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59.別人?

愛華と1年ぶりに出かけたシネマランド。出会い頭に人とぶつかり…


『親切なんだか、不親切なんだか!』


ぶつかった相手は手を差し伸べてくれたのに起こしてくれない。手を離し自分で起き上がろうとしたら“ぐっ”と引っ張り上げられた。


立ち上りお礼と言おうと相手を見据えるとレジャーランドに似合わない黒スーツ姿の男性で正直に言うと周りから浮いている。


「えっと…すみませんでした」

「お怪我は無いですが?」

「はい。そちらは?」


て言うか当たった人の方が怪我しそうなくら屈強な男性だ。目の前の男性は何故かまじまじと私の顔を見ている。何かついているのだろうか?


「大丈夫でしたら連れが待っているのでこれで…」

「あっ!その心配ですのでお連れの方の所までお送りします」

「へ?いえ必要…」

「さぁ!どこですか?」

「いや!あの?その…」


新手のナンパ?こんなおばちゃんに?その男性は30代半ばの背の高い男性。悩んだ末に警戒しながらも変な所に連れて行かれるより、愛華の元へ誘導した方が安全かも…


ヌーピーカフェにツレがいると言うと、男性は肩を抱き逃がさない様に?歩き出す。

見た目と違い私の歩幅に合わせてくれ意外に紳士だ。数分歩くとカフェが見えて来た。

入店待ちの列に愛華は居ない。もしかしてもう案内された?


「あれ?」


列から離れた所に愛華と背の高いスーツ姿の男性が言い合いをしている。

男性は来場客でないのは一目瞭然だ。男性はライトグレーの三揃えスーツに明るい茶色の短髪に欧州の方だろうか?モデルの様な整った顔立ちをしている。


「やべ!」


隣の男性が焦りだす。状況を把握できないでいると、愛華と話している男性がこっちに気付いて、少し間をおいて胸に手を当て礼をした。


『えっ?私に?んな訳無いか…隣の男性に?』


そう思い隣の男性を見上げたら顔色が悪い。そして私に気付いた愛華が走ってくる。


「咲!誰その人!またナンパ?」

「んな訳無いじゃん!それより愛華は並んで無いし男性と揉めてるじゃん」

「揉めてないし!意見を求められたから答えていただけよ」


私が愛華と話している横で私にぶつかった男性と愛華と話していた男性が話し出した。見た感じ上司と部下?

すると愛華は男性達に目もくれず私の手を取りその場を離れようとする。


「愛華カフェは?」

「気が変わったから今日はいい」

「何で!あれだけ楽しみにしていたのに」


愛華の様子がおかしく不安になって振り返ると


「待って下さい!」


さっきのイケメン上司が走ってくる。愛華は聞こえないフリをしてズンズン歩いて行く。


「わぁ!」


その男性に後ろ手を取られ勢いで愛華の手が離れ体が男性の方に体が吹っ飛んだ。

男性は見た目スリムなのにしっかり受け止めてくれた。


「ごめんなさい!」

「いえ、大丈夫ですか?」

「咲!」


ビックリして顔を上げイケメン上司の綺麗なお顔が間近に!彼は色の入ったメガネをかけて瞳はとっても優しく何となくジークさんに似ていてドキッとする。


『この人ジークさんにとても似ている。外人さんって見慣れてないから同じに見えるってやつかなぁ⁈』


そんな事を考えながらイケメン上司をまじまじと見ていたら彼は顔を赤くする。すると愛華がまた私を引っ張り彼から離した。温もりが消えて少し淋しい…気がした。


愛華は無言で歩いていく。


「愛華。スペシャルランチ無理でも折角だから、ヌーピーカフェ行こうよ」

「いいよ。また今度で…」

「奢るから行こう!」

「…なら行く」


いつもの愛華になり少し安心する。お店に着いて順番カードを貰おうとしたら


「待って下さい!」

「「?」」


さっきのぶつかった男性が走ってくる。そして息を切らしながら


「私がぶつかりご迷惑をお掛けしたので、ボスから食事をご馳走するように言われております。ご案内しますのでどうぞ!」

「お気遣いなく」

「咲!迷惑かけられたからご馳走様になろう!」

「へ?」


こうして愛華にカフェに連れて行かれ食事をは取ることに。入口にスペシャルランチは完売と書いてあったのに何故か出てきた。それも限定のシネマパーク柄のマグカップが付いていて愛華が感激していた。

あのイケメン上司はオーナー?特別扱いに他の客の視線が痛い。愛華は全く気にしていないようだけど。

食後に店をでる時はあの男性もイケメン上司おらずお礼が言えなかった。

機嫌良くなった愛華に午後からも連れ回されヘトヘトに。そして夕方までパークを堪能して、夜上がる花火を見て帰ることになった。


有料観覧席の横を通り過ぎながら、ジークさんと見た花火を思い出す。

あの時は賢斗と凛と見た花火を思い出して寂しくなっていたが今はジークさんを思い出して淋しくなっている。

ふと目線を移すとさっきのイケメン上司が1人で花火を見上げている。

休憩だろうか?なぜか彼が気になり花火を見上げる彼を見ていた。花火の光に照らされる彼の顔は何処か淋しそうに見える。私と同じように想う人がいるのだろうか⁈何故か彼が気になり見つめていた。


愛華に呼ばれて視線を外し戻すと彼は消えていた。彼が気になったが名前も知らないしどんな人かも知らない。

変な感覚に戸惑い楽し淋しいシネマランドを後にして家路についた。

この出会いが私の生活を一変する事になる。


翌日日曜日は疲れて朝はゆっくり遅くまで寝ていた。するとメッセージが入る

まだちゃんと開いていない目で見たら崎山さんからだ。なんだろう?


