プロローグ2
読んでくれてありがとうございます。
やっと出てきた主人公
コンコン、コンコン……
鋼鉄製で出来ている深く閉ざされた扉を何度かノックをしてもまた応答がない。まあ何時もの事ですが……あの方は一度夢中になると寝食を忘れて研究してしまうので最初の頃は心配しましたが慣れと言うものは怖いものでもう実験室に閉じ籠って六日目の我が主--白夜様の指定した日にこうしてお呼びに伺ったのだが……
「致し方ありません。指定時間も差し迫って降りますし、何時ものように力づくで行かさせて頂きます」
そう呟いた私はメイド服のスカートを少したくしあげ、太腿に備え付けてあるナイフを掴む。奴隷として買われてから幾度となく鍛えられ、ドラゴンですら倒せるようになった時に白夜様から頂いた私の宝物であるナイフは伝説の金属オリハルコンで出来ているので例えこの様な鋼鉄で出来た扉であろうがーー
キンッ!!……ズドォーーン……
軽い一振りで鋼鉄の扉を斬ってしまうと毎回この扉を作ってくれる職人さんが可哀想でなりません。前回は涙目で回収していった職人さん……今回は修理を断られるのでは無いでしょうか?
そんな事を思いながら崩れ落ちた扉の先に敬愛する主を見つける。
長い銀髪ーー透き通る様な黄金色の瞳ーーそこには異なる金属をそれぞれ持って眺めている絶世の美青年がいた。あー…六日ぶりの主様の姿を見ると鼻血がでそう。マジイケメン。
「おはようございます。白夜様……何時もの事とはいえ、また扉を壊してしまいました……そろそろこの実験室のドアに鍵を付けなくても宜しいのでは無いでしょうかと提案いたします」
私は心の声を顔におくびにも出さず冷徹な仮面を被り提案する。私は奴隷兼メイドであり主の生活をサポートするために此処にいるのだから
「おや? マリーが来たと言う娘とはもう六日経ったのかい? 時間が過ぎるのは早いねぇ」
と爽やかスマイルと相変わらずの美しい声ーーもうこのまま抱かれたい。いや、抱いてやろうかこんちくしょー!
「今回の研究は如何でしたのでしょうか?」
ちらりと白夜様が持っておられる金属を視線に映す……伝説の金属オリハルコンとヒヒイロカネの融合実験。鍛冶の最高峰とも呼べるエルダードワーフのドーマ様でも出来なかった融合。もし出来ればそれは神の所業ーー
「あ、うん。出来たよ。ほら」
と、アイテムボックスから何処までも深い漆黒の輝きを持つ金属を取り出す主ーーあ、神いたわ。
もう今すぐその美しい髪の匂いをクンカクンカしたい
「おめでとうございます。 偉業達成感ですね。 早速鍛冶ギルドに報告しておきます」
神の偉業がまたこれで一つ増えた。またこれで信者が増える事だろう……ライバルもだが……
「ありがとう。 んじゃ、そろそろ帰ろうかな~…ん~…身体が硬い」
と軽くストレッチをする主を心のカメラで激写する。今日のオカズは決まった。もうこれで私の夜も六日間戦えそうです……ん?
「白夜様……今、何と仰られました?」
何かとてつもなく恐ろしい言葉を聞いた気がする。いや、まて、マジで
「ん? そろそろ向こうの世界に帰ろうかってね。 向こうに手紙も出したし。こっちで学ぶ事ももう無いしね」
その言葉に私の身体に雷が落ちたような衝撃が走った。いや、待って本気で!
「あ、あの……エリーゼ様や茜様、ヨウコ様にその事は伝えてますか?」
私と同レベルのそれぞれ白夜様の弟子達ーー白夜様を除けばそれぞれ世界最強の部類に入る同士達の顔を思い浮かべる
「あ、そう言えば伝えてなかった。 マリー、ごめんだけど伝えておいてくれないか?」
「私に世界滅亡の言葉を起動しろと? まだ死にたく無いのでご自身で伝えてください」
と言うか何も聞かなければこのままいなくなっていたのかこの人は……お願いだからせめて手紙だけでも良いから書いてくだしゃい。流石にあの3人相手だと確実に私も死にます。只でさえ一緒に住んでいることで事ある毎に殺そうとしてくる面子が理性を無くしたら本気でこの世界が崩壊します
「んじゃ、手紙玉でも送っておくよ。今の俺なら異世界間でも簡単に届けられるだろうし」
良し。取り敢えず世界滅亡回避。
「それよりもどうやって向こうの世界に戻られるのですか? と言うかどうやってこの世界に来たのでしょう……今まで疑問に思っていましたが聞く機会がなかったので……此処とは違う世界と言うことになると次元を跳躍する訳ですよね? そんな簡単に出来るのですか?」
白夜様がこの世界の住人では無いことは聞いていたがどうやって来たかは怖くて聞けていなかった。だってこの人本当にとんでもない事を平気でやっちゃう人だもの
「ん? こうやって」
白夜様が裏拳を背後の空間に叩き込むと
ピキ…ピキ……パリンっ!
何も無い筈の空間に亀裂が入った
あ、やだ、もう本当にこの人自重しない……
このまま押し倒したい
主人公より目立ってしまった冥土…暫く出てこなくなるのではっちゃけた