56.初デート
崎山さんと2人で会う事になり…
「ハニー君は強引だね!」
「それ褒めてる?」
「褒めてない」
土曜の朝一から田沢さんのエステ店でヘアメイクとエステを受けている。私が予約したのでは無い。今朝メールが入り…
『後5分で家に着くから出れる用意して下さいね』
「はぁ?」
悪戯かと思ったけど田沢さんだからあり得る?戸惑っている間に来てしまった。
何も用意できてないのに拉致られ田沢さんのエステ店へ。
全身マッサージからのヘアメイクを施されている。スタッフさんに聞いても『社長にお聞きください』としか返してくれない。
『前回はプレゼントらしいが、今回はお支払いしないとなぁ…ゔ…ん新手の押し売り!』
全て終わった頃に田沢さんが来た。
「ハニー君何これ?」
「やっぱり咲さん彼や崎山さんで無く俺にしない?」
「怒るよ!」
「やっぱダメか…今日は崎山さんとデートだろう?だから」
「もーお節介しないで!いきなり拉致られたからお財布すら持って来れなかったわよ。悪いけどお支払いは後日にして」
「要らないよ。その代わり…」
最近えらく連絡してくると思ったらお仕事ね。どうやら崎山さんの会社と共同で新しい企画を立ち上げたらしく、ターゲットが私の年代のアラフィフ。子育てがひと段落し自分の時間を持ち出した女性に、綺麗で生き生きした第2の青春を謳歌してもらうプランだそうだ。
私はサンプルらしい。だからモデル料として無料なんだって。
「事後報告やめてよね」
「先に言ったら断るだろ」
「当たり前じゃん!」
やっぱり君は強引だね。次から事前に断りを入れる事と私の(写真や個人)情報を表に出さない約束してもらい協力する事になった。
愛華ならタダで施術受けれるならモデルの立候補をしそうだ。施術が終わり田沢さんが家まで送ってくれる。車内で田沢さんが余計な情報をくれて
「崎山さんの元カノが粘着質な女性だから気をつけてね」
「やめてよ。崎山さんとはお茶飲み友達なんだから」
「でもさー側から見たら付き合っているって思うよ」
「…」
「崎山さんは俺と違い大人で誠実だから、そこの所ちゃんと話してくるから疑問に思ったらなんでも聞いたらいいよ」
田沢さんのこの助言で行く前から気分が落ちた。田沢さんをひと睨みすると許可なく頬に手を当て頬にキスした!
「なっ!」
「隙あり!咲さん可愛いんだから気をつけなよ」
「君に言われたく無い!」
プンスカ怒ったところで家に着いた。一応お礼言って田沢さんと別れ、約束の時間が迫っているから支度を急ぐ。良かった!昨晩服と靴は決めてあり後は着替えるだけ。
直ぐに用意をして自転車で駅まで行き待ち合わせの駅に急いだ。
駅に着くと崎山さんは着いていた。
「こんにちは。お待たせしました」
「いえ、私も今着いたところです」
お約束の会話をして映画館に向かう。崎山さんは背が高くジークさん位ある。私が低いから30㎝近く身長差があり見上げてしまう。
彼は鍛えた感じでは無いしがっちり体型ではないけどガリガリ君でも無くスタイルはいい。デニムにシンプルなシャツを着て先日会った時よりラフなスタイルだ。
映画館が入っている商業ビル前は大きなスクランブル交差点。信号が青になると四方八方から人が歩いてくる。人ごみが嫌いな私は人を躱すのが下手で大きな交差点は苦手。更に小さいから埋もれてしまう。
「へ?」
崎山さんが手を引いて歩いてくれ人とぶつかる事無く交差点を渡れた。
「ありがとうございます」
「すみません。了解も得ずに手を取り」
「崎山さんが先導してくれなかったら、多分人混みに流され行きたい方向へ行かなかったわ」
そう言って崎山さんを見上げると目尻を下げて
「このまま手を繋いでいいですか?」
『どうしよう…年甲斐もなくドキドキして来た』
私がフリーズしたので崎山さんは嫌がったと感じたのか、手を離そうとしたので思わず握り返し
「迷子になるのでよろしくお願いします」
「畏まりました」
こうして崎山さんと手を繋ぎ映画館へ向かった。選んだ映画はラブコメで笑いどころが多く楽しかった。ラストにラブシーンがあり少し気まずい。主人公のキスシーンで繋いていた手を強く握る崎山さん。意識するから止めて欲しい…
