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81.囮

波乱のパティーで言葉が分からないから状況が分からず

タチバナさんに連れて行かれた控室には軽食等が用意されており、こうなることが分かっていた様だ。

暫くすると倉本さんとリアナさんが控室に来て、代わりにタチバナさんが退室して行った。いつも通りの倉本さんに少し安心し、険しい表情のリアナさんに気まずさを感じていたら倉本さんがリアナさんに何か言った。すると


「エミ ゴメン。ワタシ オコッテナイ」

「へ?」

「咲様。リアナはレティシャ様に怒っていているんですよ」

「あの…状況説明はいつしてくれるんですか?」


するとやっと表情を柔らかくしたリアナさんはジークさん来るまで待ってと言う。

そしてまだ何も食べていない私に食事を勧めてくれる。意味不明だけどお腹は空くので軽くむつまんだ。

リアナさんはカタコトの日本語で話しかけてくれ、時折倉本さんが通訳してくれる。あれだけ視線が怖かったリアナだけど、話すと可愛らしいお嬢さんだ。

一頻り話し打ち解けた所で、急に謝罪をするリアナさん。勿論倉本さんが通訳してくれる。


『私はエミを初め良く思っていなかった。ジークヴァルトの事は兄の様に慕っていて、想い人がいるのも知っていたの。だからジークヴァルトに近寄る女狐共を寄せ付けない様にして来たわ。それが1年前に想い人に会え幸せになると安心したの。しかし貴女はジークヴァルトを拒んだと聞き腹が立ったわ。あんなに有能で身分容姿に非の打ち所がないジークヴァルトを拒むなんて!って』


ジークさんの求婚を断った私に腹を立てていたんだ。だからあの鋭い視線になったんだ。

もしかしてブラコン?


『おじ様とおば様がジークヴァルトが折れないから(エミの事)仕方なく認めたんだと思っていたの。でも違った。お2人共エミを認めていると会ってみて分かったわ。

それに昨日から見ているけど、エミは謙虚で慎ましいく優しい女性だと知り安心したの。これでやっとジークヴァルトは幸せになれるってね』

「はぁ…」

『今日はジークヴァルトの役に立てて恩は返せたし私は大満足だわ』

「?」


どうやらリアナさんは既婚者で旦那様との結婚をご両親に反対され、ジークさんとお父様が手助けしリアムさんのご両親を説得したそうだ。

とりあえずリアナさんの方は誤解が解け安心する。それにしてもランディさんといいリアナさんといい、日本語を誰から習ったんだろう?

微妙なイントネーションで笑けてくる。少し和んでやっと食事が美味しいと思えるようになって来た。そして暫くするとやっとジークさんが控室に来た。

入室するなり飛びついて来て思わず変な声が出た。そして皆んな見てるのに至る所に口付けて慌ててる。すると兄役のタチバナさんが引き離してくれ、やっとジークさんから解放される。

やっと落ち着いたジークさんに腰をホールドされ事情説明が始まる。


「あ…私囮だったの?」

「すまない事後報告になって…しかし咲は腹芸が出来ないから話せなかったん。咲の周りをうろつき害が及びそうだったから、ここらで完全に潰しておく事にしたんだ。ウチのアジア圏の顧客にも手を出し始めていたしね」

「…」


ジークさんに話を聞くまで全く知らなかった。怖いセレブの世界は…

簡単に説明するならレティシャ嬢がまた私をはめようとしていたそうだ。前回田沢さんを使ってハニートラップを仕掛けて、ジークさんに仕返しされたレティシャ嬢。

ジークさんはレティシャ嬢の実家に圧力をかけ、アジアで今勢いのあるタウロン家の嫡男ヤン氏との縁組を進めた。プライドが高く何より容姿重視のレティシャ嬢は、ひと回り上で失礼だから非イケメンのヤン氏を嫌がったが、親が強引に決めたようだ。レティシャ嬢の親はジークさんを敵にまわしたくなく、タウロン家はジークさんとの繋がりができると快諾し両家の利害が一致。ヤン氏はバツ2で前妻はアジアで有名な女優ともう1人は北米の有名デザイナー。彼は無類の美人好きな上に若い子好きでレティシャ嬢との縁組を喜んだ。


