78.バレた!
やっと一つになった二人の未来は…
久しぶりのひと肌に心身ともに癒され改めて幸せを感じていたら…
『ナニカアタッテイル?…!』
昨晩あんなに運動したのにもう絶好調の彼。危険を感じ腕から逃れようとしたらホールドされ口付けされ再戦にもって行かれそうになる。身を捩り抵抗するが勝てる訳も無い、首筋に温かく柔らかい感触が!
「ダメ!この後エステに行くのに痕付けちゃ嫌です」
「(エステの)後は竜二君と食事ですよね。虫除けを付けておかないと竜二君は危険ですから」
「いやいや!施術してくれるスタッフさんに見られるでしょ!いい加減怒りますよ」
寝起き裸のおじさんとおばさんが巨大ベッドで何してるんだか…
“ピロ~ン”
メッセージが入り彼を突き飛ばしスマホを手にする。メッセージは田沢さんで
『咲さんの前の予約が変更になり急遽空いたから早くおいで』
との連絡だった。すっかり痣が消えた事に気を取られてエステが頭から抜け落ちていた。時計を見るともう8時。予約は10時からだから身支度を始めないと間に合わない。
それにこのシーツ…洗濯したい!このベッドを他の人に見せたくない。
「ジークさん。もうそろそろ動かないと間に合いません。ほらお風呂先に行って下さい。私はシーツを洗うので!」
「咲がそんな事しなくてもハウスキーピングに任せれば…」
「嫌!こんな事後のシーツを他人に見せたくありません。自分で洗う!さぁ早くどいて!」
そう言いベッドサイドに置いてあったガウンを羽織りシーツをはがし洗面所へ。
「ここもか…」
洗濯機の回りにはウチと同じ洗剤、柔軟剤と漂白剤がランドリーの棚に鎮座している。どこまでリサーチして用意したの⁈溜息を吐いて洗剤等を洗濯機にセットしてキッチンに向かう。キッチンには先に彼がコーヒーをセットしてくれていていい香りが漂っている。勿論コーヒー豆もウチと同じだ。ここまでくると笑うしかない。
冷蔵庫を開けると食材が少ないが用意してあり、卵とベーコンそしてカットサラダを使わせてもらう。冷凍庫には冷凍パンがありキッチンを借りて朝食を作る。
作り終えた頃の彼がお風呂から出て来た。バトンタッチして配膳を頼み今度は私がシャワーを浴びる。
これから施術を受けるから浴室の鏡で痕が付いてないかチェックする。
「あ…一応ここなら施術着で隠れる?」
あれだけ付けないでって言ったのにやっぱり数カ所付けている。溜息を吐いて時間が無いから上がり着替えてキッチンへ。
ダイニングに朝食が並べられ美味しい匂いがしている。そして嬉しそうに椅子に座り待っている彼
「咲の料理が食べれるなんて最高に幸せだ」
「焼いただけだよ。大袈裟な」
バカップル全開で朝から甘い雰囲気の食卓。TVもつけず食べながら他愛もない話をして楽しい朝食となった。食事が終わると洗濯が終わっていて皺を伸ばし物干し竿に干す。大きいベッドだけにシーツも大きく腕の短い私には辛く手伝ってもらい干し終えた。
そして時計を見ると9時過ぎ!急いで身支度をして一旦家に戻る。流石にジークさん家に外着までは無いからね。
ここでお別れしよとしたが拒まれやっぱり家までついてくる。またリビングで待ってもらい寝室で着替え慌ただしく出かける。マンションのエントランスにはタチバナさんがいて外にはいつもの黒のワゴンが停まっている。いつの間にタチバナさんに連絡したのだろう。
「おはようございます咲様」
「おはようございます。えっと…よろしくお願いします?」
何故かタチバナさんに握手されお礼を言われた。タチバナさんの微笑みに”いたした”のがバレているのが分かり、顔が熱くなり彼を一睨みするとウィンクされ諦めた。
バスで向かうつもりがジークさんに送ってもらい(正確にはタチバナさん)田沢さんのエステ店へ。
一緒に入店すると言うジークさんを何度も断り、最後は怒りやっと店の前で降ろしてもらった。
入店すると田沢さんはおらず店長がお迎えしてくれ早速個室へ案内されるが!
