第95話 「俺達」の名前
今回は、いつもより短めの文章です。
「俺達の……レギオンの名前?」
「そうそう、名前!」
「……それって、必要なの?」
春風が首を傾げてそう質問すると、
「必要なの! 必要に決まってるでしょ!」
と、リアナはプンスカと怒鳴りながら答えた。
(そ、そうか、必要なのか。でも、困ったぞこれは……)
思わぬ問題に、春風は「うーん」と考え込んだ。
「あー、すみません、誰か良い案ありますか?」
と、アデル達に尋ねたが、誰一人答えないどころか、全員、
「カッコイイのお願いします!」
という意志がこもった眼差しを春風に向けてきた。
(や、やばい。これ、しっかり考えないと! この子達の為にも、カッコイイ名前を考えなくては!)
そう思った春風は、なんとかしなくてはと思って再び考え込んだ。
だが、
(あー駄目だ! 全然良いのが浮かばねぇ!)
と、焦りが募って良い名前が出てこなかった。
(い、いかん。ここは気持ちを落ち着かせなくては……)
そう考えた春風は、一旦考えるの止めて深呼吸した。その後、気持ちが落ち着いたところで暫く考えていると、
(ああ、そうだ。『あの人達』を参考にしよう)
そう考えた時、春風脳裏に浮かんだのは、とある2つのレギオンだった。
現在シャーサルには、2つの巨大レギオンが存在している。
1つは、魔物の討伐を中心に活動する武闘派レギオン「紅蓮の猛牛」。
もう1つは、生産職能の職能保持者を多く抱える「黄金の両手」。
他にもいくつかの小さなレギオンがあるのだが、そのほとんどはこの2つの巨大レギオンの傘下に入っている。
(俺達が白金級ハンターを目指す以上、いずれはこの2つのレギオンと大きく関わる事になる。だったら、その人達に対して堂々と名乗れるような名前にしなきゃいけねぇな)
その後、さらに考え込んだ春風は、ふと腰のポーチに手を伸ばし、中に突っ込んだ。そしてゴソゴソと手を動かしていると、スッとポーチから手を抜いた。その手には、左腕に付けていた銀ガントレットを持っていた。当然、零号を外した状態のだ。
春風はジィッとそのガントレットを見つめていると、あるものが目に入った。それは、装甲の中央に十字の星の形になるように嵌め込まれた4色の宝石だった。
「……星、か」
春風はそうボソリと呟くと、視線をガントレットからリアナ達の方に向けてこう尋ねた。
「あのさ、みんな。俺達のレギオンの名前だけど……」
そして、春風は思いついたのレギオンの名前と、その理由についてリアナ達に語った。
すると、
「良いじゃん、それ!」
「はい、素晴らしい名前だと思います」
と、リアナ、ジゼルの順に賛成の声をあげた。
それに続くように、
「ああ、凄くカッコイイよアニキ」
「うんうん、あたしも気に入っちゃった!」
「……同じく」
「ああ、私も賛成だ」
「私も」
「は、はい。私も、です」
『さーんせーい!』
リアナだけじゃなく、アデル達も賛成のようだった。
全員が喜んでいる姿を見て、ホッと安心した春風は、
「よし! じゃあみんな、これが俺達のレギオンの名前だ!」
と、高々に宣言すると、
『オオーッ!』
全員、拳を突き上げて叫ぶのだった。
そして、時は流れる。
春風君達のレギオンの名前ですが、物語の展開的に次の話で書いた方が面白いんじゃないかと考え、今回の話では書かない事にしました。勿論、ちゃんとカッコイイのを考えてあります。
そして、次回は第6章のエピローグ的な話になります。




