75.新生活
ジークとも仲直りして新生活に向けて大忙し
「ありがとう。崎山さんの助言か無かったら、借りた後で後悔してましたよ」
「咲さんに頼ってもらい嬉しいです。それにしても黒川お前の能力を疑うぞ!大切な人だから最高の部屋を紹介しろと言っておいただろう」
「すまん。夜を考慮して無かったよ。相変わらずそつが無いな」
「お前なぁ!」
木曜の仕事帰り崎山さんにお願いして仮契約した部屋を見にきている。昼間に内覧した時は気付かなかったが、隣のビルの同階に進学塾があり遅い時間まで灯りが煌々と点いている。寝室になる部屋の電気を消してみると、窓から灯りが差し込み結構眩しい。窓を開ける季節などは明るくて眠れない。私は真っ暗じゃないと眠れないタイプでこの明るさは辛い。でも間取りとかその他は気に入っているんだよね…
一から探し直しかと思ったら、2つ上の7階の同じ間取りが空いているそうだ。家賃はほんの少し上がるが予算内。
直ぐ見せてもらえることになった。寝室予定の部屋で明かりを消してみると学習塾の明かりは全く気になら無い。
「崎山さん他に気になる所はありますか?」
「いえ、いいマンションです。ですが…ここに私の部屋が有れば最高ですがね」
「えっと、それは無理な…」
「ならハグして下さい」
黒川さんがいるのにハグ要求。口を開けて茫然とする黒川さんを尻目に、両手を広げてハグ待ちの崎山さん。多分ハグしないと終息しない。黒川さんも待っているからちゃっちゃとハグし内覧を終えた。
そしてマンション前で黒川さんに土曜日に次の約束し、5階の部屋はキャンセルし代わりに7階の部屋を仮押さえしてもらった。
黒川さんとはマンション前で別れ、気がつくと崎山さんの秘書の美川さんが待っていた。
崎山さんにこの後食事に誘われ、今日のお礼に奢らせてくれるなら付き合うと言うと
「では奢って下さい」
「はい。でも私…崎山さんみたい高級店は無理なので期待しないで下さいね」
「貴女と一緒ならファーストフードや屋台のたこ焼きでも嬉しい」
こうして奮発して人気の中華料理店で夕食を食べて家まで送ってもらった。また別れ際にハグの要求があった。崎山さんは本当に外人並みにハグが好きなようだ。苦笑いしハグをして別れた。
家に入り風呂に入り早めに寝室に行くと、ジークさんからメッセージが
『週末貴女と過ごしたい』
『土曜は部屋の契約に行くので無理です』
『心配なのでお供させてほしい』
確かに契約関係は今まで1人でした事がない。賢斗がいる時は全てやってくれたので本当に初めてだ。不安ちゃ不安だ。
少し考えて…確かに契約関係は経営者であるジークさんの方が詳しい。一緒なら心強い。
黒川さんは悪い人ではないけど…
『ではよろしくお願いします』
『では何時にお迎えに行けばいいですか?』
こうして土曜の契約はジークさんに同伴してもらい、その後にデートする事になった。
そして土曜日。例の公園に行くといつもの黒ワンボックスの前にタチバナさんがいて扉を開けると今日はスーツ姿のジークさん。
「あれ?髪…」
ジークさんの髪色が戻っている。唖然と見ていたら
「凛さんにこっちの方がいいと言われたので」
「どちらも似合ってますよ」
「…タチバナ扉を」
「?」
タチバナさんがまた扉の前に…言うまでもなくこの後濃厚な口付けをいただく事になり、大切な契約の前にぐったりする事になった。
「いらっしゃいませ?」
「こんにちは黒川さん。よろしくお願いします」
ジークさんに釘付けの黒川さんにジークさんを紹介すると何故か顔が青くなる黒川さん。
後で聞いた話だがジークさんは有名で知っていたそうだ。
こうしてジークさんがいてくれ無事に部屋の契約は終わった。次に今の家の貸し先の話になり希望者が出ているそうだ。
相手は外国から仕事で来日予定の家族で、三年契約を希望している。
「子供さんがアメリカンスクールに通うのにも、ご主人の通勤にも立地が良く気に入られまして。貸し出す意思が変わらないなら来週に来日されるので内覧したいと」
「いいですよ」
「ではまたお時間を連絡します」
するとジークさんが身を乗り出し黒川さんに
自宅貸し出しの賃貸契約と仲介契約書を見せてほしいと願い出た。少し渋った黒川さんだが私もジークさんに見てもらった方が安心だからお願いする。
