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62.再会 ジークヴァルトside

シネマランドで咲と再開するまでお話

「お誘いしたのに待たせて申し訳ない」

「いえ。私も今来たところです」


とあるホテルの中華料理の個室。待ち合わせ時間ぴったりに崎山氏が入ってきた。付き添いの倉本を退室させ、まずは食前酒をいただくと次々に料理が運ばれてくる。


「百花の件ありがとうございました」

「いえ。当然の事ですのでお気になさらず。それに私が対応しなくても崎山さんも動かれていたのに、私が先走った様で申し訳ない」


そう。咲さんに向いた悪意に私が過剰反応し先走ったのだ。崎山氏の為人から会社経営状況を調べさせてもらったが、非の打ち所がなく信頼できる男だった。

ストーカーの元カノについても対応しており私が出る幕間は無かったが、咲さんの困り顔を想像すると我慢ならなかった。

それに…


『崎山氏の裸の写真を咲さんに送りつけるなんて!あの程度の報復では怒りが治らない!』


私の表情から気持ちを察した崎山氏は苦笑いしている。そしてこの後崎山氏から咲さんに前世の話をした事を聞いた。


「咲さんは大変驚かれていました。そして”巫女と騎士は必ず結ばれる”と言うと泣きそうなお顔をされて…」

「…」


崎山氏は慰める為に咲さんを抱きしめたと言い恍惚な表情をした。私は嫉妬で今にも目の前の彼を殴りそうになるのを必死に抑える。


『咲さんはそんな泣きそうなほど私とは…』


泣くほど私が嫌なのか!もう生きて行く希望も支えも…


「ジークヴァルトさん。勘違いしていますよ」

「?」

「咲さんは嫌で泣きそうなのでは無く、貴方に想いが有るのにどうしていいか分からないですよ」

「本当ですか⁈」

「私が思うに…」


崎山氏曰く。不器用な咲さんはエミリアの制約に囚われ、気持ちが定まらず困惑している様だと言う。


「その制約とはどんなものなんですか?」

「それは…」


協力者の彼になら話してもいいと思い、咲さんの祖母の虐待はぼやかし、咲さんが壊れない様に前世の魂が記憶を無くし前世の記憶を持つ者を拒む様に暗示をかけた話をした。

話を聞いた崎山氏は苦い苦しい顔をして


「本当に貴方と咲さんが不憫でならない。国の為の贄になり命を献げるだけでも不憫なのに、邪な想いをも持つものに邪魔をされて…

その上想いに制約までかけられるなんて」

「あぁ…全ての神を呪いそうになったよ」


目の前のこの男は本当は咲さんを欲しているのに、恋敵の俺に同情している。同じ騎士だからか⁈会うのは2度目だが信頼出来る。


暫く沈黙が続き重々しい空気に包まれる。そして彼は何か思いついたのか私に


「その制約は前世の記憶を持ち咲さんに近付く者を避けるものでしたよね」

「はい。そうとは知らず私は初めから咲さんをエミリアとして接してこのザマです」

「そして前世を隠して近付いた前夫ニセモノは受け入れられた」

「はい」


確信した様に自信満々で崎山氏はこう言った。


「なら出会いからやり直せばいい」

「出会いからですか?」


私では想像できない案に目を丸くする。

彼曰く、前世を知っているジークヴァルトに制約がかかっているから、別人になり再度咲さんに会いに行けばいいと。

別人と言っても容姿や名前身分を簡単には変えれないし、整形や偽名は不可能では無いが咲さんの心を得て真実を明かすと騙したと嫌われるかもしれない。


「整形や身分を捨てる事に躊躇しないが…」

「いや!そこまでしなくても、容姿を少し変えて一見ジークヴァルト氏と分からなくすればいい。そして名は明かさず会えば騙した事にはならない」


そんな事簡単に言うが…

すると崎山氏はノートPCを取り出し何かアプリを立ち上げて


「見てください。この位の変身でいいんですよ。そして特徴的な瞳は色メガネで隠せばいい」


彼の言わんとする事は分かった。しかし上手く行くのか⁈咲さんを失いたく無く一歩踏み出せずにいると崎山氏は何処かに電話している。そして


「田沢氏へ連絡しました。このデータも送信済みです。日程は相談して決めて下さい。変身に慣れた頃に咲さんとの再会を計画しましょう」


PCに映し出された髪型を変えた自分をなんとも言えない気持ちで見つめ、そろそろ咲さん不足で限界が近い自分に踏ん切りをつけ崎山氏の策に乗る事にした。


『田沢の世話になるのは少し抵抗があるが致し方ない』


ノートPCを片付けている崎山氏に


「心砕いて下さり感謝します。親しみを込めてファーストネームで呼んでいいだろうか」

「光栄です。是非”竜二”と呼んで下さい」


こうして同郷の友が出来た。敬愛するクロノスに感謝してこの日は別れた。


そして数日後。田沢君の美容室に赴き長年伸ばしていた髪を切り、銀髪をライトブラウンに染めた。


失恋ハートブレイクでイメチェンですか⁈」

「…」


にやけた顔をした田沢君が揶揄ってくる。人睨みすると慌てて口を黙、何処かに逃げていった。美容室を出てオフィスに戻るとイメチェンした私をみてスタッフが唖然とし


「ボス!一見誰かわかんないですよ」


と驚く。少し手応えを感じ気分一新し急ぎの仕事を終わらす為に集中した。

