67.宴会
義父に言いたいことを言え少しスッキリ。少し自分の気持ちが分かり…
『はぁ…毎週ながら月曜は憂鬱だわ』
遅れた上に混んでいるバスにウンザリしながら出勤。いつも通り仕事が始まりパソコンに向かっているとチーフに呼ばれる。
「梶井さんお使い頼める?」
「はい。何処ですか?」
「七井工務店よ。書類とデータを渡してきて。あそこの社長話が長いから終わったら直帰してくれていいわ」
「はい」
月曜から直帰は少し嬉しい。デスクを片付けて15時に退社した。七井工務店まで交通機関を使っと遠回りになるから徒歩で向かう。七井工務店まで徒歩30分。いつも通らない道を歩くと目新しいお店にウキウキする。そして先日見たビルの建設現場があった。
『分譲?商業ビル?』
何が建つのか気になり覗き込み塀に掲示したある看板が目に入る。
『Toujours 轟町』
やっぱり看板を見ただけでは分からないや。こうして寄り道からお使いに戻り七井工務店へ急ぐ。
『はぁ…長かった。噂に聞くけど本当に話が長い社長さんだ』
2時間近く居て仕事の話は20分ほどだった。直帰するからバス道まで戻る。途中小洒落たパン屋を見つけた入ってみる。目新しいパンに心躍っていると、客と店員の会話が耳に入る。
「ね?あの角の建設中の建物何になるか知ってる?」
「あーあそこですか?下は店舗とオフィスで、上は賃貸マンションらしいですよ。場所もいいし今から注目されているんですって」
「へぇ〜」
この辺は会社も近いし美味しいお店が多く生活するには便利だ。ワンルームか1LDKが有れば借りたいなぁ…
凛は大学近くのバイト先でマジで就職を考えているらしく、多分こちらには帰ってこない。婿さんも向こうで見つけてあっちが基盤になるだろう。そうしたらやはり今の家は広すぎるし維持するのが大変だ。
『人に貸した収入を家賃に回せば負担はないなぁ…』
あの家は賢斗が拘って建てた家で手放すのは抵抗がある。売るのはいつでも出来るから、もう暫くはそのままで…
そんな事を考えながら歩いて、信号待ちで不動産屋の前で止まった。店先にはさっきの建設中のビルの情報が貼ってある。見てみると1LDKから2LDKと10室入居者を募集している。マンションが何故か気になり足が向く。
30分程話を聞き間取りの資料をもらい家に帰る。帰宅後ご飯を用意して食べながら不動産屋にもらった間取りを見ていたらウキウキしてきた。間取図に家具を頭の中で配置して楽しむ。
「マジで借りようかなぁ…」
竣工は3ヶ月後。本気になってきた!明日愛華と凛に相談してみるかなぁ〜
こうして何度も間取りを見て妄想する日々が続き、密かな楽しみになっていた。そして水曜日になり退社まで後30分という所でジークさんからメッセージが入る。
「あれ?なんだろう」
『土曜日空いていますか?ランディからカードが届きお渡ししたい…すみません…カードは完全に口実です。愛華さんに崎山さんがいつも水曜に貴女を誘ってると聞いたので、彼より早くと思い…』
一瞬どうしようかな悩む。それよりカードて何?
「こんにちは。あの?カードて何ですか?」
『私の国では復活祭の時期なんです。この復活祭に親しい人へカードを送る習慣があります。ご迷惑でなければ受け取っていただきたい』
相変わらず返事が早いなぁ。少し考えたいから返事は帰ってからかなぁ…
こうして退社しバスに乗り車窓を見詰めながらジークさんの誘いを悩む。2人きりで会うのは少し…愛華に入ってもらう?それとも田沢さん?
『否!田沢さんは絶対無い』
“ブーブー”メッセージが入る。水曜だし崎山さんかなぁ?確認すると凛からだ。
『土曜日帰るね。美味しいものよろしく。あとそろそろお母さんの彼氏に会わせて!土曜はウチで食事会なんてどぉよ⁈』
「はぁ⁈あっ…」
まだバスの中だった。思いっきり目立ってしまう。凛が帰ってくるならジークさんは断ろうかなぁ…でもランディさんが折角カードを送ってくれたのに、受け取らないのもなぁ…
答えが出せず愛華に相談にのってほしいとメールを送ると
『9時以降なら電話いいよ』
「OK!よろしく」
こうして帰宅して電話をする為に、食事とお風呂を終わらせて9時過ぎに愛華に連絡し事情を話すと
『いいじゃん!凛ちゃんに会わせて見極めてもらったら?ついでに崎山さんと一緒に会わせたら?一回で終わるし比較できるでしょ』
「怖い事言わないでよ!」
『私真剣だよ!第3者がいたら自身が見えてなかったものにも気付く事があるはずだよ』
「…」
『了解!後は愛華さんに任せておけ。とりあえず土曜は昼過ぎたら手伝いに行くから、13時に家に行くね。じゃ!この後忙しいから』
「ちょ!何が了解なの?愛華もくるの?…って切れてるし」
やだ怖い。こんな時の愛華は無敵でゴールまで走り続けるタイプだ。溜息を吐きベッドに横になるとメールが立て続けに入る。見ると凛、愛華、崎山さん、ジークさん…
受信フォルダを見ただけで寒気がしてきた。
恐る恐る開けると…
《凛》やっとお母さんの彼氏見れる!
