70.新たな関係
やっと向き合う事を決めティーン様にドキドキが止まらない!
「もー勘弁して!」
「嫌だ!こんなドキドキな恋バナ聞かずにおれるか!吐け!」
「お母さん。愛華さんがそんな話で納得すると思ってる?げろした方か楽だよ」
色々あった宴会が終わり残った女性陣で手分けして片づけをし、順番にお風呂に入り寝る前にガールズトーク中で専ら私の話。
凜は崎山さんが気に入った様で密かに崎山さん推しだったらしく、仕切りに”勿体ない”を連発している。そこで少し疑問に思い
「何で崎山さん推しなの?」
「だって誠実そうだしジークヴァルトさんより好みの顔だもん」
「凛ちゃんは塩顔派か〜私は初めからジークさん推し。崎山さんは所詮亡くなった奥さんLOVEなんでしょ?2番目はどんな事でも嫌だわ」
「私には賢斗が居るけど⁈」
「咲はいいの」
「意味わからん」
時計を見るともう深夜1時。流石眠くなり愛華は客間で休んでもらい、凜と私は自室で休む事にした。
朝…スマホの着信音で目が覚めた。寝ぼけ眼で見るとジークさんと崎山さんからだ。
深夜3時に崎山さんからと今ジークさんから入った。どちらから読むか少し悩み、先に来た方から読む
『昨晩は美味しい料理ありがとうございました。自分で望んで答えを貰ったのに思っていたより辛く、親友?の田沢君がやけ酒に付き合ってくれ、今別れて自宅に着きました。でも後悔はしていません。貴女の幸せを望んでいます。そして今まで通り巫女の安らぎを与えて欲しい。そしていい友人になりたい』
崎山さんのメッセージに少し泣きそうになっりいい出会いに感謝する。
そして次は…ジークさん。体を起こし読もうとしたら
「お母さん?起きてる?」
「今起きた」
「愛華さんが朝食べようって」
そうだ愛華はショートスリーパーで朝は早いんだった。ジークさんのメールを後にして1階のリビングに降りる。愛華は凛と一緒に朝食を用意してくれて上が善据え膳だ。昨日の残り物だけど食材がいいから美味しい。
「私朝食べたら帰るね」
「えっ!早いなぁ~もっとゆっくりしていけばいいのに」
「私の勘では早速ジークさんが来るよ。だからお邪魔虫は立ち去るのね」
ニヤけた顔をしてそう言う愛華。きっと彼女は昼ドラより楽しい話を見つけたと喜んでいるはずだ。暫く質問攻めを覚悟する。すると凛も
「あっ、私も昼過ぎに帰るよ」
「えっ!何で!早くても夕方だと思った」
「寮の子と一緒に帰って来てて、その子がバイトあるから昼に帰るって言うから一緒に」
急に皆んな帰ると言い出して寂しくなる。すると凛がスマホにメッセージが入っていると教えてくれ、開けてみるとジークさんからで2人に急かされ見ると
『急かして済みません。予約をしたいので早くお返事頂ければ幸いです』
メールはランチのお誘いだった。でも凛が帰るしお昼と見送りくらいはしてあげたいし…スマホを手に考えていたら凛にスマホを取られて
「私はいいからデートして来なよ」
「いいの。ジークさんとはまた別の日に…」
そう言いスマホを取り返し断りのメッセージを送る。すると間髪入れずに凛のスマホが鳴る。直ぐ見た凛は返事を返している。その様子を愛華と見ていて
「今の子はスマホの文字打つの早いよね」
「私らは”ポチポチ”打ちだもんね」
と中年あるあるを話していた。そしてまた凛にメッセージが入り読んだ凛が私に
「話し着いたから。帰る前にジークさんと母さんとランチして駅まで送ってもらう事になった」
「はぁ?」
「凛ちゃんやるね!若い頃の賢斗さん彷彿させるわ」
そして私のスマホにもジークさんからメッセージが
『凛さんの提案でランチをご一緒させていただける事になりました。11時にお迎えに上がります』
