸をして意識を集中すると、次の専用スキルを発動した。
「スキル[魔石生成]、発動」
すると、また頭の中で機械の様な「声」が聞こえた。
「スキル[魔石生成]ノ発動ヲ確認。生成シタイ魔石ノ属性ヲ選択シテクダサイ」
そう言われて、春風は「ウインド」の魔術と同じ風属性を選択した。
「使用スル魔力ノ量ヲ選択シテクダサイ」
(え、なんか面倒だなぁ。確か『10』から始まっていたから、取り敢えず『10』でいいか)
そして、魔力を10使用する事を決めると、
「両手ヲ合ワセテ意識ヲ集中シテクダサイ」
と、「声」に言われたので、春風は両手を合わせて意識を集中し始めた。
(集中。集中。作りたい魔石をイメージしながら集中……)
次の瞬間、春風の中から何かが抜けていく感覚に囚われた。それと同時に、手の中が緑色に光り出した。
やがて光が消えて、手の中で何か小さなものが出来上がった感じがしたので、春風はそっと手を開くと、そこには豆粒サイズの緑色の石があった。
(スゲェ、これが『魔石』ってやつか? 結構小さいけど……)
春風は出来上がった魔石を地面に置くと、他にも作ってみようと再び[魔石生成]を発動した。次は、火属性の魔石だ。
風の魔石を作った時と同じ手順で手に意識を集中すると、今度は手の中が赤く輝き出した。そして手を開くと、風の魔石と同じ豆粒サイズの赤い魔石が出来上がった。
(よおし。じゃあ残りもやっちゃいますか)
そう思って、春風は残り2つの魔石、即ち水属性と土属性の魔石を作り始めた。その結果、出来上がったのは風と火と同じ豆粒サイズの青い魔石と、オレンジ色の魔石だった。
(うん、出来た出来た。さて、最後は……)
魔石が出来たのを確認した春風は、最後のスキルを発動した。
「スキル[魔導具錬成]、発動」
春風が唱えたその瞬間、[魔術作成]と[魔石生成]以上の何かが抜けていく感覚に襲われて、その後、真っ白な地面に青い光を放つ大きな円が描かれた。
(これって、魔法陣的な何かか?)
春風がそう考えていたその時、またしても頭の中で「声」が聞こえた。
「ソノ『サークル』ニ『魔石』ト『材料』ヲ置イテクダサイ」
(『サークル』って、この円の事か? まんまだな)
そう思いながらも、春風は「声」に従って、先程生成した4つの魔石を置いた。
(本当なら1つだけ置くところだと思うけど、別に『1つだけ』とは言われてないからね。で、残りの材料は……当然、これだろ!)
そして魔石の他に「材料」として置いたもの。それは、スマートフォンだった。
実は、[魔導具錬成]のスキルの説明を読んだ時、真っ先に思いついたのが「スマートフォンの魔導具化」だったのだ。
「材料ヲ置キマシタラ、『サークル』ニ魔力ヲ注入シ、『錬成開始』ト唱エテクダサイ」
そして「声」に指示されるままに、春風は「サークル」に自身の魔力を注入し、
「錬成開始」
と、唱えた。
すると、サークルが激しく光り、中に置いた材料が光を纏い、宙を浮いてグルグルと回転し、やがてそれらは1つになった。
「錬成ガ完了シマシタ。『魔導スマートフォン・零号』ガ出来上ガリマシタ」
「声」がそう言った後、春風は出来上がった「それ」を手に取った。
見た目こそ元のスマートフォンと変わりなく、裏面のカラーは元は黒だったが、今は白に青の細いラインが入っている。さらにその中心には、菱形に加工された赤、青、橙、緑の魔石が、まるで十字の星になる様に嵌め込まれていた。
(うん。我ながら良い出来だな)
完成した「魔導スマートフォン・零号」ーー以下「零号」を見てそう思った春風に、オーディンが話しかけてきた。
「専用スキルのチェックは終了かい?」
「はい、とても気に入りました!」
春風が元気良く答えると、オーディンは「ウンウン」と頷いて、
「それじゃあ、最後の仕上げといこうか」
と言った。
「最後の仕上げ?」
春風が首を傾げながら問うと、オーディンは真面目な表情で、
「『初期スキルの追加』さ」
と答えた。
前作で主人公が作った魔導具「魔導スマートフォン・零号」ですが、今作でも登場させました。