『昨日は楽しかったですか?お疲れでなければお昼を共にしませんか?』


正直疲れているけど…なんか人恋しいかも…


『今起きたところなので、遅めで良ければ…』

『嬉しい。では13時にお迎えに上がります』

『はい。よろしくお願いします』


こうして出かける予定が入り準備のためリビングへ。そして約束の時間までに家事を終わらせておく。


13時前にいつもの所に行くとぴっかぴっかの白の高級外車が停まり崎山さんが降りて来た。ご挨拶をしてシネマランドのお土産を渡す。お土産はお菓子にした。食べ盛りの息子さんがいるからね。そして車に乗り遅めのランチに向かう。向ったのは寿司屋…まさかここ!


『確かジークさんに連れて行ってもらった店じゃん。確か時価しか書いてない店だ』


戸惑いながら入店し個室に案内されるとお昼のコースが運ばれて来る。


「?」


運ばれたお寿司を見てある事に気付く。私のお皿には青魚のネタが無い。崎山さんのお皿には鯖の押し寿司が入っているのに私の押し寿司は海老だ。疑問に思っていたら仲居さんが


「料理長から咲様は青魚が苦手とお聞きしておりますので、別の物を用意させていただきました」

「はぁ…ありがとうございます」

「咲さんは青魚駄目なんですか?」

「はい。子供の頃に鯖の押し寿司にあたった事があってからダメで…それにしても1回しか来た事ないによく覚えてらっしゃいますね」


すると仲居さんが


「当店は大切なお客様の好みは把握しております」


ジークさんと一緒だったからかなぁ。すると笑いながら崎山さんが


「咲さんは大物とお付き合いがあるんだね。この店は一見さんお断りの店。料理長が名と好みを覚えるのは上得意だけだよ」

「へぇ…」


誰かツッコミが有るかもと身構えたが、崎山さんはそれ以上は何も聞かなかった。それから適当に話を合わしながら食べ始める。話題豊富な崎山さんとの食事は楽しく、食後のデザートを食べていたら恒例の料理長が挨拶に来た。


『っという事は崎山さんも上得意の凄い人なんだ…』


崎山さんは気軽に料理長と話をしているので、私はデザートに集中していると料理長が


「咲さま。またお越しいただき光栄でございます。崎山様ともお知り合いとは…今後も御贔屓下さいませ」

「えっと…機会がありましたら…」


こんな高級店自分で来れる訳ないからあやふやに返事をして微笑んで誤魔化した。

そして料理長が帰っていくと崎山さんに電話が入り彼は退室し部屋に一人残された。


「崎山さん電話長いなぁ…仕事の話かなぁ?」


手持ち無沙汰になりスマホを触り出したら崎山さんが戻…り?

障子を開け立っていたのはシネマランドで会ったイケメン上司だ。今日の彼は濃紺の三つ揃えのスーツに髪はオールバックにして大人の色気が半端ない。

今日も色の入った眼鏡をしている。目が合うと優しい目に鼓動は早くなる。


『おかしい…こんなにドキドキするなんて…なにこれ?自慢じゃないがイケメンには免疫あるはずなのに!』


胸元を掴み理解できない自分の感情に焦っていると、イケメン上司は私の前に来て断りなく手を取り


「大丈夫ですか?以前来た時に青魚は駄目だっと言ってあったのに!」

「はぁ?」

「病院に行きましょうか?それともご自宅に送りましょうか?彼奴を信用し過ぎた様だ」

「あの?シネマランドでお会いした方ですよね?」

「・・・」

「?」


そこへ崎山さんが戻ってきて


「ちゃんと出会えましたか?」

「崎山さん?」

「竜二君説明してくれ」


すると私の横に座った崎山さんが私の手を取って指を絡めて握り、鋭い視線をイケメン上司に送る。そして


「もどかしいんですよ!お2人は。起爆剤が無いと先に進めないようなので、僭越ながら私が動いた訳で」

「頼んでいない」

「すみません。私一人置いてきぼりなんですが…」

「それより先に彼女の手を離せ!」

「はぁ…巫女の手は心落ち着く。私がこの手を取り攫いましょうか?」


立っていたイケメン上司は崎山さんと反対に来て、崎山さんの手を払い了承無く抱きしめて来た。


「ちょっと!」

「・・・」


イケメン上司の腕の中は何故か懐かしく知っている匂いがした。そして耳に伝わる彼の鼓動が早く私もつられて早くなり鼓動が煩い。彼に聞こえたかもしれないと、慌てて彼を見上げたら彼は顔を赤くして私を見ている。そしたら崎山さんが


「悔しいなぁ…咲さんもやはり…二人でしっかり話をして下さい。帰りは望まれるのなら私がお送りします。話が終わったら連絡下さい」


そう言い崎山さんは席を立ち出て行ってしまった。私とイケメン上司が部屋に残されまだ彼の腕の中だ。開放してくれそうに無いので、


「すみません。離して下さい」

「…」


無言で腕を解いたイケメン上司は真っ直ぐ見据えて眼鏡をはずした。


「あ…」


彼の瞳は綺麗な若葉色をしていてこの温かい瞳は…


「ジークさん?」

「はい」

「何で…」


半年ぶりに見るジークさんの温かい眼差しに泣きそうになるけど、状況が分からずどうしたらいいか分からない。

誰か司会進行してくれませんか⁈

お読みいただき、ありがとうございます。

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