契約を見たジークさんは直ぐ目を通し、2、3箇所質問をし、汗だくになりながら説明する黒川さん。
「咲さん。これでは貴女に不利だ。黒川さん。これはおかしい是正を求めます」
「あっあれ?そうですね!ここは正式な契約の時に修正させます」
意味が分からずジークさんに聞いたら曖昧な表現で揉めた時に不利になるそうだ。
流石世界規模のCEOをしていただけの事はある。問題なく契約も終わり次は内覧を約束してオフィスを後にした。車に乗り夕食に向かう。
「少し失礼します」
と言い書類に目を通しているジークさん。会っている時に仕事を持ち込む事は今までなかったがどうやら急ぎらしい。
さっきの契約の時もそうだが仕事モードのジークさんさ別人だ。やきもち妬いて私に注意されいる彼とは別人にドキドキしている。
働く男性はカッコいい。特に三揃えのスーツに書類なんて萌えるに決まってる。
私の視線に気付いたジークさんは私の顔を覗き込んで
「咲さん?」
「あっ!えっと…仕事する男性はカッコいいなぁって」
「…」
真顔でフリーズするジークさんに仕事の邪魔をしたと後悔して、謝ろうとしたら触れるだけのキスをもらう。そして
「頑張って終わらせるので、いい子で待っていて下さい」
「お邪魔してごめんなさい。私の事は気にしないで下さい」
そう言いまた書類に向かうジークさんの横顔を見ていたら耳が赤い。
なんだろう凄いドキドキする。こんな気持ち久しくな無くて苦しくなってきた。いい大人が甘酸っぱい恋をしている。
でもいいよね!だって今私【第2の青春】中だから。
こうしてジークさんとの恋も引越しも順調に進み…
3ヶ月後…
「皆さん。今日はありがとうございました。大したものは用意できませんでしたが、ゆっくり食べてくださいね!」
今日例のマンションに引越し、荷物の搬入を終え、デリバリーしたお弁当で夕食中だ。
皆さん忙しいのに手伝いに来てくれた。男手が多く予定より早く終えた。
『ジークさんと崎山さんの部下の皆さんが可哀想に駆り出され、引越業者より多くて業者さんの立場無かったなぁ…』
そんな事を考えながらリビングをみるとジークさん、崎山さん、田沢さん、タチバナさん、美川さんに、愛華と凛が和気藹々食事をしている。
約2年前のホテルでジークさんに会い私の人生が大きく変わった。ジークさんに会わなければ今でも気楽に”お一人様”をし、あの大きな家で一人動画サイトをみて過ごしていただろう。
素敵な友人達に感謝している。そんな事を考えていると自然に涙が出てきた。こういう時にいち早く気付く崎山さんが立ち上がり抱きしめてくる。
「咲さん⁈」
「ごめんなさい。悲しいんじゃないの。いい出会いに感謝しているの。それで幸せだなぁ〜って」
そう言うと崎山さんの腕が更に強くなり、ジークさんが凄い勢いで向かってきて崎山さんの腕を取った。お酒が入り酔っ払いと化した田沢さんが二人を揶揄して、わちゃわちゃになった所で愛華の雷が落ちて収束する。こうして無事引っ越しは終わり皆さんをマンションエントランスまで見送り凛と部屋に戻った。部屋に戻るEVで凛が
「お母さん。まだジークさんと清い関係なの?中坊じゃ無いんだからいい加減大人の付き合いしないとジークさん浮気するよ」
「凛!」
娘の思わぬ発言に固まる私。確かに付き合いだして数ヶ月経ち一般的なカップルならいたしていてもおかしく無いが、何分私が慎重な性格と恥ずかしいのもあり、彼は私に嫌われたく無く攻めかねている。
体を重ねる事に必要性を感じないが確かに体を重ねる事で分かる事も有るのも理解している。黙り込んだ私に気付いた凜が
「まぁウチのお母さんは超奥手だから仕方無いよね。そこをジークさんが理解してあげれないなら別れればいい話だしね。でもきっと別れたら崎山さんが速攻でアプローチしてきそうだけどね。でもねきっとジークさんも望んでいると思うよ。恥ずかしいならさ!一気にしちゃった方がいいんじゃない」
「…」
まだ子供だと思っていた娘にアドバイスされるアラフィフって…情けないやら(娘の成長に)感動やらで複雑な気持ちになる。そんな親の気も知らない凜は
「明後日私が帰ったら遠慮なくジークさんお泊りしたらいいじゃん。但し仲良くするのはお母さんの寝室だけにしてよね」
「あんたね…」
こうして娘に恋愛のアドバイスをされ引越の夜は過ぎて行った。
