61.キューピッド - 2 崎山 side
ジークヴァルトの正体を知り、2人の仲を取り持つ事を決めたが、”巫女の安らぎ”にまだ未練があり…
「ありがとうございました。次は私にごちそうさせて下さいね」
「好きな人にご馳走するのは男の悦びなんです。私の自己満足の邪魔をしないで下さいね」
「…困りましたね。何か返せる方法を考えておきます」
真面目な咲さんは奢られる事に恐縮している。俺が言ったことは見栄では無く本心だ。あまりにも気にするのでお返しに抱擁の他に頬にキスをお願いする。
真っ赤な顔をして暫く考えて前置きも無く、首に腕を絡め頬にキスして抱きついて来た。
頬に感じる柔らかい感覚と、腕の中の温かい重みに理性がぶっ飛びそうになる。
近くにベッドやソファーが有れば確実に押し倒しているだろう。
こうして心満たされた週末を終え自宅に帰ると、息子がリビングに居て俺の顔を見るなり
「親父その緩んだ顔。母さんが居た頃以来だなぁ。今カノは良い人みたいだね」
「あぁ…最高だよ」
「けっ!いいオヤジか惚気かよ」
息子は俺を揶揄い笑っている。妻の教育と愛情一杯で育った息子は口は悪いが理解があり関係は良好だ。
このまま咲さんといい感じになれば会わしてみたい。妻に似ていて驚くだろう。
いい気分でシャワー浴びて寝室で美味しい寝酒を飲んでいたら、ジークヴァルト氏からメールが届く。
『貴女の元カノが怪しい動きをしている様だ。咲さんに実害の無いように』
「間男にも夢くらい見せてくれよ」
咲さんと甘い未来を期待をしていた矢先に本命からの釘刺しメール。本当に騎士というのは厄介だ。それより『元カノの怪しい動き』で思い当たるのは百花だ。他の元カノはいい女ばかりでいい思い出しかないが、百花は酷い思いをして二度と会いたく無い。
休み明け秘書の美川に動向を調べさせておくか…
恒例の週の半ばにいつものデートのお誘いをすると、少しいつもと違う対応に百花の気配を感じる。
察した俺は咲さんがゆっくり話せるようにドライブに誘い話し易い場を作る。
並行して秘書の美川に任せていた百花の調査報告が上がり、前の彼女の時と同様に咲さんの自宅周辺を彷徨いている様だ。直ぐに顧問弁護士に連絡し法的処置の準備を始める。
そして週末のデート。待ち合わせ場所に来た咲さんは明らかに困惑している。彼女にこんな顔をさせた百花に怒りが込み上げる。いつも通り咲さんを車に乗せて目的地に向ける出発する。車内では心ここに在らずの咲さんに
「今は2人きりです。どんな話も誰も聞いていないですよ」
そう伝えると眉尻を下げ申し訳無さそうに、百花から手紙を受けたと話す。そして写真が入っていたと言うと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
『あの女!また事後に上半身裸で寝ている俺の写真を使ったな!前回処分する約束だったのに!』
咲さんをお驚かせない様に出来るだけ落ち着いた口調で百花の話をする。静かに俺の話を聞いている咲さんに確認の為に
「恐らく私の裸の写真が送られて来たのでは?」
と聞くと赤い顔が更に赤くなり首まで真っ赤だ。ゆっくりと咲さんの手を握る。ティーンの様な反応に可愛くて仕方ない。今すぐに頭から齧り付きたい!