「ヤン氏の好みにど真中ストライクのレティシャはヤンを懐柔し、彼の部下を使って咲の周りを探り出していたんだ。それと並行してタウロン家がウチのアジア圏の顧客にフェイクを流し、顧客の取り込みを初めている事を察知してね。面倒だから両方潰す事にしたんだよ」

「…」


そう言い笑うジークさんは怖い。私の知らない世界の出来事に、小説を読んでいる様で目の前のジークさんが知らない人の様に感じて腰が引ける。すると再度私の腰を引き寄せ触れるだけのキスをしてくる彼。そして話を進めていく。


「今回は友人の竜二君と田沢君が協力してくれ、そのお陰で彼女レティシャを追い込めれたよ」

「はぁ?2人も何かしたんですか?」

「いや、流石に彼らの影響力は日本の域を出ないから彼女レティシャに嘘の情報を流し、それに沿って竜二君が動いてくれた形だよ」

「私何も知らなくて…」

「当たり前だよ。そんな事知ったら咲は嫌だろう?咲にはイヤラしい奴等の存在すら知って欲しくないからね」


レティシャ嬢は身辺を調べジークさんと付き合いだした私のスキャンダルをさぐり、崎山さんの存在を知ると接触を試みていたそうだ。


「竜二君は彼女レティシャの策に乗るフリをしてもらい咲と親密であると話してもらった。すると彼女レティシャは今度は竜二君に咲を落とす様に依頼して来たそうだ。手段を選ばす媚薬まで寄越して来た。本当に頭が足りない女だ」

「そんな素振り崎山さん無かったですよ」

「彼も大手企業のトップだ。咲にはいい人にうつっているだろうけど、彼も中々腹黒く策士だよ」

「…」


そして田沢さんが崎山さんと私がハグしている写真や2人で車に乗る写真を加工し、彼女レティシャに渡し崎山さんと体の関係があるように見せかけ彼女レティシャに嘘の弱みを握らせた訳だ。


彼女レティシャはヤン氏の父親のジャン氏にこの情報を渡し、アジア圏での顧客取得出来ると言い、対価としてヤン氏との婚約破棄を申し出たそうだ」

「私は知らないけどそのタウロン家ってアジア圏では大財閥なんでしょ?そんな嘘の情報簡単に信じるですか?それに私達婚姻関係でも無いしスキャンダルとしては弱いと思うけど⁈」


そう言うとジークさんはアジア圏(特に日本)は不貞に対して厳しく、婚姻関係に無くとも充分スキャンダルになると言う。


「そこは父が人脈を使ったらいくらでも操作できるさ。タウロン氏とウチとでは信頼度が違うからね」

「ジークさん怖い…」


私がそう言うと焦りだし


「父も私も善良な人にそんな事しないよ。悪意を持つ者にはそれ相応の対処はするさ。今回はそれだからね。そんなマフィアを見るような目は止めて咲」


そう言い抱きしめてくるジークさん。するとタチバナさんが


「咲様。経営者の殆どは真面目に正しく経営し社員守っております。しかし悲しいかな己の欲の為に正攻法では無く手を汚す者もおり、その者に正攻法では対処出来ない事も多く、この様な方法を取らざるおえません。身内と社員を護るの為でございます」

「ごめんなさい。頭では分かっているつもりだけど…知らない世界だから怖くて…」


通話を聞いたリアナさんはジークさんに何か必死に言っていて、それを聞いたジークさんは


「リアナの言う通りだ。心配かけたく無くて内緒にして来たが、知らない方が怖いし不安だ。パートナーとして生涯を共にするんだ。これからは全て話すと誓うよ。ただ緊急時や危険が伴う時は事後報告になるのは許して欲しい」

「うん。出来るだけ話して欲しい。知らないと仲間はずれみたいで嫌だし不安だわ」


やっと体から力が抜けたらジークさんのお顔が近付き思わず仰け反る。するとタチバナさんが注意してくれ、人前でのキスは回避できた。


私が落ち着いた所で会場に戻り最後に大切なお客様にご挨拶して帰る事になった。会場に戻るとお父様が駆け寄り抱きしめて来て、片言の日本語で謝罪された。本当に大切にしてもらっているのが分かり嬉しい。そしてお父様にエスコートされ、テレビで見聞きした凄い著名人と挨拶をする事になる。世界的な俳優さんに挨拶する時は流石に緊張したわ。

