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71. 竜二&ジークヴァルト

宴会直後の2人の様子です

竜二 side


23時になり宴会はお開きになった。愛華さんにこの後ガールズトークするからと半ば強引に追い帰される。振られる気で臨んだ宴会だが思いの外ダメージは大きい。気落ちしていると田沢君が飲みに行こうと誘って来た。彼なりに気を遣っているのだろう。ありがたく誘いに乗ることにした。

すると別れ際にジークヴァルト氏が


「竜二君。これからも同郷の友として付き合って欲しい」


と手を差し伸べてきた。恋敵に複雑な気持ちだ。

彼が言う様に貴重な同郷の仲間だから繋がりは持ちたい。しかし時渡の騎士は愛情深くそれ故に嫉妬深い。我が子と佐那が睦ましいそれさえも嫉妬するくらいだ。きっとジークヴァルト氏は私が咲さんと会うのを嫌がるだろう。だが彼と仲を持つのは仕事上も咲さんと友人関係を保つのにも必要だ。まだまだ微妙な気持ちで


「こちらこそよろしく。これからは貴方も咲さんも大切な友人です」


そう言い握手した。


少しして美川が来て田沢君と行きつけのバーに向かう。田沢君はお喋りで一人で喋っている。田沢君の話に相鎚を打ちながら咲さんの事を考えていた。

巫女を亡くした騎士は万年愛情と癒し不足だ。それ故に再度得た巫女の癒し無しでは正気を保てない。


『今までの様に触れ合え無くてもハグ位は正直なところ頂きたい。ジークヴァルト氏の反感を買わない程度に彼女に与えてもらおう』


そして溜息を吐き


「はぁ…これからは彼女を誘うのが難しそうだ」

「確かにジークヴァルト氏は手強いですからね!愛華さん絡めると誘い易いっすよ」

「私はあまり愛華さんに好かれていないので、それはそれで難しいです」

「完璧紳士の崎山さんでも落とせない女性いるのは何か親近感!」


咲さんにフラれた者同士と認識した田沢君は少しウザい。しかさ慰めてくれるからいい奴ではある。

普段からお酒は強く酔わないが、久しぶりに酔っている。こんなに酔うのは佐那が亡くなった時以来か…

来世は命が尽きるまで巫女さなと添い遂げたい。

そして咲さんとジークヴァルト氏も同じく来世は生まれた時から命を終えるまで共にある事を願って一人で静かに酒を飲んだ。


そして酔っ払って家に帰り咲さんにメールを送り、咲さんのアドレスを友人のフォルダに移動させ私の恋に終止符を打った。



ジークヴァルト side


やっとの思いで咲さんに受け入れられた!もう離れたく無い。それなのに邪魔だと愛華さんに追い帰らされる。試しにと言い重ね合わせた唇に全身が震えて、本能のまま欲が暴走して荒く口付け彼女は崩れ落ち、慌てて抱きしめもう何があっても離れないと心に誓う。


『明日朝に連絡してランチに誘おう』


そう思いながら迎えに来たタチバナの車で滞在するホテルに戻る。後部座席でニヤけている私には何か言いたげなタチバナ。彼には心配を掛けた。だから


「やっと心を受け取ってもらい、恐らく咲さんも…」

「おめでとうございます。私感無量で…申し訳ありません。言葉が出ません」

「今まで支えてくれ感謝している。これからも頼むよ」

「勿論でございます」


涙声のタチバナ。彼は部下だが兄の様な存在だ。タチバナに今までの感謝を述べ、明るくなった未来これからに思いを馳せる。

こうして一旦部屋に戻りシャワーを浴び熱った体を冷やしてベッドに入るが眠れそうにない。目を閉じると彼女の柔らかい唇と体に興奮してしまう。

明日誘ったら会ってくれるだろうか?

そんな事を考えながら時間が掛かったが眠ることが出来た。


翌朝8時にお誘いのメッセージを送る。すぐ返事が来るとは思っていないが、返事が無く不安になってくる。昨晩ベッドでランチの店を検索し、咲さんが好きそうな店を見つけ朝一予約をするの為に返事を待つが…

もしかして竜二君が誘っているかもと思い不安になる。急かす様で嫌だったが再度送ると


「お誘いありがとうございます。すみません。凛が昼で帰り見送りするのでやめておきます。またの機会に…」


断られ凹んでいると知らないアドレスからメールが、プライベートのスマホに誰だろう?