咲さんには百花に法的処置を取ると話し安心させた頃に目的地に着いた。折角だから美味しい蕎麦を食べる。食事中はいつもと変わらず楽しく食事をして少し安心する。
食後はゆっくり話せるように少し離れたハーブ園へ。園内を見て周り飲み物を買い東屋で休憩。
そこで前世の話をしたら咲さんは唖然とし、ポカンとした可愛い顔で俺を見ている。
そんな咲さんに左手の痣を見て巫女だと気付いたと話し前世の話をする。咲さんは終始目を白黒させ俺の話を必死に聞いている。
知っているのに”本物の騎士”の存在を匂わす話をすると、咲さんは泣きそうな顔をし慌てて抱きしめた。
『はぁ…やはり”巫女”は騎士には極上の癒やしだ』
ジークヴァルト氏から話を聞き、一方的にジークヴァルト氏が咲さんを求めているのだと思っていたが…
『やはり咲さんも…”巫女と騎士”はやはり何があっても結ばれるのだなぁ』
もしかしたらまた”巫女”を得れると淡い期待をしていたが、たった今崩れ去った。痩せ我慢し咲さんに
「貴女の騎士が来るまで貴女の身と心を守りましょう。その対価に巫女の安らぎを与えて下さい。勿論貴女が危惧している様な体の関係は求めません。貴女が求めるならやぶさかでは無いですがね」
と言うと慌て出す。どうやら百花に送られた例の俺の裸から、体の関係を気にしていた様だ。
『やっぱり可愛い!俺は直ぐにでも抱きたいがな!』
男の欲が顔を出した時に着信が!スマホを取り出すと待ち受けにあの御仁の名前が!
彼は能力者か?咲さんに邪な想いを抱くと彼は連絡してくる。俺も騎士だが彼の中々…アレだ…
咲さんにまだジークヴァルト氏と繋がっていると知られる訳にいかず席を外し電話に出る。
『やはり元カノやらかしましたね。証拠を貴方の顧問弁護士に渡して法的処置の手続きに着手してもらいました。貴方の指示で既に準備されていたので、数日内に終わるでしょう』
「ありがとうございます。しかし早過ぎませんか?」
『私は咲さんには極甘ですが、他には容赦しませんから。知っておいて下さい』
「そんな気概があるなら、早く咲さんを迎えに来て下さいよ。俺は長く我慢出来ませんよ」
『わっ分かっています』
咲さんは口には出さないがジークヴァルト氏を愛している。しかし制約とやらでどうしていいのか分からない様だ。ジークヴァルト氏も然りだ。
『崎山さん。何か有ればいつでも連絡して下さい。咲さんを守る為なら協力は惜しみません』
「はい。ありがとうございます。では!咲さんを待たせているので」
『崎山さん…貴方は意地悪ですね』
こうして電話を切り咲さんの元に戻って百花の件は法的処置をとったので心配要らないと伝えた。
安心した咲さんを乗せ楽しいデートを再開して彼女を送り届け、家には帰らずオフィスに向かい顧問弁護士と秘書に百花の件の報告を受け、ジークヴァルト氏の恐ろしさを知る事となる。報告書を読み終え
「馬鹿な百花。俺が警告した時に止めておけば良かったのに…少し同情するな」
迫られたとは言え一度は付き合い体を重ねた女だ。愛は無くても少しの情はある。椅子に深く座り百花のいつになるか分からない再起を願った。
それ以降は交際は順調。しかし予定していた週末のデートは俺の出張で延期になった。翌週埋め合わせに何処に行こうか悩んでいたらメールが入る。相手は咲さんの親友の愛華さんからだ。珍しい…何だろう?
『こんばんは!お久しぶりです。ごめんなさい!次の土曜日は咲とのデート私に譲って下さい!シネマランドで私の大好きなヌーピーの期間限定エリアが出来て、限定カフェに行きたいの。埋め合わせはするからよろしく!
お邪魔虫の愛華』
「あっははは!相変わらず面白い女性だ。今週も会えなかったからキツイなぁ…仕方ない。女の友情は大切にしないとな…シネマランド⁈あれ…確か…」
ある事を思いつき直ぐ秘書の美川に連絡し、ある事を調べる様に連絡。そしてノートPCを立ち上げある計画を立てる。
「慎重過ぎる2人には起爆剤が必要かもな。これで様子を見てダメそうなら、マジで俺が咲さんを貰い受けよう」
俺が本気で咲さんを欲する前にジークヴァルト氏には動いてもらおう…
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