「梶井様!お疲れだとお聞きしておりますが、お肌も髪も疲れが全く見えませんが…」
「へ?いえ、先週は残業続きで休出もしてるんですよ」
「そうなんですか?ではやはりお疲れなのですね。早速始めましょう」
「よろしくお願いします」
早速着替えて施術を受ける。担当のエステティシャンはいつも通り始め、例の痕は上手く隠れている様だ。安心して身を任せリラックスする。気がつくと寝ていた様だ。
起こされ最後はヘアメイクを施して貰う。今日の服装は黒ワイドパンツと丈の短めのクリーム色のコットンニットだ。髪をアップにしてくれメイクは淡いオレンジで柔らかい雰囲気に仕上がった。全て終わりお礼を言いロビーに行くと田沢さんと崎山さんが雑談している。ロビーに来ている女性客は2人に釘付けだ。
「「咲さん!」」
2人して駆け寄って来る。他の女性に注目され居心地悪い。2人はまじまじと見つめて褒めまくり、すっかり2人は太鼓持ちになっている。そして徐に私の手をとった崎山さんが眉間に皺を寄せて大きな溜息を吐いて
「はぁ…覚悟はしていましたが…ショックです」
そう言い左の手の甲に口付けを落とす。途端に頬が熱くなる私。その顔を見て更に深い溜息。
『やっぱりバレてる…』
そして崎山さんは抱きしめて耳元に寄り艶っぽい声で囁く。
「とうとう彼と一つになったんですね…貴女からとてもいい匂いがする。叶うなら私が抱きたかった」
「!」
意味の分かっていない田沢さんがやきもちを妬き崎山さんから解放してくれる。本当にこういう時の田沢さんは便利!
そして田沢さんにハグされ再度エステのモニターのお礼を言われる。
新しい店舗が大盛況でホクホク顔の田沢さんを嬉しく思い、崎山さんに急かされランチのお店に向かう事になった。
ランチは日本料理店でもちろん個室。2人きりで楽しく食事をする。食事が終わりデザートを食べていると
「これで私も前を向ける」
「?」
何故か吹っ切れた様な顔をした崎山さんは驚く事を話し出した。
そう田沢さんから女性を紹介されているらしく、付き合うか悩んでいたそうだ。
お相手は私の一つ上のバツイチ子持ちで凄い美人らしい。相手の女性も再婚や真剣交際は望んでおらず、大人の付き合いを願っているそうだ。
「何度がお会いしたが可愛らしく、さっぱりした性格で素敵な女性です。容姿も咲さんの様に小柄で守ってあげたくなるタイプです。
でも中々貴女の事が諦めきれずにいた。しかし身も心もジークヴァルト氏のものになってしまったのなら、私もそろそろ前を向かないといけませんね。いつまでもうじうじしていたら佐那に叱られますから」
「崎山さん…」
知らない間に彼女を紹介してもらっていたんだ。でも自分でびっくりする位嫉妬もやちもちも無かった。それより崎山さんには幸せになって欲しいと思う方が強い。
凄く嬉しい気持ちになり顔が綻ぶと
「彼女が出来ても今までみたいに会って欲しいし、ハグをいただきたい。やはりどんな美人もスタイルのいい女性も巫女の安らぎには勝てないんです。私の心をこれからも癒して欲しい」
「はい。崎山さんの幸せを願ってますし、烏滸がましいですが崎山さんは私の親友ですから」
そう言うと凄く素敵な笑顔を向けてくれる。本当に崎山さんはいい人!ジークさんがいなければ確実に好きになっている。
いい報告が聞けていい感じです終わろうとしていたら
「でも…この先に貴女とジークヴァルト氏が別つ時がきたら、いつでも私は貴女を受け入れますよ。その時たとえ彼女がいても」
「あはは…冗談ですよね?」
「いえ本気です」
「…」
