間話6 勇者、「夢」を見る
今回は、セイクリア王国の勇者達の話を書きました。
それは、春風がセイクリア王国を飛び出してから数日が経った頃のことだった。
その日の夜、召喚された勇者ーークラスメイト達は「夢」を見た。
(1)とある男子生徒1の夢。
ついに迎えた最終決戦、今、勇者達の前にいるのは、
「な、何故だ、お前が何故そこにいるんだ、幸村ぁ!?」
クラスメイトの1人、幸村春風だった。
「それは、俺が世界に仇なす悪魔……いや、『魔王』だからだよ」
「お、お前が、魔王だって!?」
「そうとも、今の俺は、『魔王春風』なのさ! さぁ勇者達よ、武器を捨てて俺のものになれ! そうすれば、世界の半分をくれてやろう!」
「そ、そんな、あの物静かで、真面目で優しくて、後輩達に慕われていた幸村が……いや、今のお前は、もう俺達の知ってる幸村春風じゃない! お前は、俺達が倒す! 行くぞ、みんなぁ!」
『オオーッ!』
「フフフ、この俺に歯向かうか。いいだろう、来い勇者達よ!」
『ウォオオオオオオオッ!』
そして、春風とクラスメイト達の戦いが始まった。
(2)とある男子生徒2の夢。
強大な力を持つ悪魔の前に、勇者達は苦戦を強いられていた。
「く! こ、これが、悪魔の力ってやつなのか。な、なんて強さなんだ」
「ククク、オ前達ノ強サハソノ程度カ?」
「ちくしょう、僕達じゃこいつに勝つことは出来ないのかよ」
圧倒的な強さを前に、誰もが諦めかけたその時、
「みんな、諦めちゃ駄目だ!」
幸村春風が現れた。
「ハッ! ゆ、幸村君、どうしてここに!?」
「こんなこともあろうかと思って、コイツを作ってたのさ!」
そう言って、春風が用意したのは、1機の巨大ロボだった。
「こ、これは!?」
「俺が作った巨大ロボ、名付けて、『キングブレイバー』だ! さぁみんな、コイツに乗って戦うんだ!」
「ようし、いくぞみんな!」
『オオーッ!』
「面白イ、カカッテ来ルガイイ!」
『いっけぇえええええええ!』
そして、最後の戦いが始まった。
(3)とある女子生徒1の夢。
悪の組織の基地を思わせる建物の最深部にて、彼女と仲間達が対峙しているのは、
「な、ゆ、幸村君!?」
「久しぶりだね、みんな」
いかにも悪の組織のボスを思わせる格好をした幸村春風だった。
「どうして、あなたがそこにいるの!?」
春風は答える。
「それは、俺がこの組織『ブラックテンペスト』のボスであり、世界に仇なす『悪魔』だからだよ」
「そ、そんな、あなたが!?」
「俺は、俺達異世界人を巻き込んだこの世界に復讐する為にここまで来た。でも君達と争うつもりはないから、武器を捨てて投降してほしい。そうすれば君達を元の世界に帰すよ」
「あ、あなたはどうするって言うの!?」
「勿論、俺はここに残ってこの世界を征服する。これは、俺の個人的な復讐だから」
「……いいえ、そんな事を聞かされたら、尚更あなたを野放しにするわけにはいかないわ! あなたを止めて、みんなで一緒に帰る!」
勇者の決意を前に、春風は静かに言い放つ。
「なら、君達『勇者』の力をもって、この俺を止めてみせろ」
「行くよ、みんな!」
『オオーッ!』
そして、最後の戦いが始まった。
(4)とある女子生徒2の夢
荒れ果てた大地にて、勇者達は見事、神を滅ぼす「悪魔」を倒したが、その背後にいる「邪神」を前に、なす術もなくやられていった。
「く、な、なんて強さなのよ」
仲間達が全員瀕死の状態の中、たった1人で邪神と対峙するという絶対絶命のピンチ。
最早これまでかと思われたその時、
「諦めないで、みんな」
眩い光と共に大地に降り立ったのは、
「ゆ、幸村!?」
何やら神々しい雰囲気を纏った幸村春風だった。
「ど、どうしてここに!? ていうかアンタ、どうしちゃったの!?」
「いやぁ、地球に帰る方法を探して頑張ってたら、『神様』になっちゃいました」
「なんじゃそりゃあ!」
「といってもつい最近神様になったばかりだから、あの邪神をどうにか出来る力はないんだ。だから……」
そう言って、春風は仲間達を回復しただけじゃなく、全員に強力な装備を与えた。
「こ、これって!?」
「これが今の俺に出来る最大限のことだ。さぁ、これであいつを倒せるよ」
「よーし、行くよみんな!」
『オオーッ!』
そして、春風の加護を受けた勇者達による最後の戦いが始まった。
この他にも、勇者達は良くも悪くも様々な夢を見た。
その内容を聞いて、後に1人の少年が、
「何やってんの夢の中の俺ぇ!?」
と悲鳴をあげる事になるのだが、それはまた別のお話。
今回の話の中に出てきたもの以外にも様々な「夢」を考えていたのですが、それについてはいつか物語の中で書いていく予定です(いつになるかは私にもわかりませんが)。