「はぁ?」
履歴を見るとジークさんの連絡先を凛のスマホに送っている。
「凛!」
「私は崎山さん推しだったから、ジークさんの事はほとんど知らないから、あって為人を知らないとね」
本当に我が子ながらしっかりした子で驚く。こういう所は賢斗に似たんだな。
こうして昼食は凛とジークさんと食べる事になった。愛華は予定通り暫くすると旦那さんが迎えに来て帰って行った。帰り際に
「咲…やっとだわ。賢斗さんはいい人だったけど、私はジークさんとの方がしっくりする感じがする。縁があるんだと思ってたよ。咲は周りに人を優先する癖があり自分の事を後回しにするから、本当に幸せなのか疑問に思う事があったんだよ。賢斗さんとも押しきられてたしね。ジークさんは一旦離れたけど自分で向き合うと決めたでしょ。それが咲の本当の気持なんだと思うよ。さっき話したみたいにここを出て第2の人生を再出発するのはいい事だと思うよ」
「愛華…偶にいい事言うね」
「ばか!いつもよ!」
そう言うと笑いながら抱き付いて来た。いい友達を持って幸せだ。
“プップー”
外でクラクションが鳴っている。どうやら愛華の旦那さんが迎えに来たようだ。愛華の荷物を半分持ち出るといつも温和な愛華の旦那さん挨拶してくれる。
おっとりしているが実は男らしいく案外愛華の方が旦那に頼っているいい夫婦だ。
旦那さんに照れ隠しで悪態をつく愛華にそんな愛華を優しい目で見ている旦那さんが少し羨ましかった。
こうして愛華を見送りジークさんが来るまで家の片づけをしている。すると凜がきて
「さっき話していたこの家を貸して部屋借りる話だけど賛成だよ。お母さんには広すぎるのもんね。ただ売らないで欲しい。将来私が帰って来たらここに2世帯住宅にするから」
「帰って来る気があるの?」
「当たりまえじゃん」
意外な凜の答えに不思議な気持ちになる。そして…
「ジークさんと付き合って同棲するのはいいけど、私の泊まる部屋は確保してね」
賢斗の遺言があるからか妙に物分かりが良くて、反対に私の方が変に気遣ってしまう。そうしている内に出かける時間が近づいた。着替えをしてリビングに行くと、凜から服が貧相だとダメ出しをくらい着替えさせられた。普段パンツしか履かないのにワンピースを着さされる。このワンピースは昔凜が選び半ば無理やり買わされ、箪笥の肥やしになっていたものだ。シンプルだがスカートが慣れていない私には辛い。
そして11時なるとジークさんが迎えに来た。今日もカジュアルな服装のジークさん。その後ろにタチバナさんがいて凜が“執事だ”と喜んでいて、タチバナさんと会って秒で連絡先を交換している。
『相変わらず人見知りしない奴』
「お疲れではありませんか?」
「はい。ジークさんは?」
「ここ最近で一番調子がいいです。それより…今日はいつもの装いと違いますね。いつも綺麗だが今日は愛らしさもあり、緊張してしまいます」
「うわぁ!何その歯の浮くセリフ。漫画や映画以外でリアルに聞いたの初めてだ!」
ジークさんいつも通りだが、他の人から見たらやっぱり激甘なんだ。そして肩を抱かれて車に乗り込みお店に向かう。車内では凜がジークさんを質問攻めにして温厚なジークさんも少し困っている。凜は好奇心旺盛なんだよね…
『慣れてくださいジークさん』心で密かに応援した。
数十分走りおしゃれなカフェに着いた。店内に入ると予約されていて直ぐに席に通される。私はサラダプレートとパンの盛合せを頼み、凜はピザセット、ジークさんはパスタランチを頼んだ。仲良く楽しく食事をして終わる頃には凛とジークさんは仲良くなっている。良かったのか?
