1.全王様の帰還!
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「そろそろ来られる頃か……」
玄関前に誰が見てもそわそわして立っている父様を見て、後ろで控えている分家の者や使用人達もさぞ驚天動地だろう。笑みを浮かべた事があるのか?と言われ続けた厳格な父様がまるで子供の様にはしゃいでいるのを見ると娘としては複雑な気持ちである
「父様……落ち着いて下さい。分家や使用人に示しがつきません」
「う、うむ……」
こほん、と咳払いをして後方に控える分家の者達へと振り替えると何時もの鉄面皮に戻る。うん。やはり父様はこうでないといけない。
「朱。そして皆の者。これから来る方には一切失礼が無いように。これは炎城家当主としての命令である。破ったものは破門とするのでそのつもりでおれ!」
そう言いきった父様の手に蒼い炎が現れる――『蒼炎』――炎城家初代を除いてそれまで顕現しなかった炎の精霊王と契約を結び、炎城家最強と呼ばれる炎を出して発言すると言うことはこの炎城家の最大級の命令である
「「「はっ!」」」
私を含め分家、使用人共にその場に跪く。異を唱える者など誰もいない。もし異を唱える者がいるのであればそれは逃れられない『死』を意味する。何故ならばこの場にいる全員で父様に立ち向かった所で数秒間で決着が着くだろう。
父様以外の全員の死亡と言う決着で――それほどまでにこの炎城源之助と言う存在は規格外の炎を宿している
ピキ…
「むっ!? 全員整列!」
その言葉に一斉に立ちあがり不動の姿勢を取る私達が見た物は
ピキ…ピキ……
「く、空間が……」
「な、なんだあれは……」
「ひ、ヒビだと? なんだ…なんなんだあれは!?」
私達の上空にいきなりヒビが入る――その異常事態に狼狽える使用人を他所に分家の者はそれぞれ手に赤い炎を顕現させて警戒体制に移る
「朱様!」
「瑠璃……構わないわ。退きなさい」
瑠璃が私を庇うように前に出て同じく炎を顕現させるが私は構わず前に出る――そして私も手に黄金色の炎を顕現させる。
これが本家と分家の明確な差――本家の炎は黄金色の炎を顕現する。その炎は分家の炎など容易く葬り去ってしまう程であるが、父様の『蒼炎』はその黄金色の炎を簡単に打ち砕く……え?
「と、父様……何を……なさってるのですか?」
私が見たあまりにも有り得ない光景に顕現させた炎が消えていく……他の者も同じように呆然と佇む……
あの炎城家最強と言われる私の父様が……まさか……ヒビが入った空間に対して跪いている何て……
それはまるで主君を迎える家臣のような――
ピキ……ピキ……
パリンっ!!
「っ!?」
――
空間が完全に割れてそこから人が飛び出してそしてゆっくりと下降してくる
「あれは……天使か?」
誰かが呟いたその言葉に正しくその通りだと素直に受け止めてしまう自分がいた。綺麗な銀の髪――少年にも少女にも見える中性的な顔――これを天使と言わず何と表現すれば良いのだろう。
誰しもが見惚れる中、地面に降り立ったその人は
「ただいま~♪ あ、源ちゃん! 久しぶり! お土産あるよん♪」
と未だに跪く父様に旧友の様に挨拶をした