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73.失敗

ジークに紹介してもらい例のデザイナーズマンションを紹介してもらうが、崎山さんの知り合いからも紹介してもらう事になり…

日曜日朝からコーヒーを飲みながら新聞をチェックしていたらメッセージが届く。確認したら崎山さんだ。どうやら崎山さんの友人が不動産会社に勤めているらしく、コンタクトを取ってくれ月曜の会社帰りに会える事になった。

メールにその友人の名刺が添付されていた。その不動産会社のHPをチェックしていたら例のデザイナーズマンションと大通りを挟んだはす向かいに半年前に同じ規模のマンションが建っていて、そこを管理しているようだ。立地は通勤には便利で物件情報を見ていたら1LDKもあり家賃も予算内だ。

明日早速行ってみますと返事をした。

そしてジークさんとの約束時間が近づき準備をする。以前ワンピースを着て行き思いのほかジークさんが喜んでいたのでスカートにするか悩む。でもスカートに抵抗がありシャツワンピにレギンスパンを合わせ、これが私のおしゃれの限界とあきらめた。そして約束時間に5分前にインターホンがなる。モニターにはジークさんが映っている。

慌てて戸締りを確認して玄関を開ける。そこには麗しい笑顔のジークさん。挨拶しようたら


「咲さん!おはよう。お出かけ?」


「へ?」声のする方を見たら頬を染め破顔しているお隣の住田さんの奥さん。


「おはようございます。えぇ…出かけてきます?」


奥さんは私では無くジークさんの後ろに控えるタチバナさんをガン見している。確かタチバナさんに興味を持っていたなぁ…

住田さんに挨拶し車に乗り込もうとしたら住田さんは凄い勢いで手を振っていて、タチバナさんが車に乗り込み時に住田さんに会釈し車に乗り込んだ。次に奥さんに会ったら質問責めにあうのは確実だ。暫く会いたくないなぁ…

そんな事を考えていたら指を絡めて手を握ってくるジークさん。見上げるととても美しい笑顔を向けて来る。

朝一から車内は甘い空気に包まれ照れくさくなる。ジークさんの知り合いの不動産屋は近く10分ほどで着いて、ジークさんにエスコートされ店内へ


「いらっしゃいませ。ジークヴァルト様お待ちしておりました。奥の応接へどうぞ」

「お久しぶりです。今日は彼女の部屋を捜して欲しいんてす。よろしく頼ます」

「お任せを」


奥の立派な応接室に通され、少しするとモデルの様に綺麗な女性が香りのいいコーヒーを出してくれた。この女性はジークさんに秋波を送っているが、ジークさんは全く気にも留めていず、コーヒーを飲もうとしている私の世話をやいている。

女性が退室すると資料を沢山持って先ほどの男性と別の男性が入室して来た。そして早速部屋の資料を目の前に並べだした。

そして例のデザイナーズマンションの10階の角部屋1LDKの資料を笑顔で差し出してきた。


『やっぱり…怪しい』


ここの不動産屋も家賃が異常に安い。スーパーの野菜じゃないんだから安ければいいというものでは無い。価格には相場も有るしはある程度は信用・信頼も入っているものだ。

そんなの事は経営者として分かっていると思っていたジークさんが、えらくこの部屋を推してくる。確かに部屋の間取りやマンションの立地は最高だし、マンションにはコンシェルジュが在中し安心感もあるし何より安い!でも…

こういう事は人に流されてはいけない。冷静に考えて


「ここはやめておきます」

「なぜ⁈こんな好物件はありませんよ」

「家賃もだし正直胡散臭い。怖いから嫌です。すみません外に条件にあう物件は有りませんか?」


店員さんにそう言うと困った顔をしてジークさんを見ている。この時点でこの不動産屋も無いと感じた。この後色々紹介してくれるが、所々あのマンション以上の物件は無いとゴリ押しされ…