会話は全て英語なので何を話しているか分からないけど、私をジークさんのパートナーだと言い娘になると言っているようだ。すると挨拶した相手は途端に私に愛想を振りまいてくる。やっぱりセレブって怖いと思った。

挨拶が一頻り終わり戻る事になるが、気付くとレティシャ嬢とヤン氏の姿は無かった。

戻りの車でジークさんが彼女レティシャとヤン氏はもう会う事二度と無いと言い、またエグイ制裁をしていないといいなぁ…と思いながら滞在するホテルに戻った。


結果から言うとレティシャ嬢はヤン氏と婚約破棄し父親の部下と結婚させられ、夫と身内監視の元行動を制限され社交の場から姿を消したそうだ。

そしてタウロン家はアジア圏(日本)での事業が失敗し、大幅に事業規模を縮小し自国で再出発。父親が隠居しヤン氏がCEOに就任している。


約束通り顛末を教えてくれたけど、やはり庶民の私には怖く現実味のない話しで、少しするとまるッと忘れていった。


ホテルの部屋に戻り楽な格好に着替え付き添いの皆さんも各自部屋に戻って行きジークさんとやっと落ち着く。そしてお茶を飲み私に向き直った彼は


「咲を護りたかったのに結局巻き込んでしまった事を謝りたい」

「私は今まで平凡に生きて来たんです。これからも平穏に暮らしいた…でも…」

「でも?」


恐る恐る聞いてくるジークさん。何故か叔父さんの手紙の言葉が頭に浮かび、今の素直な気持ち彼に伝える。


「貴方と残りの人生を共にするって決めたんです。だから貴方の世界も出来るだけ理解し歩み寄りたい。だからなんでも話して欲しいんです」

「咲…」

「これからはずっと一緒ですよ」

「咲が嫌だと言っても貴女を愛し離さない!」


この後足腰が立たなくなるまで愛されて、彼を煽らない方がいいとこの日学んだ。

翌日ヘロヘロで帰路に着き流石に疲れているので一人で休むと言い、自宅に戻り翌日の仕事の為にゆっくり休む。

週明けは少しキツかったけど、いつも通りいつもの時間に出社し変わらぬ日常を過ごす。

紆余曲折あったけど、私の”第2の青春アオハル”は幸せいっぱいである。

溺愛が加速するジークに相変わらず定期的にハグをしに来る崎山さん。そして暇だとエステを餌に誘ってくる田沢さん達と楽しい日々を過ごし、あっという間に2年が経った。そして今日は自宅の管理を任している黒川さんの所へジークと訪れている。


「先方があの家を大層気に入り売って欲しいと打診がありました。売る気はありますか?」

「ごめんなさい…あの家は夫が残した大切な家なので、娘に残したいんです」

「かなりの好条件ですよ!」


すると隣で聞いていたジークが


「あの家は何があっても売らない。もし何かあるなら私が護ります」


ジークの答えに黒川さんは焦り先方に断ってくれる事になった。そして今の賃貸の部屋の契約に付いて継続するか聞いてくる。継続するつもりでいたら隣に座るジークの表情が曇る。


「?」

「黒川さん更新はいつまでに返事すればいいのですか?」

「次の更新の2ヶ月前に頂けると有難いですが、1ヶ月前までで大丈夫です」

「分かりました。ではまた後日」


こうしてジークの部屋に戻ると玄関横の壁を手で押さえ私の顔を覗き込んで


「こっちに引っ越してくる気は有りませんか?」

「同棲するって事?」

「正確には同じフロアですよ」

「はぁ?だって最上階はジークの部屋しかないじゃ無い」

「だからここに」


そう言い壁を叩いた。全く意味が分からない私の手を取り部屋に入るジーク。そしてある書類を見せてくれた。それは部屋の間取り図で、ジークの部屋の横にもう一室書かれている。


「ジーク説明して」

「このマンションを建築する際に、咲を迎えれる様にしたと言ったと思います。それがこれでこの部屋の壁の向こうにもう一室作れるように準備してあるです」

「!」


どうやらジークは私が距離感を大切にする事を分かっていて、もし同居が無理なら同じフロアで生活を共にしたいと思い、ジークの部屋の横にもう一室作れる様にしてあった。そして私が彼を受け入れたら今の部屋と同じ間取りを、隣の空間に作る予定らしい。