そして2日後に荷物の整理が終わった凜はまた大学へ戻って行った。帰る間際にジークさんに買い物に付き合ってもらい、欲しい物をしこたま買ってもらい、超ご機嫌で帰って行った凛でした。
そして数日後に部屋が落ち着き母といーさんが部屋を訪れ、部屋は2人に好評で何より母が喜んでいた。そして心配をかけた2人にジークさんとの事を話しておいた。いーさんは何も言わないが優しい顔をし母は涙ぐんで
「私だけ彼氏に会っていない!」
と拗ねていーさんが慌てて母の機嫌取りをしている。近い内に紹介すると約束し夕飯を共にし2人は帰って行った。
そして自宅も例の海外赴任のご家族に貸しこちらも問題なく契約できた。借主のご主人には内覧の時にお会いしたが感じのいい人でウチに事情を聞いたらしく
「亡きご主人が建てられたお家ですから大切にさせてもらいます」
と言ってくれ安心して貸している。全て丸く収まって日々幸せに感謝して過ごしている。ただ…
「この幸せ者!どこに不満があるっちゅうの!」
私の微妙な心情を察知した愛華が探りを入れてくる。でも前世に関わる事だから言える訳ない。
実は…崎山さんと月1、2のペースで会うのだが、必ず痣のチェックを入れられるのだ。そう痣が消える時は巫女と騎士が体を重ねた事を意味する。つまりまだ私の左手の甲に鎮座る痣はまたHしていないと主張している。そしてそっち方面が(推測の域を出ないが)強い崎山さんは時折冗談風に誘ってくるのだ。
こっち方面は田沢さんの方が冗談にちゃんと聞こえるから対応しやすい。
益々セカンドバージンは早くロスはした方がいいのか頭を抱えてしまう。
私の引っ越しから1か月後にジークさんもホテル暮らしから例のマンションの最上階の自室に引っ越しをした。私の時に手伝ってもらったので私も手伝いに行くが…
「咲様はここに座って監視してください」
「いや手伝いに来たので…」
「なりません!そんな事させたら俺らボスに消されます!姫はそこに座るのが仕事です!」
何が姫だ!50手前のおばさん捕まえて姫は無いだろう!シネマランドで知り合った石田さんは青い顔をして手伝いを拒む。すると私の気持ちを察した倉本さんが
「では少ししたら休憩を挟みます。冷蔵庫に入っている飲み物を出してもらえますか?」
「はい!他にもなんでも言って下さいね」
「では、その後にタチバナさんと一緒にお弁当を取りに行って下さい」
「了解!」
気合を入れて返事をしたら倉本さんが微笑んでくれる。今日の皆さんはスーツでは無くジャージ姿でスポーツ選手並みにいい体をされていてかっこいい。
『こういうの福眼って言うのよね…』
そう思いながら巨大冷蔵庫からミネラルウォーターとお茶をせっせと出しテーブルに並べていく。そして10時になり一旦休憩をとるために各部屋の皆さんに声をかけていく。そして主寝室の片づけをしているジークさんの元へ
「ジークさん!休憩ですよ」
「もうそんな時間ですか!」
主寝室に入るとベッド横にチェストを設置していたジークさんが目に入る。ベッドはキングサイズ?いや違うもっと大きい。賢斗と使っていたベッドがキングサイズだった。でもそれよりそれより一回り大きい。
『特注?それとも海外サイズ?キングの上は何?エンペラー?』
そんな事考えながらベッドをガン見していたら、顔を真っ赤にしたジークさんが来て抱き上げてベッドの淵に座り
「そんなにベッドを見詰めたら私は期待してしまう…」
「なっ!違う!キングサイズより大きいから何サイズなんだろう?って」
休憩で呼びに来たのにジークさんは深夜臭を醸し出し背中に汗がにじむ。そしてキスの雨が降り注ぐ。
中々休憩に来ない私たちを呼びに石田さんが来た様で、一瞬ドアの端に見えて走って去っていった。
『も!恥ずかしい!』
そしてジークさんの深夜臭は治まらず耳朶を甘噛みし耳元で
「このベッドは貴女しか入れない。いつ来てくれますか?」
「えっと…引越が落ち着いたら?」
「本当ですか!」
「えっ!今私なんて言った?」
「咲!!」
テンパりとんでもない事を言ってしまいジークさんが大暴走。そこに皆に頼まれたタチバナさんが登場。必死で助けを求めやっと解放された。
どうしよう…交わる日が決まったしまった。この後の記憶は殆どない私だった。
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