「ありがとうございました。ご縁が無かったようです。こちらで失礼します」

「咲さん?」

「ジークさんも紹介してくれてありがとう。でも焦っていないのでゆっくり探します」


そう言い席を立ち礼をして部屋を出た。慌てて追ってくるジークさん。今日のジークさんは変だ。胡散臭い不動産屋に感化されたかのようだ。今日は一緒に居たく無くてバスで帰ると言い送迎を断った。送らせて欲しいと懇願されるがそんな気分じゃない。

私の表情から察てくれたタチバナさんがタクシーを拾ってくれ、胸元からタクシーチケットを出して運転手に渡していた。


「今日はお時間いただきありがとうございました。では失礼します」

「待って咲さん!」


ジークさんの手を避けてタクシーに乗り家に帰った。理解できないジークさんに戸惑いもやもやした気分で家に着き、夕方までソファーでふて寝してブルーな週末となり、落ち込んだ気分のまま月曜日を迎えた。

昨晩から何度もジークさんからメールが来ているが無視している。

あれだけ愛華に“距離感”って言われたのにね…苦笑いし、2,3日放置することにした。


そして週明けの今日は仕事帰りに崎山さんが紹介してくれた不動産会社に寄って帰る。いい出会いがある事を祈り真面目に仕事をこなす。


定時になり閑散期のオフィスは定時で皆帰り支度をして順次帰っていく。


『今から不動産屋に向かったら丁度いいや!』


新たな出会いに期待しつつ大通りを歩き、例の不動産会社に着いた。不動産会社は高層ビルの15階でとても綺麗なビルで、ウチの会社のビルが改めて古いと実感する。


『だって築30年だもんなぁ〜』


そんな事を考えながら不動産会社のオフィスに入り、受付の電話で崎山さんの友人の黒川さんに取次をお願いする。

電話を切り受付のソファーに座って暫くしたら、同年代くらいの体格のいい男性が現れた。


「梶井様。お待たせいたしました。崎山さんから連絡を受けています。こちらへどうぞ」

「お時間いだだきありがとうございます。よろしくお願いします」


応接室に通されたら”紅茶、コーヒー、リンゴジュース、日本茶”の何かいいか聞かれ、紅茶をお願いした。

飲み物を待っている間、崎山さんと黒川さん2人の関係を教えてくれる。2人は大学で同じゼミで卒業後ずっと交流があり友人らしい。


「崎山が女性を紹介するのは初めてで驚きました。奴は超が付く愛妻家で亡くなられた奥様とは中学からの付き合いで、あんな容姿で優男でモテるのに奥さん以外興味が無かった。だから今回梶井さんを紹介した事に驚いているんですよ」

「はぁ…」

「あいつは優しいが経営者としては冷静冷酷だ。敵に回すと面倒なので、下手な所は紹介しないので安心てください」

「ありがとうございます」


丁度良いタイミングでスタッフさんが紅茶を持ってきてくれ、ここから物件の話になった。まず、自宅の情報をお伝えして幾らで貸せるか調べてもらう。


「こっこんな高い家賃で貸せるんですか?」

「はい。いや是非家の仲介させて欲しい。あのエリアは人気があり、賃貸でも借りたい人が多いんです。あの建設会社の注文住宅なら借りたい人からしたらこの額でも安いです。低めに査定してこの金額です。この金額を参考に次に借りる部屋を決めて行きましょう」

「はい!お願いします」


思っていたより高く貸せそうで借りる部屋をグレードアップ出来そうだ。


そしてタブレットで資料を出して見せてくれる。何室か見せてもらい最後に目を付けていたあのマンションが出てきた。

家賃も予算内だし東向きの5階。その部屋は1LDKでは無く2LDKだ。黒川さん曰く


「娘さんが帰省される事も有るでしょうし、あの広い家を出るとなると荷物を処分するかトランクルームを借りないといけない。ならばある程度の荷物を1部屋に置き、一時帰宅する娘さんが泊まるとこもできるでしょう」

