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51.封印 - 2

意識が戻ると玄関が騒がしく誰か入って来る。状況が分からない咲は…

「咲ちゃん!」

「咲さん大丈夫ですか!」

「梶井様!」

「へ?」


凄い勢いでいーさんとジークさん、倉本さんがウチのリビングに入ってきた。

いーさんに抱きしめられ心配そうにジークさんと倉本さんが私を覗き込んでいる。


「あの…皆さん不法侵入ですけど…」

「咲さん怪我をしている。倉本病院の手配を!」

「少し切っただけだからカットバンを貼っておけば…」


遅れて入って来たタチバナさんが割れたグラスを片付けてくれている。抱きしめていた腕を解きいーさんが真剣な表情で


「咲ちゃん何があったんだ!それにこの外人さんは何なんだ!お父さんは聞いていないぞ!」

「えっと…」


皆興奮気味でそれぞれ言いたい事を言って収集が付かない状態になっている。すると一番冷静なタチバナさんが


「皆さま。それぞれ言いたい事があるかと思いますが、梶井様が一番困惑なさっておいでです。梶井様キッチンをお借りしてよろしいでしょうか?お茶を飲み落ち着きましょう」

「タチバナさん…ありがとうございます。よろしくお願いします」


流石ベテラン秘書で冷静だ。茶器と茶葉の場所を伝えタチバナさんに任せる。その間にいーさんが応急処置をしてくれた。そして…

いーさんが私の隣に座り私の手を握り、向かいにジークさんで後ろにタチバナさんが控え倉本さんは車を移動するために出て行った。

ジークさんは明らかにいーさんに嫉妬している。義父に嫉妬しないでほしい。そしていーさんは娘の彼氏を牽制する父親だ。


「ジークヴァルトさんでしかた⁈ウチの咲ちゃんとはどういう関係ですか?」

「咲さんを愛し求婚しています」


凄い勢いで私を見ていーさんが


「言い寄られている人がいるとは聞いていたが、求婚プロポーズされているなんて聞いて無いよ!何時から付き合っているんだ!」

「いや…正式には付き合ってなくて…」

「なら、断りなさい」

「いーさん?」


完全にいーさんの反感をかってしまったジークさん。いーさんは頑固で出だしから間違えたジークさんが挽回するのは難しいよ…

ジークさんがどう対応するか見ていたら、視線をいーさんから私に向けて蕩ける様な微笑みで


「やっと貴女に会えた。お父様に事情をお話ししたいので、別室をお借りしていいですか?」

「えっ⁈あっ⁈」


するといーさんが立ち上がり私の頭を撫で、隣の和室にジークさんを連れて行ってしまった。


「えぇ!!」


ついて行こうとしたらタチバナさんに手を取られソファーに戻された。


「ウチの父は頑固で対応を間違うと…」

「梶井様。ジークヴァルト様は百戦錬磨で仕事上色んな方と交渉しておいでです。お任せすれば大丈夫でございます」

「でも…」


車の移動を終えた倉本さんがケーキを買ってきてくれた。貧血で倒れた私を気遣ってくれたのだ。秘書だけありきめ細かい気配りに感心する。


「梶井様はどれになさいますか?」


倉本さんが箱の中を見せてくれる。


「このチョイスは倉本さんが?」

「はい。何か?」

「いえ…私の好みのものばかりなので」

「ジークヴァルト様からお聞きしております」

「左様でございますか…」


きめ細か過ぎます倉本さん。こうして大好きなザッハトルテを選び頂く。折角なのでタチバナさんも倉本さんも座ってもらい一緒にケーキを食べる。

お2人の仕事に興味が湧いて秘書の仕事内容を聞き楽しいお茶となった。

そして何故こうなったのかタチバナさんから聞く事に。


「お約束の時間に梶井様宅に伺うと、在宅されている気配はあるのに応答がなく、インターホンにも電話、スマホにもお出になられず壁傳いに庭の方に回るとリビングから着信音が聞こえ、カーテンの隙間から倒れている梶井様の足が少し見えたのです」

「あぁ…なんかすみません」


タチバナさんにそう言われてリビングな掃き出し窓を見るとレースカーテンが少し開いている。そして倒れていると分かったジークさんは徐に玄関横に有った私の日傘を取り窓を割ろうとしたそうだ。必死にタチバナさんが止めて、応援に倉本さんを呼び並行して愛華に連絡しウチの鍵を持っている人を聞いたそうだ。

そして愛華がウチの母に連絡していーさんが来てくれた訳。到着したいーさんがジークさん怪しみ玄関先で睨み合いに。いーさんがジークさんを不審に思い愛華に連絡。愛華にいーさんを説得してもらいやっと鍵を開けもらったという訳だ。