こうしてドキドキした映画は終わり映画館を出て同じ商業ビル2Fのカフェに移動する。EVに乗り込むと空いていて向かい合って雑談していたら次の階に止まり…
「うわぁ!」
止まった階はイベントホールが有りアニメのイベントがあった様だ。大量の男の子が入って来てEVの中はいっぱいになりおしくらまんじゅうになった。
「咲さん大丈夫?もっとこっちへ」
崎山さんに迷惑にならない様に踏ん張っていたが大きい若い男の子達の力に敵う訳もなく、押されてキレイに崎山さんの腕の中へ。
「ごめんなさい。2階に着く少しの間我慢してください」
「いえ…役得です」
「へ?」
思ってもない返答に思わず見上げると間近に崎山さんのお顔が…ジークさんや賢斗ほどでは無いが、整った顔立ちの男前で確実にモテ顔の崎山さん。頬が熱くなるのを感じ思わず俯いてしまう。すると崎山さんが
「耳やうなじまで赤い。かわいい…」
「!!」
もう瞬間移動して帰りたい…
EVの一番奥にいて2Fに着いたが下りれそうにない。1Fまで行き男の子達が下りてから再度2Fに上がった。
おしゃれなカフェに着いたら並んでいて少し待つ。その間も他愛もない事を話して時間をつぶす。カフェの奥は若い子人気のあるショップが入っていて、若い女性が並んでいる横を通って行く。そして必ず崎山さんに目線を送って行くのだ。思わず
「さっきから通る女性がみんな崎山さんを見てますね。おモテになるでしょう⁈」
「そんな事無いと謙遜したいのですが、所謂逆ナンはよくされますね。正直容姿だけで見られるのは嫌なので全て断りますがね」
「えっ!勿体ない。GF増やすチャンスなのに」
そんな話をしていると崎山さんの前に並ぶアラサー位の女性が2人組が崎山さんに視線を送っている。
「私はGFも心が好ましくないと嫌なんですよ。心安らげ女性じゃないと…咲さんもそうでしょう⁈」
そう言われ頷く私。崎山さんとは気が合うようだ。話をしていても心が波打つ事無く穏やかになれる。考えが似ているのかぁ?
やっと席が空き着席しメニューを見ているとアフタヌーンティーセットに目が行く。3,500円とお高い。しかし本格的で美味しそうだ!でも…
「食べきれないから…今度」と呟くと
「咲さんはこれがいいの?」
「はい…でも多くて」
「咲さん一人じゃないよ」
「え?」
「シェアすればいいじゃないか」
「いいんですか?」
「勿論!苦手な物や多かったら私がいただくから」
「ありがとうございます!じゃ!アフタヌーンティーセットで!」
こうして豪華なアフタヌーンティーいただき楽しいお茶となった。この後もウィンドウショッピングをし夕方早めに別れる。翌日仕事だからね。
別れ際に前触れもなくハグされ、耳元で
「また会いたい」
「えっと…また機会があったら?」
家まで送ると言われたが駅で解散し家路を急ぐ。ジークさんと別れてから憂鬱だったから、今日の外出は久しぶりに楽しくいい気分転換になった。いい出会いに感謝して週末を終えた。
初デート?から週の半ばに崎山さんからデート?のお誘いを受け週末会うのが当たり前になって来た頃に私の身辺に変化が…
事の発端はお世話焼きのお隣住田さん。
仕事から帰ってきたら玄関先で住田さんと遭遇っていうか待ち構えていて、ご挨拶すると何か言いたげな住田さん。
「咲さん。何か困ってない?」
「いえ?特には」
「…ここ数日貴女が帰ってくる少し前に女性が訪れてて、セールか知人かと思ったけど相手は若くてね。今日はポストに何か入れてたから心配でね…」
「何なんでしょね?セールじゃないですか?大丈夫ですよ」
そう言うと住田さんは注意喚起をして家に戻って行った。
「ポストに何か入れたって…」
ポストを開けると定形外の封筒が1通。切手も消印も無い。表は私の名前が書かれ裏返すと…
「山野百花」と書かれている。全く知らない名前に固まる。不気味な封筒を直ぐ開ける気にならず振ってみる。紙が数枚?硬いものも入って無くてカミソリとかは無さそう。
開封して中を見ると、やはり紙が数枚入っている。取り出し見たら…
「あっ…崎山さんの元カノだ」
やっと穏やかな日常が訪れたと思ったら雷雲の予感。それよりこれどうしたらいい?
やっぱり愛華に相談か…
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