第99話 突然の呼び出し、そして……
春風が地球を救う為に異世界エルードに降り立ってから、既に4ヶ月が過ぎた。
現在、春風は中立都市シャーサルにて、ハンターレギオン「七色の綺羅星」のリーダーとして、仲間と共にハンター活動に勤しんでいる。
慣れない「リーダー」という役割に、最初は苦労が多い日々を送っていたが、リアナ達や先輩ハンター、そして心優しきシャーサルの住人達の助けもあって、
「ハル、『銀2級』への昇格おめでとう!」
『おめでとう!』
「あ、ありがとう、みんな」
そう、まさに今、春風のハンターのランクがさらに上がったのだ。
「七色の綺羅星」結成後、それまで仕事の依頼を1つしかしなかった春風だったが、レギオンのリーダーになって責任感が芽生えたのか、新たに仲間になったアリシア達との生活の為に、少しずつ依頼を受ける数を増やしていった。
しかし、ただ増やしただけじゃない。自分達の実力を考え、魔物の討伐、素材の採取、その他都市内部関係の仕事など、バランス良くこなしながら自身と仲間達を鍛えつつ、彼らとの絆を深めていった。詳しい事については、とりあえずここでは省くとしよう。
「いやぁ、ここまであっという間だったねぇ」
「うん。俺1人じゃあ、ここまで来れなかったよ。そしてリアナも、『金3級』への昇格、おめでとう」
「えへへ、ありがとうハル!」
そう、あれから春風だけじゃなく、リアナもレギオンメンバーとして共に仕事をこなしていくうちに、いつの間にかランクが上がっていたのだ。
「とはいえ、俺はまだ半人前になったばかりだから、これからもみんなの力を、俺に貸してほしい」
そう言って、春風はリアナ達レギオンメンバーに頭を下げると、
『オウッ!』
と、全員元気よく返事をした。
そんな事があってから暫く経ったある日の事。
(何だ? 空気がいやにピリピリしてるぞ?)
いつもの様にリアナ、アデル、ルーシーとギルド総本部に向かうと、都市の雰囲気が何やらいつもと違っていた。
住人の1人に理由を尋ねると、なんでも近いうちに「邪神の眷属」という魔物を討伐する為に、セイクリア王国とウォーリス帝国による合同作戦が行われ、その本部がこのシャーサルに設置されるという。その為に、今朝からその2つの大国の兵隊や騎士団がここに来ているというのだ。
「邪神の、眷属……」
理由を聞き終えて、春風はチラリとリアナを見た。それに気づいたリアナは、
「大丈夫だよ、ハル」
と、苦笑いしながら答えた。
そんなやり取りをした後、ギルド総本部に着くと、入り口付近に数台の馬車が止まっていた。馬車は2種類あって、1つはセイクリア王国の、もう1つはウォーリス帝国の紋章が描かれていた。因みに、国の紋章については予め勉強していたので知っていた。
春風達は気にしない様に総本部に入ろうとすると、入り口で銀色に輝く鎧を纏った数人の男女とすれ違った。チラリと見てみると、鎧にもウォーリス帝国の紋章が描かれていた。
総本部内も何やら重苦しい雰囲気に包まれていた。春風はリアナ達に、
「みんな、気分は悪くなったりしていない?」
と尋ねると、全員が「大丈夫」と答えた。
しかし、それでも心配になった春風は、急いで仕事を受けようと早足で受け付けに向かった。
すると、
「ハル君!」
と、不意に春風を呼ぶ声がしたので、春風は思わず足を止めた。その後、声がした方に向くと、そこにはギルド職員のメイベルがいた。
「あ、メイベルさんおはようございます。何か御用ですか?」
「ええ、フレデリック総本部長が、至急総本部長室に来る様にって」
「総本部長さんが?」
メイベルにそう言われて、春風はすぐに総本部長室に行こうとしたが、
(こんな重苦しい雰囲気の中にリアナ達を置いて行けない!)
と考え、一緒に向かう事にした。
そして、総本部長室の前で、
「ちょっと待ってて」
と言って、部屋の扉をノックした。
「ハルです。ただいま参りました」
「どうぞ」
扉の向こうからしたフレデリックの声にそう言われると、
「失礼します」
と言って、春風は静かに扉を開けた。
『あ』
「え?」
そこにいたのは、ハンターギルド総本部長のフレデリックと、ロングコートをマント代わりに羽織った2人の男女、お姫様を思わせるドレス姿の少女と、彼女に付き従う騎士の男女、そして、6人の少年少女、
「あーっ!」
「幸村ぁ!」
「幸村君!」
「ゆ、幸村君?」
「うっそ、幸村!?」
「……幸村君」
そう、勇者達だった。
言い忘れてましたが、今回の章(話)も、もしかしたら前章以上に長くなるかもしれません。




