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45.田舎

“欠席10日”が気になり必死に思い出そうとしているが

「う…ん…何をしても思い出せない!」


スマホに写した小学2年の通知表。“欠席10日”の字と睨めっこ。祖母の家で病気をした記憶が無い。怪我は何度かあるけど医者にかかった記憶が無いのだ。母は診断書を見たって言うし…

母が祖母に楯突いたのが初めてだったって言っていたから間違いないだろう。ちなみに祖母は口が立つ。入院連絡が後日になった事に母が抗議したら見事に反撃され撃沈したそうだ。

インフルエンザに罹ったのがG.W明け。G.Wは1泊2日で母の家に泊りに行き楽しかった記憶はある。

ファミレスに行きパフェを食べ、遊園地と観たかったアニメの映画に連れててもらった。祖母は母の家に行った時に病気をもらって来たのだと、連れ出した母を攻め立てたそうだ。


「これだけはっきりお母さんが覚えているなら間違いないよね…高熱で朦朧としていたのだろうか⁈」


でも腑に落ちなくてモヤモヤしたまま週末を終えた。

翌週明けの月曜からバスで通勤する。もう田沢さんの心配もしなくていいから、いつもの時間にバス停に向かう。すると…


「咲さんおはようございます!」

「げっ!田沢さん何で!」

 

思いっきり嫌な顔をしてしまった。すると例のOLが睨んでいる。OLさんは久しぶりに会うけど更にケバくなってる気がする。ニコニコしながら横に来る田沢さん。いやハニー君。意味が分からないから!


「もうハニー君は辞めたんじゃないの?」

「はい。でも咲さんとは友人ですよね。朝通勤が一緒になるくらいよくある事で」

「ジークさんに連絡していい?」

「いいすよ!」

「へ?」


どうやらジークさん公認らしいく理由は2つ。

1つ目はジークさん来日するまでのボディガードの役目。ジークさんは本当はあのまま倉本さんに送迎させたかったが私が嫌がる為に断念し、代わりに田沢さんに朝だけでも一緒に通勤する事を依頼したそうだ。

もう1つは田沢さんの虫よけ。私に近づくためにバス通勤にした事でダブルOLに言い寄られて困っているそうだ。ダブルOLは店にまで追いかけて来ているらしい。


「私なんかが抑止力にならないと思うけど⁈」

「咲さんはかなり強い抑止力になりますよ。愛華さんに言われるのは嫌だけど、咲さん俺の事ハニー君と呼んで仲睦ましく振舞ってもらえますか」

「え!嫌だ」

「即答⁉︎そう言わずに何なら本気でも俺はウエルカムですよ」

「今の発言ジークさんに言っていい⁈」

「それはマジヤバい!」


流石に強気イケイケの田沢さんもジークさんの名を出すと引き下がるね。

途切れる事無く私と田沢さんが話しているから例のOLは声すらかけれない。機嫌がいい田沢さんはバスの揺れに便乗し触れて来る。酷い時はこっそり抓り防御するが懲りない。ジークさんが帰るまでの我慢と自分に言い聞かせる。

波乱明けの月曜。こんな日は嫌な事は重なるもので、新人のミスで久しぶりの残業となり最悪の週始めとなった。この週は呪われてると思える程最悪でぐったりした。

こうして踏んだり蹴ったりの今週もやっと週末を迎えた。バス停は昨日から例のOLは見なくなった。どうやら諦めた?

今日も朝から機嫌がいい田沢さんとバスに乗る。そこで思わぬ話を聞く。


「実はさー先週金曜にレティシャが急に来日してね。ジークヴァルト氏も倉本さんも大慌て。その上咲さんと夜連絡が着かないと俺のスマホ鳴りっぱ。その上レティシャの足取りを見失ってるし。結局、咲さんはただの酔っぱらいでレティシャは仕事で首都圏を回ってただけ」