数日経ったが竜二君から連絡は無く、何も無い日々を過ごしていた。やっと連絡が来たと思ったら


「この土日空けて下さい」

「はぁ?」


どうやら()()()が来た様だ。竜二君のところへ愛華さんから連絡が入り、土曜のデートを愛華さんに譲り、愛華さんと咲さんはシネマランドに行くそうだ。


『確か愛華さんは無類のヌーピー好きだったなぁ…あっ!』

「気付きましたか?」


先週からヌーピーの期間限定エリアが出来てウチが管理している。そして限定カフェの反響を確認する為に視察予定だ。まさかここで…


「愛華さんには何も伝えていません。彼女は嘘はつけないし、恐らく前世も知らないでしょう。知らせない方がいい」

「確かに…」

「分かってますね!さりげなく自然に接触して下さい」

「わっ分かりました…」


こうして《2度目の出会い》を決行するべく、スーツ一式を新調し当日は田沢君の美容室でセットしてもらい、シネマランドに朝から向かった。


咲さんとの経緯を知る部下を連れ現地に着いた。部下は私より緊張し今にも倒れそうだ。入場口に監視していた部下から2人が入場した報が入る。


『恐らくカフェに来るのはカフェオープン少し前だろう。スタッフとして接触すれば…』


30分前にカフェの前に行くと既に数組並んでいる。2人はまだ居ない。そろそろ来るかと辺りを見渡すと、咲さんの手を引いた愛華さんの姿が!緊張が走る。


がっ!2人は立ち止まり話をして咲さんだけ振り返り何処かに行ってしまった。愛華さんはそのままカフェに向かって来て列に並んだ。不安になって来たら部下からどうやら咲さんは化粧室に向かったと連絡が入る。


『なら、ここで待てばいい』


安堵して次を考えていたら視線を感じ、その視線の先を見ると!


「ジークさん⁉︎」

「!」


凄い勢いで愛華さんが寄って来て腕を取られカフェから離れた所に連れて行かれ


「何でここに居るの!もしかしてストーキングしてるの!なら怒るよ」

「いや!あの!ここは私の会社が管理してて、反響確認で来たのであって」

「なに?まさか変装?暫く咲を自由にしてって言ったよね!まだその時では無いし、今咲は崎山さんといい感じで癒されてるのに!」

「…」


なにも知らない愛華さんは烈火の如く怒っている。その勢いにタジタジな私。

すると愛華さんの後ろからウチの部下が咲さんの肩を抱きこっちに歩いて来る。


私と愛華さんに気付いた咲さんはキョトンとしてこっちを見ている。あの感じは私と気付いていない!

咄嗟に胸を手を当てて礼をした。そして咲さんに気付いた愛華さんは咲さんに駆け寄り、手を取り離れて行こうとする。

思わず追いかけて咲さんの手を取った。勢いあまり愛華さんの手が離れ咲さんの体は私の腕の中に!


柔らかい感覚と彼女の香りに酔ってしまいそうになる。そして彼女は顔を上げて目が合う。色メガネをかけているからか、私だと気付きていない様だ。彼女の瞳に映り悦びに浸っていたら、再度愛華さんが咲さんの手を取り遠ざかって行く。


『このまま別れてはダメだ!』

「石田!直ぐ2人を追いかけ”お詫びに食事をご馳走する”と言いカフェにお連れしろ」

「分かりました。絶対お連れします!」


部下は2人を追い走っていった。そして私はカフェに行き、店長に席の用意とスペシャルランチにレア柄のマグカップを用意させ一旦カフェから離れた。距離を詰めすぎるのは危険だ。もう失敗は許されないのだから


離れた所から2人がカフェに入店するのを確認し、それ以降さん遠くから見守る事に。

そして日が暮れる頃。2人は花火が上がる広場へ。もちろん私も移動する。離れた所で花火を見ている咲さんを見つめ、1年前に一緒に花火を見た時の事を思い出していた。


そうして花火が終わる前にその場を離れ、2人が帰るのを見送りランドを後にした。


「ジークヴァルト様お疲れ様でございます。梶井様とお会いになれましたか?」

「あぁ…」

「それはようございました」

「良かったのか…俺には未だ分からん」


疲れたのと彼女に触れ気持ちが昂り落ち着かない。そんな時着信が入る


「竜二君か…」

『どうでした?会えましたか?』

「会えだが事情を知らない愛華さんに叱られたよ」

『そうですか。目に浮かびますね。咲さんの反応は?』

「多分私だと気付かず似ている位に思っていると思う」

『やっぱり二手が必要ですね』


竜二君はそう言うと明日お昼に有名寿司店【あかつき】に来てくれと言う。

何度も何をするのか聞いても教えてくれず、咲さんを奪われたくなかったら来いとだけ言い切ってしまった。

私にしては珍しく人の策に乗っている。しかし嫌では無い。咲さんとのまだ縁を結べるなら何だってやってやる。


こうして翌日指定の寿司屋に向かい、竜二君の指示された部屋に入ると咲さんがいた。当たり前の様に咲さんの手を握り煽ってくる竜二君にとうとう正体を明かす事に!


驚き固まる咲さん。どうか私を拒まないでくれ!

お読みいただき、ありがとうございます。

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【終わる終わる詐欺】では無く、後数話で終われそうです。最後までお付き合い、よろしくお願いします。


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