欲が強い崎山さんは己の欲を隠さないから、偶に困った雰囲気になる。ジークさんもそうだが完璧な男性なんていないんだと実感した。
そして崎山さんは帰りの車で、ジークさんとの初夜を色々聞いてきて恥ずかしさで車内が一気に熱くなる。
「ジークヴァルト氏が物足りない時はいつでも呼んで下さい」
「崎山さん。エロオヤジは好きくないですよ!」
そう言うと”失礼”といつもの崎山さんに戻った。やっぱりそっちの方はお強い様だ。
やっとマンションの前に車が着くとドア開けてくれ、長いハグをしてくる崎山さん。そして
「これが最後です。口付けを欲しい」
「人がいるこんなとこでむ!」
抱きしめられたまま触れるだけのキスをされ、周りが騒ついている。
状況が分からず口を開けて固まる私。そしていい笑顔で再度ハグをして颯爽と車で帰って行く崎山さん。ふと我に帰り恥ずかしくてマンションに逃げ込んで、何とか部屋に入り玄関先で座り込んだ。
「折角の3連休だったのに反対に疲れた気がする…」
そう呟き何もする気にならず寝室に直行しベッドにダイブした。マッサージを受けたがやはり少し体が痛い。特に腰回り…
少し眠くなってきたらメッセージが入る。
半分しか開いていない目で見ると
『もう帰られてますか?』
ジークさんからだ。既読スルーするか悩み一応
『少し前に帰りました。もう今日は疲れたので早めに休みます。お休みなさい』
また会いたいとか言いそうだから先手を打った。お休み宣言したら流石に来ないよね…
“ピンポ〜ン”
インターホンが鳴り響く。猛烈に嫌な予感。
そうじゃないかもしれないから念のため…
「!やっぱりか…」
モニターには彼が迷子犬状態で映っている。
頭を抱えて悩む。モニターと睨めっこして悩み…
“ピロ〜ン”
今度はメッセージが
『お疲れのところすみません。私に30分だけ時間を下さい』
溜息を吐き30分だけと約束させてオートロックを解除した。数分後やって来た彼は困った顔して上がって来た。そして抱きしめてくる。そして
「ランディからウチの親が来日する話は聞いてますよね⁈」
「はい。ご挨拶する事になるんでしょ?」
「はい。そうなんですが…」
何故か様子のおかしい彼は意を決したように話し出し…
「!」
「申し訳ない!出来るたげ早く帰れるようにするので、付き合ってください!」
「マジか…」
彼の立場なら仕方ないのは分かっているけど、平凡に地味に生きて来た私には場違いで縁のない世界だど思っていたし、彼自身あまり仕事のこと触れないからすっかり忘れていた。
『ジークさんは御曹司でスーパーセレブでした』
「大したパーティーでは無いので気楽に参加して下さい。勿論私がエスコートし全てのものから貴女を護りますから!」
「護られる状況なんだ…あはは…は…」
ジークさんのご両親の来日目的は観光ではない。日本支社の創立記念とアジア圏の業務拡大の為に、アジア圏の政財界の方々を招待しパーティーが開かれる。代表を退いたがジークさんは役員だし大株主である。不参加はあり得ない。
「ご両親とのご挨拶なら別で出来るでしょ!関係ない私が参加する意味がわからない」
「いや!ちゃんと意味はあって…」
約束の30分を過ぎたがまだジークさんに説得されている。疲れて来て私の悪い癖が出て彼に押し切られる。
そう私の悪い癖とは面倒くさくなって”少しの我慢ならいいや”となる所だ。
こうしてパーティーにジークさんのパートナーとして参加する事になり頭が痛い週末となってしまった。
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