「娘の帰宅と荷物は頭にありませんでした。目から鱗です」


紹介された部屋ならトランクルームを借りる必要もないし、数日なら凛が寝るくらいのスペースは有るだろう。好条件に顔が綻ぶ。


「お気に召したのなら内覧出来ますが」

「是非お願いします」


こうしてトントン拍子に話が進み、正式に自宅の借り手も探す方向で正式に黒川さんに依頼する事にした。


「では自宅の査定をさせていただきたいので、自宅に伺いたいのですがご都合は?」

「えっと…」


こうして本格的に動きだします。

るんるん気分で不動産会社から出てスキップする勢いでバス停まで行き、足取り軽く家に帰った。


帰宅して夕食を食べていたら崎山さんから着信。食事を中断してすぐ出る


「今晩」

「こんばんは。黒川さんを紹介してもらいありがとうございました。今日行って来ましたよ。いい物件を紹介をしてもらい、近いうちに内覧する予定です」

「良かった。お役に立てて。黒川からもお礼の連絡がありました。営業にしては真っ直ぐな男ですか、咲さんに不利な事はしない筈です。少しでも不審に思ったら私に知らせて下さい」

「ありがとうございます。今度お礼に奢らせて下さい」

「では新居に招待して下さい」

「えっと…」


ちょっと焦ると


「勿論愛華さんや田沢君と伺いますよ!」

「でしたら是非に…でもいつになるか分かりませんよ」

「いつまでもお待ちしていますよ」


崎山さんにお礼も言えたし今日は満足!

テンションが上がってい内に凛にも経過報告して、早めに風呂に入り本を読んでゆっくりする。ふとスマホが目に入ると光ってるのに気付く。手に取るとジークさんからだ。

昨日から謝罪をしたいとメールが入っている。でも忙しいと断っているが懲りずにメールしてくる。


『今は何か嫌だから…放置決定』


いい気分な反面ジークさんの不可解な行動にモヤモヤしてこの日は早く寝る事にした。


翌火曜日。いつも通り出勤して仕事をしていたら内線で社長のケイコさんから社長室に来る様に言われ社長室に向かう。

入室すると来客の様で…


「田沢さん?」

「あっ咲さん!ちは!」

「どうしたんですか?」

「えっ仕事だよ」

「へ?」


確かに数ヶ月前から田沢さんの美容室及びエステ店とレストランの顧客情報の管理を請負っている。データは私が管理して窓口は社長が行ってきた。どうやら店舗を増やすにあたり業務追加依頼で訪問された様だ。

仕事の話が終わりもうすぐ昼休み。


「追加の業務も咲さんが担当してくれるとケイコさんから聞きました。よろしくね!んで親睦深めるためにランチに誘った訳。でもケイコさんこの後予定有るんだって、だから咲さん付き合ってよ」

「えっと…」

「行ってきて梶井さん。ついでに新しくオープンする店舗も見て来て」

「咲さん♩業務命令だよ」

「分かりました。用意して来ます」

「いつまでも待つからね〜」


こうして田沢さんとランチに行く事になり、一緒にオフィスを出た。

田沢さんのスポーツカーが横付けされていて乗り込み先に新店舗を見に行く。

車内ではおしゃべりな田沢さんが色々話してくれ楽しい。

一頻り笑っていたら車が停まった。周りを見渡すと見覚えのある場所だ。田沢さんがドアを開けてくれ降りると!


「ここ…」

「そう!ここの1階に美容室とエステ店とオーガニックレストランが入るんだ!」


見上げたら建物は例のマンションだ。


『何?何でこんなに縁があるの?』


戸惑っていたら嬉しそうに田沢さんが


「ここジークヴァルト氏がオーナーだから、優先で借りれる事になったんだよ。立地はいいし賃貸はデザイナーズマンションでお洒落な入居人だから固定客付きそうだしさ!

それに最上階はジークさんの私室らしいよ。

だからジークヴァルト氏絡みの客とも知り合う機会が増えるし、その内咲さんもここに住むんでしょ⁈」


田沢さんの話を聞きやっとジークさんここのマンションを推す理由が分かったのでした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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