どさくさに紛れて肩を抱く田沢さん。ヒールで思いっきり踏んでやりました。

少し痛そうな田沢さんは


「咲さんが倉本さんの送迎断ったから、どうするってなり、ここで送迎再開したら咲さんを不安にさせるから俺に白羽の矢な訳」


えらい事になってたんだ。何も言ってくれないから知らなかったよ。そして楽しそうに笑いながら


「昨晩レティシャから連絡があって第一声が”裏切れもの!”でしたよ。その後は怒涛の愚痴。どうやらジークヴァルト氏を怒らせて、レティシャの実家はマジにヤバかったらしいっすよ。まぁ想像は着くけど。んでレティシャは父親の仕事を手伝わされている上に好みで無い男との縁談が進んでいるんだって」

「はぁ…」


正直私は関係ないからなんとも言えない。

田沢さんの話ではレティシャさんの帰国は今日で今頃空港らしく、帰りのバスからやっと1人に戻れる。

やっと平穏な日常が帰ってくるわ!


「朝から俺と会えないの寂しい⁈なんなら俺の車で送迎しようか⁉︎」

「彼女達とはもう会わないんだから、虫除けはお役御免でしょ。でも一応お礼言っておくわ」

「お礼はいいからデートしましょうよ!」

「ラスボス付きでいいなら」

「チェッ!咲さんずるいよ」


こうして田沢さんの最後のバスも和気藹々と過ごし別れた。


仕事を終え帰り支度をしていたら母からショートメッセージが入る。


『金曜からの3連休の金曜を1日空けといて。佐和子さんが田舎に来て欲しいらしく連れて行って欲しいの』


“佐和子さん?”


佐和子さんは叔父さんのお嫁さん。大人しい人であの一家の中では比較的親切だった人。しかし祖母と叔父に逆らえなくて何かあっても庇ってもらえなかった。でも憎んでもないし嫌いでもない。

それにしても今頃なんだろう?会ったのは祖父母が亡くなって相続の時以来。母は年賀状と中元歳暮を贈り合う位だと聞いたことがある。田舎に行くには電車では不便で車の方が早い。父方の話なのでいーさんに頼みにくのだろう。


『いいよ。前日に連絡するわ。電車は不便だから私が車を出すわ。朝早く夜遅くなるからいーさんにちゃんと話ししておいてね』

『わかった』


急に父の実家方からの話に身構えてしまう。丁度あの2年間の事を思い出そうとしていたから余計に。確か叔父は祖父母の財産をすべて相続して裕福のはず。叔父には息子と娘がいて叔父に何かあり相続問題になっていても私は関係ない。

話す事に思い当る節が無くて気持ち悪い。

そんな気持ちのまま定時に退社しバスで帰宅した。

先週の様な事にならない様にお酒は止めて食事と片づけを終わらし9時の日課のジークさんから電話に備える。


“♪♪~♪”


「機械の様に時間に正確だなぁ」


失笑しながら出るといつもより声が明るい様だ。吉報か?


『咲さん。お変わりありませんか?』

「はい。ジークさんは声の感じからいい事があったみたいですね」

『はい。来週金曜に日本へ帰ります。お待たせしましたが全て終わりました。心置きなく貴女の元へ帰れる』

「お疲れ様でした。お母様とは和解したんですか?」

『和解というか…説得し了承させました』


“おいおい!大丈夫なの?また巻き込まないでよ!”

詳細は来日後に話してくれるそうだ。


『そちらは金曜は祝日ですよね⁈私にお時間いただけませんか?』

「あ…ごめんなさい。夕方母から田舎に連れて行って欲しいと言われ返事しちゃったんです。翌日の夕方なら…」

『残念です。帰国後直ぐに貴女に会いたかったのに…しかしお母様のご用なら仕方ないですね。では翌土曜の17時くらいにお迎えに上がります。都合が悪くなったら仰って下さい。しかし…』