「ジークさん。私ねお父さんからお母さんが幸せになるのを見守る様に言われているの。だから見てるからね」
「はい。しっかり見てください。咲さんの笑顔は私が守りますから」
「じゃぁ!私帰るので駅までよろしく」
こうして凛を駅まで送ると凛の同寮の子が待っていた。挨拶をしたら丁寧な挨拶を返してくれいい印象の子だ。すると同級生は凜に
「凛…そのイケメンは?」
「超イケメンでしょう!お母さんの彼氏」
「凛!」
するとジークさんは一歩前に行き手を差し伸べて同級生に
「凛ちゃんをよろしくお願いしますね」
「はっはい!」
こうしてジークさんを紹介し鼻高な凜は興奮冷めやらぬ友達と帰って行った。
凛を見送ったらジークさんが手を繋いでくる。そしてとろける様な微笑みで
「今からは私に時間を下さい」
「えっと…はい」
こうして告白後の初めてのデートが始まる。
タチバナさんが待つ車に戻り出発する。何処に行くのか聞いたら滞在しているホテルらしい。ホテルと言われ少し身構える。私の様子に気付いたジークさんは慌てて
「渡したいものがあるんです。タチバナも同席させるのでご安心を」
すると運転中のタチバナさんは
「私はジークヴァルト様の秘書ですが、梶井様がいらっしゃる時は、梶井様をお守り致します」
「だそうです。どうやらタチバナは咲さんの兄役の様ですね」
「ありがとうございます。頼り甲斐のある兄さんで嬉しいです」
「光栄でございます」
こうして和やかな車内に力が抜ける。
会話が途切れたタイミングで、あのマンションの建築現場の前で信号待ち。窓から現場を覗き込みどのくらい建ったのか見ていた。するとジークさんが
「あのマンションに興味がお有りですか?」
「はい!実は…」
ここでジークさんに家を人に貸して、代わりに1人用の部屋を借りる事を検討中だと話す。
珍しくえらく驚いているジークさん。そして
「数日前に会社のお使いであのマンションの前を通り、気に入って不動産屋に資料をもらって来たんです。1LDK位なら借りれそうで、さっき凛にも賛成してもらったんです」
「もっと広い部屋に…」
「はぃ?」
「いえ…その時がきたら…」
「?」
聞き返そうとしたらホテルに着いた。ジークさんのエスコートで部屋に移動し、部屋に着くとトルソーに超高級ブランドのパンツスーツが飾ってあった。触れると生地の肌触りの良さに感動し、好みのデザインと色に自然に口元が緩む。口には出さないけど私のプレゼント?と期待したが、絶対自分では買えない代物で受け取るのを戸惑う。しかしジークさんに試着を勧められて着ると、シンデレラフィットし軽さと着心地の良さに欲しくなり厚かましく頂くことにした。
こうして夜まで部屋で色んな話をして、思いのほか気を使わず楽しい時間を過ごし大変で楽しい週末となった。
帰り送ってもらっている時ジークさんが
「貴女を束縛する事は出来ないのは分かっていますが、出来れば暫くの間は崎山さんと2人で会うのはやめて欲しい…すみません…完全に嫉妬です」
「えっと…崎山さんとは友人なので食事に行く位ですよ。でも…ジークさんが嫌なら考えておきます」
「ありがとう…」
手を取り抱きしめるジークさん。耳にジークさんの胸が当たり早いジークさんの鼓動を感じる。つられて早くなる私の鼓動。車が停まりタチバナさんが車を降りた。てっきりドアを開けてくれるのかと窓を見ていたら、ドアに背を向けて立っている。まるで外から車内を見えない様にしているようだ。
するとジークさんが腕を緩めて覗き込んで来て
「口付けでいいですか?」
「はぃ?」
「急ぎ過ぎましたか?でも与えて欲しい…」
「あ…」
考える前に頷いていて綺麗なお顔が近づき…触れるだけの優しいキスをもらい、全身が心臓になったみたいにドキドキしている。
こんな年になってこんなドキドキを経験するなんて思って無かった。
ここから私の恋愛が加速して行く気がした。
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