気になりすぐ開くと


『おはようございます。梶井凛です。昨晩はありがとうございました。まずは母のスマホからアドレスを無断で転送し謝ります。

今日は昼から帰るので恐らく母はデートの誘いを断るでしょう。ですが私は頻繁に帰ってこないので、ジークヴァルトさんに会う機会が少なく貴方を知るチャンスも少ない。ですからジークヴァルトさんが良ければ、ランチご一緒しませんか?で!駅まで送ってもらい後は母と逢瀬を楽しんで下さい。どうですかね?』


断られ落ち込んでいた所に凛さんからの提案にテンションが上がりすぐ返事をした。

そして咲さんに迎えに行くメールを送る。

すぐにカフェに予約を入れシャワーを浴びて着て行く服を悩みながら身支度し、時間まで建築中のマンションの報告書を読む。

どうやら立地もよく不動産屋に問合せが殺到している様だ。

1階の店舗には咲さんの関係で縁が出来た田沢君の美容室&エステ店とオーガニックカフェが入る事が決まっている。美容室とエステ店には竜二君の会社の商品が取扱われているので、これからも彼等とは長い付き合いになりそうだ。


「ジークヴァルト様そろそろお時間です」

「あぁ…行こうか」


昨晩別れてまだ半日も経っていないのに長く感じる。一度縁が切れていた期間は半年以上もあったのに、彼女を得た今は1秒でも離れたくない。お迎えに行く車の中ではやる気持ちを必死で抑える。


家の前に着きドアホンを鳴らすと元気な凛さんが出てきてご挨拶いただく。凛さんはタチバナを見るなり”リアル執事!”と興奮し、タチバナに挨拶をして連絡先を交換していた。

恐らくこの気質は賢斗氏に似たのだろう。複雑な気持ちだ。そして…


「!」

「ごめんなさい。お待たせしました」


普段パンツ姿しか見た事ない咲さんがワンピースを着ている。綺麗で愛らしくて可愛い!抱き着き全て奪い去りたくなる。

咲さんに会うまで不思議なまでに女性に欲を持った事がない。今の私は性に目覚めたティーンの様で節操が無い。必死で自分の欲と闘う。私の下心を見透かしたのか凛さんの質問攻めに会いタジタジなる。

しかし凛さんは腹が無く竹を割ったような性格の様で言いたい事をはっきり伝えてくれるので分かり易い。賢斗ケインが遺言で私と咲さんが付き合うのに抵抗がない様だ。

恐らく賢斗ケインは私が追ってくるのを分かっていたかの様だ。


こうして娘の凛さんと食事を共にし、沢山話せて少しは信用を得れたと思う。

食後は凛さんは駅まで送り、やっと咲さんの二人になれる。少し緊張気味の咲さんに滞在しているホテルに向かうと告げると少し強張った顔をした。


『違う!いくら想いが通じったからって、そんなに私はがっついていない!…本当はがっつきたいが…』


渡すものが有ると説明し咲さんを安心させる為にタチバナを同席させると告げると了承してくれた。


部屋に入ると咲さんの視線がトルソーに飾って置いたパンツスーツに向かっている。このパンツスーツは別れる前に一時祖国に帰国中、見合い相手に付き添い行った洋服店で一目惚れし、咲さんにプレゼントするつもりで購入していたが、直後に別れてしまい渡せずにいた物だ。


『あぁ…可愛すぎる…』


彼女は気を遣いながらも気に入っているのが分かる。そして奥ゆかしい彼女は遠慮している。気を使わせない様に試着を進めると素直に着てくれる。サイズもピッタリな上、とても良く似合っている。仕事着にしてもらいヘビロテしてくれると嬉しい。

こうして夕刻まで何をする訳でもなく他愛もない会話を楽しみ彼女を家まで送る。

夕食に誘ったが昨晩の残りが有るからと断られた。真面目な彼女は捨てれないのだろう。


車で送り家の前に着くとタチバナが車から降りて咲さん側の扉の前に背を向けて立つ。相変わらず分かっているタチバナに苦笑し咲さんに躙り寄る。そして…彼女は照れながらも口付けを受け入れてくれた。咲さんは暗がかりでも赤くなってるのが分かる。また会う約束を交わして今日は紳士に徹し別れた。


帰りの車で彼女の唇の感触に浸っていたらタチバナが


「ジークヴァルト様。僭越ながら梶井様はあのマンションをお気に入りの様でございます。報告では問い合わせが多く早く押さえておかないと満室になる可能性が」


そう言い信号待ちで停車した車内からあの建設現場を見上げている。


「…」


本当なら最上階の咲さん用の部屋に移って頂きたいが、距離感を大切にする彼女は良しとしないだろう。慎重に距離を詰め然るべきタイミングで切り出さないと…


「彼女の希望の1LDKで一番いい部屋を押さえる様に手配してくれ」

「畏まりました」


こうして慎重に且つ積極的に距離を縮めて全て彼女に捧げよう。


こうして私ジークヴァルトはやっと初めての恋愛こいをスタートさせた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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