「しかし?」

『私は空腹で狂いかけている獣です。あまりお預けをくらうと暴走するやもしれませんで、お承知おきいただきたい』

「…分かりました」


どうやらジークさんは凶暴化寸前の野獣らしい。暴走はして欲しくないがぐいぐい口説かれるのも正直勘弁して欲しい。

取りあえず来週の連休までは深く考えずに過ごそうと思い早めに就寝した。

今週は仕事は順調に進み毎日定時上がりで通常運行。そして休み前の木曜日の夜。


「明日は7時に迎えに行くから用意しといてね」

『分かった。日帰りよね』

「日帰よ。泊ってまで話す事あるの?」

『佐和子さんの用が何か分からないから、念の為に泊りの用意した置いた方がいいのか悩んでね』

「何度も言うけど日帰りします。私土曜に予定入れているし」

『分かったわ』


先週日曜にディーラーに車の点検に出したし、ガソリンは昨日入れてあり準備万端だ。田舎まで高速を使い約3時間半。母の体調を見ながらサービスエリアで休憩を入れたら約4時間ちょいかかる。佐和子さんが昼食を用意しているらしいし手土産は母が購入してくれているから特に用意はないな。


「…」


何故か無性に胸騒ぎがして定例のジークさんも電話も何を話したのかあまり覚えていない。

明日は久しぶりの長距離運転だから早く寝ようとするけど中々寝付けない。仕方なく頼らない方がいいけどお酒飲む力を借ります。小さいグラスに梅酒のロックを作り一気飲みしベッドに潜り込んだ。ジークさんに会ってから家での飲酒が増え様な気がする。

基本お酒は付き合いでしか飲まない。家に居る時はお酒よりコーヒーを飲んでいる事が多かった。


「お酒が増えたって事は病んでいるって事だよね…」


大きい溜息を吐いてやっと眠気が来てので、そのまま眠りについた。


翌朝5時半。いつもより早いから眠い…。一番に洗面所に行き顔を洗い目を覚ます。母の家まで30分弱。6時半には出ないと間に合わない。てきぱきと準備をして車に乗り込み母を迎えに行く。


「おはよう。後5分ほどで着くよ。準備はいい?」

『いつでも出れるよ。気を付けてね』

「はぁ~い」


母の家に到着すると玄関先に母といーさんが待ち構えていた。


「いーさん朝早くからごめんね」

「咲ちゃんおはよう。美佐枝ちゃんをよろしくね。後これ」


いーさんが私の手に何か乗せた。見てみると1万円札だった。断ると美味しいものを2人で食べてお土産を買って来てと笑顔で言ういーさん。

相変わらす気遣いが出来て優しい人だ。有難くいただき母を乗せて出発した。

土曜だから高速あまり混んでいない。順調に進み1時間ほどたった頃にサービスエリアに休憩に入り遅めに朝食を頂く。旅行じゃないけど旅行の様でわくわくしてきた。食後は飲み物を買い再出発!

予定ではもう1回サービスエリアに寄るつもりが、母が寝てしまいそのまま進むここになった。


『利用料金は…4900円…です』


やっと高速をおりて後は地道。田舎に自分の運転で来るのは初めてでカーナビ頼りだ。慎重に進みやっと昼前に佐和子さんの家の前に着いた。少し前に起きた母が佐和子さんに電話してあり…


「えっ?誰?」


玄関から中年男性が出て来た。驚きフリーズしていると母が


「覚えてない?従弟の伸一君よ」

「従弟?全く覚えてないよ!」


約40年ぶりの従弟との再会。従弟の存在は知っているけど会ってないからほぼほぼ他人だ。

伸一君の誘導で車を駐車しお家にお邪魔する。流石資産家で大きな家で驚く。

客間に通されたら女性が待っていて開口一番!


「あぁ…あんなに小さかった咲ちゃんが…立派になって…」

「ご無沙汰しております。お招きいただきありがとうございます」

「まずは咲ちゃんに謝罪させて!」

「謝罪?」


意味の分からないフレーズに再度固まる私。『謝るって何に対して?』


お読みいただき、ありがとうございます。

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話は佳境に入りました。あと少しで完結します。

まだ途中の話を早く書きたくて頑張ってます!



Twitter始めました。#神月いろは です。主にアップ情報だけですがよければ覗いて下さい。

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