《崎山さん》咲さんの娘さんに会えるなんて光栄だ。好かれる様に気合いを入れます。
《ジークさん》どんな状況でも貴女に会えるのは嬉しい!
《愛華》面倒だから一気に呼んだよ。料理の準備は任せろ!
「はぁ…なんかウチで宴会になってるし…」
この後崎山さんとジークさんから娘の好きなものを聞かれ、2人が凛に印象をよく思われたいのがヒシヒシと伝わってくる。
「愛華はここ一番背中を押してくれるのは良いけど、偶に事故起こすからなぁ…
今回が正にそれだわ…もぅ考えるの止めよう。更にブルーになるわ…」
了承してないのに土曜にウチでの宴会が決まり、週末まで憂鬱な日々を過ごす事になった。
こうして週末になり帰りのバス。何を作るか考えていたら崎山さんからメールがあり、お酒を持ってきてくるそうだ。これはお酒大好きな愛華のお泊まりは決定でお布団の用意をしないと。
続けてジークさんからもメールがあり、お寿司を差し入れてくれるとの事。
凛はお寿司が大好きだから喜ぶなぁ〜。ジークさんは凛のポイントゲットしたな。
あ…もしかして…あの時価のお店のお寿司?まさかね…少し背筋が寒くなった。
あれだけ憂鬱だったけど皆んなが楽しそうにしているのを聞いていたら、私も少しわくわくしてきた。もぅいいや!折角だから楽しむ事にした。そして久しぶりに色々作ろうと考えていたら…
“♪♪〜♪”
バスの中で着信が鳴り慌てる。後で通知を押し小さくなる。一瞬見えた着信相手は田沢さんだった気がした。バスを降りるまで気のせいてあってほしいと祈り続ける。
で今とっても猛烈に嫌な予感がしている。
最寄りのバス停を降りてスマホを見ると…
『やっぱり…田沢さんだ』
また見ないふりをして家に急ぐ。そして帰宅し手洗いうがいをしてソファーに座るとまた着信。スマホを手に取ると…
「…無視はあり?」
田沢さんが切ってくれる事を願い暫く放置。でも鳴り止まない着信音。私の方が先に折れた。
「はい」
『咲さん!どうゆう事!俺誘われて無いし!咲さんの娘ちゃん来るんだろ!いくら俺がモテ男だからって警戒して呼ばないとかしないでよ!』
「あ…愛華にお任せしてて、てっきり予定が合わないと思ってたよ」
本当は呼んでないの知ってけど知らないフリをした。愛華にクレーム行っても愛華なら言い負かすから大丈夫だろう。
『俺仕事調整したから!行くから!』
「あっはい…」
『咲さん娘さんに何歳?』
「未成年だから手を出したら…」
『違うよ!女子大生なら流行りのメイク品お土産に持ってくよ』
「はぁ…」
こうしてまた1人増えた。はぁ…また賑やかになるなぁ。どうやら仕事の打ち合わせで崎山さんに会い聞いた様だ。崎山さんは悪気は無かったはず…
“♩♪〜♩”
崎山さんだ。十中八九田沢さんの件だ。
「はい。こんばんは」
『咲さん。すみません!田沢君の事です』
「あ…さっき連絡ありました。ちなみに田沢さんもいらっしゃるので」
『重ね重ね申し訳ない』
真面目な崎山さん平謝りし、反対に気を遣わせ申し訳ない。この後少し他愛もない話をして切ろうとしてら
『咲さん。私の予感ですが明日ジークヴァルト氏と私と会したら貴女の気持ちが決まる気がします。出来ればそれは私であってほしい』
「崎山さん…」
『プレッシャーをかけるつもりはありません。素直な気持ちで私達を見て選んでほしい。もし貴女に選ばれなくても、友人として今まで通り付き合ってほしい』
「…」
何も言えない私を気遣い崎山さんは電話を切った。明日になれば私は自分の気持ちが分かるのかなぁ…
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