壮大な計画に空いた口が塞がらない。もしあのまま別れていたらどうするつもりだったのだろう。


「そして咲が何度も何か聞いてきた、玄関横の扉は咲部屋との内ドアで、玄関を出なくても行き来出来る様に作っておいたんです」

「はぁ?それじゃあ同居と同じじゃん!」

「いえ、あの扉は咲の部屋側で施錠できる様にし、咲がOKしないと私は咲の部屋に行けない仕組みにし、プライベートはちゃんと守ります」


そんな事別れていた時から考えていたんだ。呆れ半分感心半分で複雑な気持ちになる。

そして私の前に跪き手を取り真剣な顔で


「いつも咲を近くで感じていたい。私の傍にいてくれませんか?」

「だから黒川さんに今の部屋の更新時期を聞いたの?」

「はい。考えるいいタイミングだと思ったので…」


経営者らしく先を見据えているジークに感心し、今ならお隣でもいいかもと思えてきた。そしてジークの手を取り


「色々考えてくれてありがとう。でもお金かかるから…」

「私からしたら大した額では無い。咲の傍に居れるなら」


彼はいつも私の事を考えて優先してくれた。偶に距離感間違えて怒った事もあるけどね。そんな彼を私は愛している…と思う。だから…


「じゃ!今の契約を最後にしますね。でもちゃんと家賃はお支払いしますから」

「咲!」


そして私の気が変わらない内にジークは黒川さんに契約終了と、タチバナさんに私の部屋の工事に取り掛かる様に連絡をした。こうしてまた彼との距離が近付いていく。


そして半年後にジークの隣に部屋が出来て引っ越す事になった。またいつものメンバーが手伝いに来てくれ、賑やかに夕食を食べている。少し変わった事はそのメンバーに崎山さんと田沢さんの彼女が加わり、何と凛の彼氏も手伝いに来ていた。皆んなで食卓を囲み幸せな皆んなの顔を見ていてまた涙が出てくる。

そしてそんな私を優しく抱きしめて口付け微笑むジーク。幼い頃は苦労もいっぱいしたが今は幸せ。

そして引越しが終わり皆さんにお礼を言い見送り、私は内ドアからジークの元へ行き、今晩はそのままジークと同衾し眠る。すると夢を見て…


とても綺麗な女性が立っている。あれはエミリア?


『エミ!ありがとう。貴女のお陰でアルフレッドと一緒になれたわ。次世でもずっと一緒。とても幸せ…』

『よかった。次は生まれた時からアルフレッドと一緒にいるんだよ』

『勿論よ!二度と離れたりしないわ』


多分これは夢だけどエミリアの魂と話しているんだと思った。二人は大丈夫だと思うと安心し体の力が抜けていく感じがした。


『これからは自分の事だけ考えていいんだ…』


そう思うと無性にジークと口付けたくなり目が覚めた。するとジークも起きてきて優しい若葉色の瞳が私を見ていた。そして愛の沢山詰まった口付けをくれた。


こうしてアラフィフのおばちゃんは運命の半身にめぐり逢え、愛されて幸せに暮らしhappy endとなりました。



〜 おしまい 〜

お読みいただき、ありがとうございます。

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Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。


最後に…


終わります詐欺を続けて、やっと本当に終わりました。本当はもっと主人公を取り巻くキャラとのエピソードも入れたかったのですが、間延びしそうで終わる事にしました。この手のライトノベルの主人公はティーンが多いのでしょうが、おばちゃんやおじさんだって恋するんですよ。それにおばちゃんやおじさんもラノベ読みます。そんな少数派マイノリティに向けて書いてみました。

おじおばも恋して楽しく過ごして欲しい!アラフォー&アラフィフの現実は厳しいからね〜。


他にも趣味の域を出ませんが書いています。よければ覗いてみて下さい。


最後までありがとうございました!


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[良い点] 47のおっさんですが一気に拝読させていただきました、面白かったです。私は男性ですがわかるわかるぞーと思いながら楽しく読ませていただきました。 [気になる点] 誤字が多すぎますでしょうか …
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