間話8 水音と春風と「冒険の師匠」
お待たせしました。3日ぶりの投稿です。
『師匠?』
水音の言葉に、勇者と王族達は一斉に首を傾げた。
暫くすると、勇者の1人が水音に尋ねる。
「えっと、『師匠』って、何を教わっているの?」
水音はハッキリと答える。
「冒険」
『ぼ、冒険!?』
その答えに衝撃を受けたのか、食堂内にいる全員はその場に固まった。
暫くすると、ハッと我に返った小夜子が、水音に詰め寄った。
「ちょっと待て! 冒険!? 冒険の師匠だと!? なんだ、そのふざけた人物は!?」
「あー、確かに性格にちょっと問題がありますが、基本的には良い人です」
「問題があるのか!? 一体なんていう名前だその人は!?」
小夜子のその質問に、水音は再びハッキリと答える。
「間凜依冴です」
「……はざま……りいさ?」
「はい」
「……それって、女性なのか?」
「そうです」
そのやり取りの後、小夜子は再び固まった。
その時、
「は、間凜依冴ぁ!?」
突然、勇者の1人である少女が、驚きの声をあげた。
「うわっ! ど、どうしたんだ天上!? 知っているのか!?」
びっくりした小夜子は、天上と呼んだ少女に向かって尋ねた。
天上と呼ばれた少女は興奮しながら答える。
「し、知らないんですか!? 間凜依冴っていったら、世界的に有名な、女性冒険家じゃないですか! 現在27歳にして幾つもの冒険を成し遂げたってニュースにも出ているんですよ!?」
「そ、そうなのか」
天上の勢いに負けたのか、小夜子はシュンとなってそう返した。
その後、興奮状態の天上は、
「い、いつからなの桜庭君! いつから弟子になったの!?」
と、水音の方を向いて尋ねた。
水音は小夜子と同じ様に勢いに押されながらも答える。
「ぼ、僕は3年前で、春風は6年前に弟子になったんだ。だから、春風が兄弟子って事になるんだけど……」
「ろ、6年前って事は、幸村君は今私達と同い年として……嘘、11歳から!?」
『11歳!?』
天上から発せられたとんでもない事実に、食堂内にいる全員が戦慄した。
「あ、あのー」
口をあんぐりしたまま固まった小夜子達に、水音は恐る恐る声をかけた。
次の瞬間、先にハッとなったのは、ウィルフレッドだった。
「う、うーむ、なるほど、冒険家か。では、水音よ」
「はい」
「其方と幸村春風は、その師匠殿から、どの様な事を教わってきたのだ?」
「はい、護身用の武術と、師匠が冒険の中で身につけた知識、そして、冒険そのものに対する心構えを教わりました」
「ほう、随分と本格的だな」
「ええ、武術と心構えについては祖国日本で学びましたが、知識の方はというと『実際に現地で学んだ方が良い』と言って、学校が休みの時は春風と一緒に国外に連れてってもらってました」
「ほほう、国外とな!」
「はい、特に長期の休みの時は、それこそあちこちに行きました」
「おお! それなら、かなりの良い経験になったのではないか!?」
ウィルフレッドは子供の様に目をキラキラ輝かせてそう尋ねるが、それとは対照的に、水音はどんどん表情を曇らせて、しまいには顔を下に向けた。
「『良い経験』?」
そう言ってプルプルと体を震わせる水音だが、すぐにカッと目を光らせて、
「ええ、確か、確かにに良い経験にはなりましたよ!? でもねぇ、その経験の為に僕は、弟子になってからの3年間で、何度も何度も怖い目に、それも『死ぬぅ! 死ぬぅ!』って悲鳴をあげたくなるくらいの目に遭ったんですからぁ!」
と、言葉に怒気を含ませながら話しだした。
その様子に、小夜子は「お、おい桜庭……」と落ち着かせようとしたが、水音はそれに構わず、
「というか、師匠は言う事もやる事もとんでもなさすぎるんですよ! そして春風もそれに便乗するんですよ! ていうか春風の奴、普段は虫も殺さない様な気の弱そうな態度をしてるんですけど、目的の為なら美少女の様な可愛い顔でどんな恐ろしい事も平気でやってしまう、そんなぶっ飛んだ思考と行動力を持っているんですよぉ!」
そう叫ぶ水音のあまりの迫力に、小夜子達は勿論、王族達も一歩後ろへ下がった。
一方、叫び終えた水音が、疲れているのか肩で息をしていると、「グゥ」とお腹が鳴って、
「あーもう! 叫んだらお腹すいちゃったよ」
と言って、用意されていた夜食をバクバクと口の中に放り込んだ。
「ふぅ、ご馳走様でした」
満腹になって気持ちが落ち着いた水音は、小夜子達に向き直って、
「えっと、すみません。つい興奮してしまいました」
と頭を下げて謝罪した。
その姿を見て、小夜子は若干気まずそうに口を開いた。
「あー、いや、気にしないでくれ桜庭。その、話せる範囲で良いから、お前と幸村の修行時代と言えば良いのかな? その辺について、詳しく教えてくれないか?」
小夜子のその台詞を聞いて、水音は深呼吸すると、
「わかりました。もうここまできたら、全部お話しします」
そう言って、水音は小夜子達に全てを話した。
謝罪
今回の話を書く際、細かい設定が出来てなかった事がわかり、それを決めていたら3日も空きが出来てしまいました。誠に申し訳ありませんでした。