「重ね重ねすみませんでした」


お2人は無事で良かったと優しい言葉をかけてくれる。事の顛末が分かりやっと一息吐く。

話が終わった頃にいーさんとジークさんが戻って来た。いーさんは何故か複雑な顔をしてジークさんは何故か満足気だ。


「何話したの?」

「男の話だよ。だから咲ちゃんには内緒だ」


いーさんは話してくれない。ジークさんに視線を移すと指を口の前に立ててウィンクした。


『あぁ…こっちも内緒ね』


この後いーさんから家で何があったを聞かれゆっくり事情を話し出す。

長距離運転し疲れててグラスと落し指を切った事。そして血を見たら貧血を起こした事を話した。いーさんは私の手首を取り脈を確認し下瞼を指で押さえ貧血症状を確認した。

いーさんの表情から問題はなさそうだ。


「咲ちゃん。一人にするのは不安だから今晩は家に泊まりなさい」

「ありがとう。でもお母さんがまた心配するからいいや。それに今日はジークさんと約束していたし。何かあったらタチバナさんと倉本さんに頼るから」


勢いよく立ち上がったジークさんは私の前に跪いて手を取り


「何故私じゃないんだ!」

「その方がいーさんが安心するからね」


するといーさんは幼い子を褒める様に私の頭を撫でて


「偉いよ咲ちゃん。私はまだジークヴァルト君を信用していない」

「お義父さん!」

「“お義父さん”呼びはまだ早いぞ!」


何か2人のやり取りが面白くて和んた。ほのぼのとした雰囲気に、さっき見た過去の夢の重苦しい気分が少し晴れた気がした。


“♩♩~♩”


いーさんのスマホに母から着信があり、いーさんが母に説明している。そして


「咲ちゃん。愛華ちゃんにも心配かけたから電話をしておきなさい。私は美佐枝ちゃんが心配だから帰るよ」

「ありがとう。お父さん」


初めて面と向かって呼んだので少し驚いた顔をして耳を赤くしたいーさんは、照れながらタチバナさんに見送られて帰って行った。

リビングにジークさんと2人。凄い甘い雰囲気を醸し出すジークさん。でも今は気持ちに応える余裕がない。先ほど倒れた時に見た夢が気になっているから。

夢の話をジークさんに話した方がいいのだろうか…どうしていいか分からず挙取っていたら、ジークさんに後ろから倉本さんが何か耳打ちをして


「咲さん。ホテルに部屋を取りました。前と同じ部屋で寝室も別で施錠出来るので安心してください。タチバナさんと倉本もおりますから」

「でも…」

「倒れたのに一人に出来ない。我々がここに泊まるよりはマシだと思うのですが」


確かにそうだ。お隣の住田さんに誤解を招いてしまう。お世話になる事にして泊りの準備をしてジークさんの車でホテルへ向かった。


ホテルまでの道すがら愛華に連絡する。


「咲!大丈夫なの⁈悲壮なジークさんからの電話に焦ったわよ!私家族で旅行に来てるから駆けつけることも出来ないし、ジークさんは窓割って咲の家に突入しそうな勢いだし!できる事は咲のママさんに連絡する事くらいだよ。どうなったか知りたいのに倉本さんもジークさんも連絡付かないし!せっかくの旅行で奮発した料理も味なかったわ!」

「ごめん!週末色々あって疲れが溜まっていて、指切って自分の血を見て貧血起こしたの。いーさんにも診察してもらって大丈夫だから」

「マジ勘弁してよ!旅行先から帰ろうとしたんだから!」


普段おちゃらけていそうで、本当は超真面目で優しい愛華。彼女が友達で本当に良かった…

お礼にホテルのランチを奢る約束をし電話を切った。通話中ずっとジークさんが手を握っていて離してくれない。

電話している間ずっと視線を感じる。あまりにも熱い視線でジークさんの方を見れない。


程なくしてホテルに着き最上階のスイートルームへ。約束通り倉本さんとタチバナさんも部屋に入ってくれた。

私が休む部屋に荷物を置いてリビングに行くとタチバナさんが落ち着く香りのハーブティーを入れてくれ一息つく。


ジークさんもラフな部屋着に着替え一緒にお茶をする。ジークさんの提案で無理の無いように夕食はルームサービスとなった。

軽いものがいいと言ったのに、めっちゃ赤身のステーキの他に鉄分豊富なメニューが出される。元々貧血体質では無いんだけどなぁ…


とりあえず食べれるだけ食べて一服する。そしていつ寝てもいいように寝室の浴室でシャワー浴びて部屋着に着替える。

やっぱりすっぴんは抵抗があり、眼鏡とマスクをしてリビングへ


マスクと眼鏡姿の私を見て眉を顰めるジークさん。


「素顔も愛らしいのに隠さないで下さい」

「アラフィフのおばさんのすっぴんは罰ゲームでしか無いわ。見せられるタチバナさんも倉本さんも可哀想よ」

「なら、タチバナと倉本を下げるからありのままのは貴女を見せてほしい」

「お断りします。もう部屋で寝ていいですか?」


慌て出すジークさん。なんとかマスクと眼鏡は死守しました。

少しの沈黙の後ジークさんが目配せするとタチバナさんと倉本さんは隣の部屋へ。

去り際にタチバナさんが


「何かありましたらこのベルを鳴らして下さい。ベルが鳴った時はジークヴァルト様では無く、梶井様の味方となりましょう」

「ありがとうございます。強い味方がいて心強いです。でも何も起きませんよ」

「はい。信じております」


こうしてジークさんとリビングに2人きりになった。ジークさんの後ろに見える時計は22時を回った。正直な所もう寝たい。

でも目の前のジークさんは許してくれないだろうなぁ…

今晩は長い夜になりそうだ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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最終話まで駆け抜けます?

最後までお付き合いよろしくお願いします。


Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。



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